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デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
幕間 其の2
29/31

 1.5-1

本日投稿2/2です。

今回から幕間に入りました。プラス1~2話投稿で、第二章になります。


「で、隊長と管領の住むところはどうするっすか? 空き家で良いっすかね」

「待て待て。本当にお前は単純だな」

「でも、これまでの来訪者も含めて、みんな空き家を割り当てたっすよ。同じじゃ駄目っすか?」

「一般衆と幹部を同じというのもな。

 しかも隊長の、川瀬殿だったか、特色持ちだし、明鴉殿や白銅殿との関わりもある。

やはり一般衆とは分けて考えねばならんだろうな」

「そういうもんっすかね」


 我が娘ながら情けない。これで、このままで行けば、白石猫人集落の次期長というのだから悩みどころだ。

所詮は片田舎の小さな集落でしか無いし、脇をしっかり固めれば何とかなるだろうが、それならそれで、適した人材が居ないという悩みになる。


「お前も落ち着いて考えれば、見落としも減るのだがな。落ち着けないものか?」

「あ~、聞き飽きたっすよ。あてには無理っす」

「まったく。

 良いか、特色持ちはそもそも、影響力が大きくなる事は避けられん。今は未だ、こっちに来たばかりで、その能力も十全には使いこなせんだろうが、何時開花するかも分からんのだぞ。

川瀬殿や荻野殿が帰る手段を得る迄に、開花しない保証は無いんだ。開花した後、一般衆と同じ扱いにしていましたなどと、お上に報告出来る訳が無かろう。

それにだ、明鴉殿は天位持ちで、白銅殿は堕ちたりとは言え神だぞ。どこから注目されているかも分からんのだ。川瀬殿が開花しなくても、関連でお上に注目される可能性は否定出来ん」

「長って、面倒な事考えるんすね」

「お前も次期長なんだから、少しは学べ」

「だから、オヤジには何時も言ってるじゃないっすか、あてには向いてないっすよ」


 向き不向きでは無いんだがなあ。


「ともかく、一般衆とは分けて考えねばならんだろう。とは言え、新築するには時間が無い。儂もまさか、特色持ちが隊長に得られるとは思っていなかったからなあ」

「長としては、事前に様々な事を想定し、じゃなかったんすか?」

「他人事の様に言うな!

 お前にも関わる話しなんだぞ」

「そりゃ、上司っすからね、関わりは有るっすけど」

「お前、分かってなかったのか・・・」

「何がっすか?」


 ああ、良く分かった。

冷静ならば頭もそれなりに回るから、馬鹿ではないと思っていたが、こいつは馬鹿だ。

親の贔屓目が過ぎたのかも知れない。


「特色持ちは、立場的には公家に相当する。それは知っているな?」

「そのくらいは知ってるっすよ」

「つまりは公家と同じ扱いを受けるのだぞ。その副官、つまりは副隊長であるお前は、公家当主の傍仕えと同じ扱いになる」

「あ~、そういう言い方だと、何か立派な感じっすね」


 頭を抱えたくなる。

これでも分からんのか。


「良いか、公家の傍仕えって事はだ、お手付き要員と一緒だ」

「え?」

「公家の血筋を残す可能性を高める。それもお役目の一つだと言っている」

「ええ? あ、あー!」


 頭に無かったな、こいつは。

自分で隊長に仕組んでおいて、気が付きませんでしたでは済まされんのだが、まあ良かろう。

それこそ自分で、隊長就任の手続きをしたのだから、後から気が付きました等という言い訳は通用しないからな。


「そっか、あては側室に召し上げられる様に動かないといけないんすね。って、オヤジ、どうしよう。マズいっすよ」

「何がマズい」

「だって、それって、男と女の、えっと、アレじゃないっすか」

「そういう事だな。何だお前、気になる男でも居たのか?」

「居たらこの年で独り身やってないっす。

 って、そうじゃなくてっ、あて、そんなつもり無かったんすよ」

「つもりも何も、今更だろう?

 お前が隊長に選んで、手続きして、就任が確定したんだぞ。それこそ儂が、この状況で何が出来ると言うのだ?」


まあ、親としては、気になる男が居たならば、それを理由に打てる手も有ったものの、それも無しではどうしようも無い。

それにしても、いい年をして浮いた話しの一つも無いのは情けない。それでも愛娘の事ではあるから、相手が居たら居たで、心穏やかでは無いのだが。

とは言え、いくら公家“相当”ではあっても、傍仕えでお手付きにならなければ、それはそれで、娘に問題があったという事にされるであろう。複雑な気持ちではあるが、自分でしでかした事なのだから、男を連れて来たのだと受け止めるしか無いだろう。

等と考えていたのだが・・・


「マズいっす。五十鈴さんに何て言ったら良いっすか? それに、隊長にあてが受け入れて貰える気が全くしないっす。

 どうしたら良いか全然分からないっすよ」


 と、頭を抱えて呻いている姿を見ると、一緒に頭を抱えたくなって来る。


「五十鈴さんと言うのは、川瀬殿の仲間の、今野嬢の事か?」

「そうっす。五十鈴さんは隊長に惚れてるっすよ。隊長はこの町に残るから、出る前に告白するって相談されたっす。

 そんな状態で、あてがそういう相手になんて、言えないっすよ~」

「まあ、お前が正室になるという訳では無いのだから、正直に話しておくしか無かろう」

「そう簡単じゃ無いっすよ。

 隊長も、五十鈴さんも、来訪者っすよ?

あっちは一夫多妻じゃないらしいっす。無理っす。駄目っす。マズいっす」


 そうか、あっちは一夫一妻なのか。それだと受け入れて貰うのは厳しいだろう。とは言えその理由で、娘が手を付けられない事を正当かするには、こっちの偏見等が許さないだろう。

それでも川瀬殿がこっちに居続けるならば未だ、娘には悪いが傍仕えのまま過ごさせれば、表立って何かあるという心配は要らないだろうが、彼等は手段が見つかれば帰ってしまう可能性がある。

確かに厳しい状態かも知れない。


「それに、あては男と女の関係とか、どうして良いか全然分からないっす。困るっすよ。

 何でこんな事になるんすか~」


 ・・・全部お前の自業自得だろ!

そう叫びたくなったものの、おそらく叫んでも、何の意味も無いだろう。

事此処に至れば、娘には川瀬殿や今野嬢としっかり話し合って貰うしか無かろう。

これは長としての仕事では無いんだが、と思いつつ、馬鹿な娘に言い聞かせる為に、溜息を一つ吐き、気分を切り替えるのだった。

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