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デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
第1幕
28/31

 1-17

先週に続き、今週も半ばの投稿が出来ませんでした(、、;

と言う事で、本日2投稿します(これは本日投稿1/2です。2/2は夜の投稿となります。


「明後日出発か~」


 お風呂にも入ってすっきりして、窓から入る夜風に当たって涼んでいると、今野さんが呟きました。

 少々物憂げな感じです。


「心配事ですか?」

「ん~、そういうのともちょっと違うかな」

「川瀬様と離れるのが心残りとか」

「なっ、いやまぁ、無いとは言わないけど、そうじゃなくて」


 無いとは言わないのですね。

 お気持ちを告げられれば良いのに。

 ご一緒にこの町に残る事も、選択肢の一つだとは思うのですが、川瀬様の目に関して、ご自身で動きたい気持ちも分からなくは無いですので、難しいところなのかも知れませんね。


「てかさ、考えてたんだけどね?

 今日の午前中、水流さん、何か術使ったよね。あれって何?」

「あれは、土の神に代償を払うので、力をお貸し頂ける様に願う文言で、術を構築するものですね」

「え? 何か代償を払うの?」

「いえ、それだけの心づもりだと、むしろ自分に言い聞かせて、意識を集中させるというものですね。

 そもそも、私は宇迦之御魂神の眷属ですので、他の神に代償を払うのは色々と問題がありますし」


 勿論、声に出さなくても術の発動を失敗させないくらいの修練は積んできたので問題は無いけれど、やはり声に出した方が効果は若干強まるので、隠して発動させるのでなければ言葉に乗せた方が良い訳です。

 そう応えると今野さんは、それが言霊とかの効果なのかと聞かれました。

 当然言霊ではなく言の葉ですが、どうも今野さんが思っているものと違う様なので、詳しく伺う事にしました。


「えっと、言霊と言の葉って、違うの?」


 そもそも文明面では、力有る言葉の概念は分かっても、力在る言葉となると、空想上のものとして捉えられる事が多い様でしたね。

 言霊とは、力在る言葉を指します。

 そもそも、言葉は意思を伝える手段ですので、何かを行う、何かを起こす為の発動元で在る訳です。

 その為、言葉には当然意味が含まれます。

 例えば火と言えば、熱と光を出す現象を示しますが、炎と言えば、光と熱を発している部分そのものを示します。

 単なる現象を指せば、その結果は火が熾きる結果に結び付きますが、光と熱そのものを指せば、それは熾きた火の効果に結び付きます。

 例えば火傷を例に挙げますと、火がそこに熾きたから生じた結果と、炎によって確定した結果では、その効果度合いも大きく異なります。

 そうした、意味を持つ言葉は結果に結び付く理の内にある為、結果を生じます。

 また、炎の語源はともされます。穂とは“花や実が密集して付いた物”を意味しますので、炎は密集した火の意味も持ち、単なる火とは効果が異なる訳です。

 火は“ひ”である為、日であり、比でもあります。日は消せませんし、比は比べる意味を持ちますので、周囲と比べてそこに熱と光を出すという意味を含みます。

 等々、言葉によって影響と結果を生じさせる力も持つのが言霊ですね。


 言の葉は、言葉による表現を指します。

 勿論その言葉にも意味を持ちますが、そのものを示す訳ではなく表現ですので、それだけで影響や結果を生じさせる訳ではありません。

 むしろ発する事で、自身の抱くイメージを集約させたり、他者の抱くイメージを絞り込む為のものになります。


「今野さんは、本日は使われませんでしたけれど、河原で・・・法術でしたっけ? 符を使われた時に『火炎』と、言霊を併用されたじゃないですか」

「え? あれは単にイメージって言うか、雰囲気? だから、むしろ言の葉の方じゃ無いの?」

「火炎は、そのもので燃え盛るという意味を持ちますし、火焔でもあります。焔は激しさを示す意味もありますから、激しい火の意味をも指す事になりますので、その効果は単に炎とするよりも大きくなりますよ」

「言霊になるんだ、あれ」


 そう言えば、言霊によって効果が得られるのであれば、もしかして今野さんは言霊使いの才もお持ちなのかも知れませんね・・・と考えていたのだけれど、それを語る前に、別の質問に遮られてしましました。


「てか、それより気になったのが、前地の何とかって言うあれ」

「あぁ、あれは術を発動する場において、何の力を借りて行うのかを示したものですね」


 今回は土の力を用いたので地。自分が立っているその場から見て、前方と後方それぞれを五分割した時に、その方向にある強い力を意識して示し、それだけの威力という結果を生じさせると自分に言い聞かせる為のものになります。

 あの場所では前地の二、つまりは前方の左斜め前方向の地の力、前地の一、同様に前方左方向の地の力、後地の四、後方の右斜め方向の地の力と、感じた強い順に意識して、それだけの力にて術を発する事を意識した訳です。

