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最初なので連日投稿、3日目です。
序幕~第一幕あたりの説明過多、今回は狐が云々・・・。
水流の一族は、大きな分け方をすると獣人種族の一つである狐族に分類されるらしい。
ところがこの分類は、例えば人類という分類をした場合に、黒人や白人等といった分け方や、日本人やアメリカ人といった分け方、大和民族やアイヌ民族といった分け方という様に、様々な分類に分かれるのと同じで、単純に弧族と言っても様々に分類がある、いわばこっちでの一大種となると言う。
狐族という単純分類をするとその中には大きく分けて、獣--いわゆる動物--の狐、魔獣や妖獣、神獣といった亜獣の狐、オレ達が妖怪等として認識している妖狐、神の眷属としての神代狐といったものに大きく分けられる。
ところが獣人種族という分類の狐族は妖狐と神代狐だけが該当するらしい。
この時点でもうややこしい話しになる。
加えて言えば、狐の神として知られる稲荷神というのは、あくまでも狐を眷属としているだけで狐なわけではない。
国外には古き神々の中に狐の神も居るらしいのだけれど、少なくとも日之本--こっちでの日本の国名--には居ないらしい。
では他種族、特に人間種に狐の神と称される存在は居ないのかとなると、妖狐の中でも力を持った者を妖神狐、神の眷属の中でも力を持った者を神狐と呼ぶ者も居るらしく、正直分類が非常に厄介だという事が分かる。
更に言えば、例えば妖狐は地狐と天狐、空狐に分かれる。
地狐は“たわいのないもの”とされ、一般的にイメージする妖狐という感じになり、基本的に姿は動物の狐に似ているけれど、力を持つ者は姿を化ける事ができるらしい。化けるだけなので、実際にその姿となるわけではなく、あくまでも見え方を誤魔化すだけらしい。
少なくともこっちには、姿が変化する様な“理”を越えた存在は、実体を持つ種族には有り得ないそうだ。
その地狐が千年生きると天狐となり、千里の先の事を見通す力を得ると言うが、実際には種族が異なるので、地狐が天狐となる事は無い。
天狐は人に似た姿だけれど、耳や尻尾は残る、いわゆる獣人のイメージなのだけれど、その耳や尻尾が狐のそれと似ている事から弧族となっている。
その成長によって尻尾の数が変化するらしいのだけれど、これは地狐も同様なので、一般的にイメージする狐の様な姿をした多尾の狐が地狐、耳と尻尾を持った人の姿をしているのが天狐と分けられるのだけれど、地狐が姿を化けた場合、見た目だけでは分けるのが困難となる。
地狐と天狐での尻尾というのは最低が一本で、力を得る毎に増えて行き最大で十三本。そこから減って最後は尻尾が無くなるらしいので、尻尾の本数で力の強さを図る事も難しい。
空狐は天狐となって三千歳を超えると通力自在の大神狐と呼ばれる存在となり空狐となると言われているけれど、実際には尻尾が無くなった者を空狐と称するのだそうで、この空狐を妖神狐と呼ぶ者も居る。
ただ、この尻尾の増減も、生まれてから大きく力の変化が起きる事は稀で、ほとんどが生まれついたままの状態で一生を終えるらしいので、空狐の一族はほとんど確定しているとの事だった。
一説には更に気狐、野狐と順が続くともされるけれど、水流によると気狐や野狐は狐霊という分類になるらしく、狐族の妖狐種ではなく、精霊種となるので狐族には含まれないらしい。
神の眷属としての狐もこれらと異なり、常態で人と姿は変わらない。確かに水流には狐耳も尻尾も無い。
けれど大きな力を使う場合に狐耳や尻尾の様に見える感じで力の放出が現れるという。
この時の尻尾の様な放出は、持つ力の強さによって本数が増え、最大で十三本となると言う。
宇迦之御魂というのはいわゆる、よく知られた稲荷で、その眷属という事は稲荷社によく見る稲荷狐という事になるのだろう(こっちでは神代狐と言うらしい)。
