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デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
第1幕
20/31

 1-9

 川瀬辰弥が、とりあえず了承を必要とする三人の人達と話しをしてからと、衛士衆の話しを締めた。

 時間的に夕食でも良い感じとなったので、オレ達はそのまま食事処に行く事にした。

 今野が「今夜はパジャマパーティーだ」と言って白石悠から、半ば無理矢理同意を得たので、ならば早速三人と調整して来ると言って離れた。

 泊まりに来る迄に、手配を済ませるつもりなのだろう。性格的にはアレだけれど、仕事はきちんとこなせる人らしい。


 夕食を終えて、明日の予定をみんなで相談する。

 とりあえず白石悠が、早ければ明日で調整と言っていたものの、それで一日の予定が埋まる訳でも無い。

 オレ達は未だ、こっちで自由に動ける訳でも無いし、だからと言って、ゲームやインターネットも無いから、時間を潰す事も難しい。

 生活に関わる部分は慣れも必要なので、買い物がてら出かける事も有りだけれど、大した時間が潰せる訳でも無いし、もっと優先度の高いものもある。

 相談した結果、明日は戦い方を教えて貰う事になった。

 基本的には、それぞれどの程度の力を持っているかの確認の意味が強いだろう。

 町に残る川瀬辰弥と荻野玄太はともかくとしても、オレを含めた残りは近い内に町を出る予定なのだから、互いの力や戦い方を知っておく事は重要になるわけだ。


 相談している間に、白石悠もやって来ていたけれど、先刻の事が有ったばかりなので、流石に今回は大人しく、と言うか普通にやって来た。

 相談の流れも途切れなかったので、大人しく横で話を聞いていた感じだ。


「戦闘訓練なら、衛士衆の訓練場を使うと良いっすよ」


 どの程度の力を持つかを確認する為、相応の場所が無いとマズいのは事実だった。

 それが剣道等でさえ、道場とかを使うのが当然で、道端で訓練する事は通常有り得ないし、それが今回はオレの銃や、水流と今野の符術もあるのだから、どこで行うかという話しになった時に、白石悠から提案された。

 何でも町の西側にあるらしい。

 建前的には衛士衆の訓練所だけれど、魔具師等が試験に使ったりと、開いていれば一般の使用も問題無いらしい。


「三人との面会は明日の午後になったっす。

 明日の午前は演習場に予定が入っていないので、好きに使っちゃって良いっすよ」


 との事だったので、明日の予定がこれで決まった。その後時間が余れば、町を散策したり、店を回っても良いだろう。

 取り急ぎみんなでやる事も終えたので、後は寝るまで自由時間になる。

 白石悠は今野に引きずられる様に、女部屋へと連行されて行った。



 私達は、明日の予定を決めて部屋に戻ったのですが、今日は悠様も宿泊される事になりました。

 何故ここに居るのだろう? という顔をされていたのに関しては、私も同じ気持ちですが、今野様の求めに応じたのですから今更という気もします。

 実際のところ、出会って間が無い事と、主様のご友人という事で、今野様と二人きりというのも正直気不味さがあるのも事実だったので、悠様が居てくれる事は、気持ち的に救いでもあったのですけれど・・・。


「で、水流さんは何で楓馬くんに名前で呼ばれてるの? 出会ったばっかりでしょ?」


 悠様を半ば無理矢理連れ込んでおいて、真っ先に私に振りますか・・・。

 とは言え隠し立てする事でもないので、気恥ずかしさはあるけれどお応えしました。


「私がご主人様と呼んだら嫌がられてしまいましたので、名前で呼んで頂く事を条件に、私も呼び方を変える事を受け入れたのです」

「変えて主様なわけか~」


 今野様は首を傾げられ、何やら疑問を持たれてる様でした。


「おかしいですか?」

「水流さんも下の名前で呼べば良いのに」

「押し掛けですので、一線は引くべきだと思いますし・・・その・・・」

「その、何?」

「・・・恥ずかしいです」

「うわ~、水流さんかわいぃ~~~」


 と言って飛びつかれてしまいました。正直なところ、何が何だか分かりません。

 私が困惑している中、悠様が声をかけて来ました。


「それで、何であたしが呼ばれたんすか?」

「そう、それっ!」


 勢い良く悠様を指さす今野様。

 今の内にこっそりと離れようと思ったものの、今野様の手が私の手をしっかりと握っていて逃げられません。


「悠さんてさ、川瀬さんの事どう思ってるのかなって?」

「はい?」

「いや、ほら・・・何かやたら隊長にしたがってたじゃない?