 もっともこの術は、狐族の様に周囲の察知能力が高くないと無理なのですが。


「細かく決まり事があるんだね~。

 何か魔法みたい」

「魔法と同じですよ?」

「え?」


 そもそも術式は、東方魔術と言われていますので、西方のそれとは少々理屈が異なりますが、基本的には同じ系統で効果を得る方法です。

 西方では言の葉を用いた術式の事を、音声魔法と言う様ですしね。


「じゃぁ、魔方陣とかもあるの?」

「あれは簡易的な魔具と同じですよ。

 東方では印であったりしますが、要はその場で術式を形として示して、効果を引き上げるものですし、それを紙や道具等に記した物を魔具と言いますから」


 身振り手振りや、地面に描く事で、事前に用意していない魔具の代わりを簡易的に仕上げるその方法は、確か西方では陣魔法と言うのでしたか。魔具を用いる場合は魔具法でしたね。


「そっか、魔法なんだ。

 理屈が異なるって言うのは?」

「意識の違い、ですね。

 東方では五行、つまりは五つの大きな要素を基本としていますが、西方では四元素、つまりは四つの大きな要素を基本としていますので」


 東方では木、火、土、金、水の五つ。

 西方では火、空、水、地の四つ。

 これは古くからの馴染みであり、そう言う認識が根本にあるのでイメージしやすくなる為、それらを基本として原理が組まれて来た歴史があるのです。

 つまりは認識し易い方法で組まれたその内容が、東方と西方で異なっているわけです。

 とは言えこれは概念的なものなので、現代においてはその方法にはまらない術式を用いる人も居る様ですが。


「ん~、じゃぁさ、水流さんは土の術を使ったわけでしょ? 何で空に出現させたの?」

「地の術ですから、空に上げるよりは地に戻す方が、勢いは増しますよね。無駄も無いですし、当然その分威力も増します」

「なるほどね~。

 色々決まり事が細かいのは、理由あっての事なんだね」

「理、つまりは法則から外れた事は実現出来ませんから、細かな決まり事を守ると言うのは重要ですから」


 文明面の方にとっては未知の現象の様ですが、所詮は技術の一つですから、行程さえ間違わなければ、誰でも行えるものでしかありません。

 もっとも、その行程を理解し、きちんと行使出来る様になるには、他の技術と同様に相応の訓練が必要ですけれどね。



「分からない事があるんですけど、良いですか?」


 そう川瀬君が聞いて来たのは、悠樹君の持ち色の能力を使って、銃弾と言う高速移動する物体に影響を与えるという発想について話していた時だった。


「特色と一般色で、大きく能力に差が有ると聞いたのですけど、悠樹君の例を見ても、特色が強いという印象が無いんですけれど」

「あぁ、結果だけを見ると分かり難いか」


 そもそも、悠樹君が上手く使いこなし過ぎてるからというだけかも知れないが。


「悠樹君、確かイメージした状態で撃って、能力効果が出ているんだよな?」

「そうですね。撃った後では流石に対象が速過ぎる為か、効果は無かったです」

「特色で、同じ様な能力だった場合、撃つ前の状態で結果をイメージしておけば効果が出るぞ」


 つまりは、一般色ではその能力を発動している時にしか効果は生じないけれど、特色の場合は、事を行う前にイメージしておけば、事を行った時に効果が生じるから、次の手をイメージしたりする事が出来る。

 通常、人というのは何かを行う場合、次の動きを先んじて考える傾向があるけれど、それをしてしまうと一般色の能力は効果を生じない事になる。

 つまり、先刻の様に一つの動きで事が終わるならば困る事は無いけれど、異なる動作を連続して行い、しかもそれぞれに能力を生じさせようとすると、急に難しくなるわけだ。


「勿論、能力の発動時に、別の事に気を取られても効果が生じなくなるしな」

「成る程。結果では無く、使い勝手の面で大きく違う訳ですか」

「それこそ一番重要な事だろ?

 能力があっても発動しない、効果を生じないんじゃ、無いのと同じだからな」

「確かにそうですね」


 そもそも、悠樹君の能力は魔銃使いだからこそ効果的に使えているけれど、同じ遠距離攻撃型であれば、射線を曲げられるのだから能力効果に意味は無い。

 効果的に使っているから有用に見えるけれど、実際には使い勝手が結構厳しい。

 今野君の能力も、活性化という大枠で見れば石動君と似たものだけれど、おそらく、同じ事を目的に能力を使った場合、圧倒的に石動君の方が効果が大きいだろう。

 今野君の生じさせた霧は、発生視点を中心にムラが有ったが、石動君が同じ効果を能力で発現させれば、有効範囲に均一な霧が、一瞬にして展開された事は想像に難く無い。


「やはり、特色と一般色では大きな違いが有る訳ですか」

「そうじゃなければ、特色だっていう理由で騒がれたりしないな」


 川瀬君は特色持ちだから、気になるんだろう事は理解出来る。

 とは言えそんなのは最初の内だけだ。

 慣れれば一々気にならなくなるだろうからこそ逆に、今の内は意識しておいた方が良いはずだ。

 意識しなくて済む様になればその分、知識として入って来る分にも抜けが生じるものなのだから。

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