神代狐は基本的に人と同じ姿の為、あっちで知られる稲荷狐の様に、動物の狐の様な姿の者は居ないし、宇迦之御魂には他に狐の様な姿の眷属が居るわけでもないらしい。ただし神代狐には、全ての一族ではないけれど従属となっている妖狐種や亜獣種が居るらしいので、こうした状況が古い時代に誤認された可能性はありそうだ。
この神代狐の中には稀に、特に力の強い者が生まれるらしい。神代狐の一族は基本的に白狐なのに、そうした力の強い者は金毛で生まれるという。
そうした金狐は神に近い力を持ち、尻尾の様な力の放出は最低でも六本以上となる。
更にごく稀に、黒毛なのに銀色に輝く銀狐という、金狐より更に上の力を持つ者が生まれる事があるらしい。その銀狐の力は神の域に達するとも言われているという。
もっとも、金狐でさえ一時代に二~三人しか現れず、銀狐に至っては数百年に一度現れるかどうかという程の存在だとか。
その稀な銀狐が二十年程前に生まれ、現在の三狐の一人らしいけれど、相手を見つけて二年程前から行方不明らしい。
理由は分からないけれど、銀狐が存在している時代には金狐は二人しか存在しないし、銀狐が存在しない時代には金狐は三人しか存在せず、一時的に数が足りなくなる事は有っても、金狐と銀狐合わせて三人以上存在した時代は無いらしい。
その為この金狐と銀狐を神狐と呼ぶ者も居るのだそうだ。
通常の白狐でさえ、最低でも妖神狐と称される空狐と同じくらいの力を保つと言うのだから、金狐である水流の力は相当のものという事になる。もっとも、その力を使っていない今の姿は、見た目だけで言えば色白で金髪の綺麗な少女でしか無いのだけれど。
うん・・・怒らせると怖そうなので気を付けるべきかも知れない。
と言うか、狐族ってかなりの勢力を持っているんじゃないだろうか?
紅袴持ちというのは、神狐の一族の中でその色の袴を身につける事を許された立場を示すらしい。確かに水動は一般的に巫女服という印象の服装をしていて、袴の色はよくある緋色よりも深い紅色だ。
神代狐の一族に限らず、人間種や亜人種、獣人種といった種では、生まれた時から個々に特定の色があって、その色による能力を持つらしい。
その中でも百三〇色の、特に能力的に強い色というものがある。
水流の持つ紅という色は、その百三〇色の内の一つで、歴史的に見ても神代狐の、しかも金狐と銀狐のみが持って生まれるらしい。
紅色に限らず、百三〇色の色を持たない者がその色を身に付けていて、勘違いされた挙げ句に力試しなどを挑まれた場合、対応が出来るはずが無い等、問題が起こる可能性も否定出来ない為、身に着ける物の主となる色は自分の持ち色とするのがこっちでは一般的なのだそうだ。。
とは言え百三〇の特色以外は特に気にする程でも無いので、決して自分の持ち色だけを使わなければいけないというわけでも無い。
オレや仲間達はあっちの服を着ているので一応確認したけれど、今身に付けている物の中には、主となる色に特色を使った物は無いらしい。
紅袴を許された立場というのは神代狐の一族の中では、他種族との婚姻により子を成す事が許された存在と言うか、それを求められた立場を示すとの事だった。
狐族は他種族との混血によって大きな力を得た個体が生まれる事が多い種族の一つという事だけれど、無秩序に混血を増やせば種族の存在自体が揺らぐ事と、他種族との兼ね合い等々の問題で、限定された個体がその権利を得るという事になっているらしい。
その為に、紅を持って生まれた者がその役に就く事となっていて、それに基づいて三狐と称するらしい。
紅袴やら、神狐やら、三狐やら、同じ存在を指す言葉が多すぎてわけが分からない。正直勘弁して欲しいところではある。
ただこれは、他種族との混血によって大きな力を得る種族の中で、神代狐が突出して元々力を持った種族という事での制限であって、他の同じ様な種族には特にこうした立場は無いとの事だった。
三狐は他種族との間に子を成す事が許された立場である為、逆に同種族間での婚姻が認められないらし。
個人的な印象ではかなりリスクを負っている気がするし、生まれた時から自由を奪われているとも思えるのだけれど、そこはその種族、そして本人の問題なので、何か言うのはきっと間違っているのだろう。
紅袴の三狐は逆に言えば、他種族との関わりを優先的に許されているとも言える為、種族に縛られず、また他種族との窓口的立場を得られる事にもなる。
こっちでは様々な種族が存在していて、それぞれ生活スタイルや、適する生活環境等も違うという事も有り、多くの場合はそれぞれの種族が固まって生活しているし、理由は様々だけれど種族によってはそれを固持している場合も決して少なくは無いと言う。
そうした枠から外れ、狐族の枠に捕らわれないだけでなく、他種族との関わりに積極性を持たない種族とも関わりが容易な立場とも言えるわけだ。
難しい事は差し置いても、神の眷属の中でも特に力が強く、特殊な立場も持つ事から、水流はいわゆるエリートと言えるのかも知れない。つまり、多くの情報を持てる、知る事が出来る立場にある為、戸畑天にしてみれば何か知っているのでは? という事になった様だ。
問題は、オレを主とし、付き添うと決めた事。
つまりは婚姻相手にオレを選んだという事なのだけれども・・・そのあたりはまぁ、なるべくスルー出来ると有難いと今の段階では思っている。
何しろ現状では、オレ自身がそれを受け入れたわけでも無いのだし、そもそも知り合って未だ一日も経っていないのだ。それを受け入れろと言われても、どうしようも無い。
「確かに肉体的欠損を補完修復する術はあると聞いた事があります。
ただ、少なくとも国内でそうした術を持つ種族や一族の話は聞いた事がありません。
最近では国外の方も多く日之本に定住していますので、そうした中には術を持つ者、術を知る者も居るかも知れませんが、私が知るのは回復力が特に強い、不死系に分類される種族の血液を用いる方法が有るらしいという程度ですが、その方法すら、事実かどうか分かりませんし・・・」
申し訳なさそうな表情で水動は応える。
「三狐の一人でさえ知らないか。
とは言えその手の話しがある以上、どこかに術は有ると考えるべきだろうな」
「三狐とは言え、私は若輩の身ですので。
そうですね、確実では無いですが賢者様方や宮内の方々、種族の長様方であれば、知っておられる方が居る可能性はあります」
賢者とは、一般的な“けんじん”という意味ではなく、特に広く知識を有している存在を指すという。現在この日之本には六人の賢者と呼ばれる人が居るらしい。
宮内とは、日之本の政治等を司る人達の事で、トップは天照大神だけれど、天岩戸に神隠れした事で知られている存在からは代替わりしていて、現在は三代目なので実質的には別人だそうだ。
種族の長はそのままだけれど、例えば神代狐だけでもこの日之本には三つの大きな集落があり、それぞれが一族として別れていて、当然それぞれに長が居る。
水流は山城神代狐一族に属するらしい。
神代狐に限定しても、その三つの一族だけでなく、小さな集落もあるという事なので、当然ながら他の種族も含めれば、全ての長を虱潰しに回るなんて無理を通り越して無謀だろう。何年かかるのか想像も付かない。
戸畑天の示した内容は、確実ではないけれど希望を示すものではあった。
問題なのは、その情報にたどり着けるかどうかという点だけれど、こればかりは何とも言えない。
「その方法さえ探し出せれば・・・」
今野は小さく独りごちた。何か考えるところがあるらしい。
その声は小さかったので聞こえなかったらしい。川瀬辰弥は特に反応する事無く、質問を進めようとした。
「自分の事はいいんです。それよりも・・・」
「よくない!」
何かを考え込む様に俯いていた今野は顔を上げ、大きな声で川瀬辰弥の言葉を遮る。
その気迫に押されたのか、あるいは先に進まない事に困ったのか、軽く苦笑い気味だ。
「今野さん、ほら、それよりも今はもっと重要な事があるから」
「あ、そうですね。すみません。
じゃぁ石動さんっ、悠樹くんと、こ、子供をとか、どういう事なのかなっ?」
「「「いや、それも優先じゃないだろ!」」」
突然指摘された水動はびっくりした表情で固まっていたが、残る三人の男共のツッコミが見事にハモった瞬間だった。
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