 縋り付いて、色目使ってたじゃない。女の武器使って、自分の傍に置こうとか・・・」


 私も悠様も、呆けてしまいました。

 確かに夕刻、悠様は縋り付いてでも川瀬様に隊長を引き受けて貰おうとはしていましたけれど、色目は使っては無かった様な気がします。

 と、そこまで考えて、ふと思い至った事が有ったので聞いてみました。


「もしかして今野様、川瀬様の事をお慕いされておられるのですか?」

「あー、そうか。勘違いっすよ、あたしは隊長になって貰いたかっただけっす。

 てか、今野さんから取らないから安心して欲しいっすよ」

「いや、ちょ、待ってっ。

お慕いしてるとか、取らないとか、わたしは別に、・・・その・・・」


 顔を真っ赤にして、挙動不審になる今野様の姿はとても可愛らしく、微笑ましいものでした。


「川瀬様とはその様なご関係でしたか。

 それであれば、悠様の行為にヤキモチを焼かれたのかも知れませんね」

「だから待ってってば~。

 私みたいな子供が、川瀬さんと、その、そういう関係とか無理だからっ」


 今野様のそのお応えには、私も悠様も首を傾げます。

 勿論種族によっても異なりますが、確か人族では十五才で成人ですので子供では無いですし、九才程度では年の差が大きいとも思えなかったのです。

 悠様も同じご意見でした。


「いやいや、あっちの日本では成人は二〇才だし。それ以前に私からは問題無いかも知れないけど、もし川瀬さんが私を受け入れてくれたら、社会的に結構マズいからっ」

「「そうなんですか?」」


 私と悠様の声が重なります。


「確か川瀬様は二四才でしたよね?

 年齢的にも、今野様とは問題が無いと思うのですが?」

「あ~、何だろ。

 前提があっちとこっちじゃ違うのかな?」


 と言って文明面での、つまり今野様達にとっての前提を教えて下さいました。

 二〇才を越えていても、九才差はそこそこ年の差があると見られたり、若い方が女性の場合で、特に十七才以下等だと男性の方がロリコンと呼ばれたりして、結構奇異な目で見られたりするそうです。

 ロリコンとは何でしょう?

 私たちの前提からすると信じられない事でした。文化面では多くはありませんが、三十代の旦那様と十四才の奥様というご夫婦もそれなりにおられる事を考えれば、今野様と川瀬様とでは、特に何の問題も無いと思えるのですが。


「そもそも二〇才で成人って、婚姻はその後になるんすか?」

「え~と、確か男は十八才、女は十六才以上だったかな」

「今野さんは確か十五才っすよね? それなら今の内に隊長と心を通わせておくのは、何の問題も無いじゃないっすか」

「そうですよ。それなのに年の差とかを気にするのはおかしいですよ」


 そう、根本的に今野様と私たちとの間にズレがありました。

 十六才で結婚出来るなら、今の内に心を通わせておかないと行き遅れてしまうと思ったのですが、どうやらそうではない様です。

 文明面の日本という国では、二十代後半、と言うより三十才前後での婚姻が平均だと言うのです。


「それじゃ、子供があんまり生めないじゃないっすか」

「そうです。それでは種族が先細りとなってしまいます」

「いやだから、何ですぐこ、子供とか・・・

そういう話しになるのよ~」


 やはり今野様の、と言うよりも文明面のでしょうか、考え方は分かりません。

 勿論婚姻後も様々な事情で子供が授からない方々もいますので、子を授かる事が全てとは言いませんし、別に私も、ただ子を授かる為だけに異性と肌を重ねたくはありません。

 ただ、お慕いする相手との子を授かり、種族も続くのであれば、何の問題も無いと思うのです。

 実際今野様によると、文明面では晩婚化や少子化という問題が実際に生じているそうです。経済的問題や、社会的問題、環境的問題等々も原因としてあるそうですが、それであればこそ、今野様と川瀬様との間にロリコンとか言う偏見を許せる状況には無い様に感じました。

 その事に対して今野様は、若い女性に興味を持ち犯罪に走ったり、若い女性にしか興味を持たなくなったり等の問題も有る為、何とも言えないという事でした。

 けれど今野様の場合は、女性側からお慕いしているのですし、それを川瀬様が受け入れられたのであれば、何の問題も無いと思ったのです。

 しかし文明面では、そうした問題への対策も含めて偏見や常識が生まれて、それが前提になるという事でした。

 そもそも、その見分けが出来ないからと。

 私たちにしてみれば、偏見を持つ前に、その方達と話しをしてから判断すれば良いだけだと思ってしまうのですが、やはり文明面は私達とは、前提がかなり違う様です。

 けれど今、今野様は文化面に居るのですから、文明面ではどうかなど知りません。

 未だ短い時間での関わりですが、こうして話しをしていれば、今野様が愛らしい方だという事くらいは分かるのです。

 その今野様が想い焦がれて、それでも内に秘める必要があるのでしょうか? 考えていたら、何だか我慢が出来なくなってしまいました。

 だから、悠様と私は言ったのです。


「押し倒しちゃえばいいっす!」

「今から想いを告げに行きましょう!」

「ちょ、ちょっと待って。急ぎすぎだからっ。心の準備が出来ないからっ」


 及び腰になった今野様に、二人で追い打ちをかけました。

 川瀬様に受け入れて頂けないのであれば仕方が無いにしても、想いも告げずにいては駄目です。

 そうでなくとも私達はこの町を出、川瀬様はこの町に残るのですから、想いも告げないまま離れている間に、川瀬様に思い人が出来てしまったら後悔しか残らないではないですか。


「な、何か二人共、性格変わってない?」

「「これが地です」」

「地・・・なんだ・・・」


 という今野様の言葉に、私は今更ながらに気付きました。勢いに任せて礼儀を失していた事を。


「あの、すみませんが今の事は、主様には内緒にして頂けると・・・」

「え~、何で? 隠す必要も、取り繕う必要も無いでしょ。

 そもそもさ、押し掛けだからとか言ってたけど、水流さんだって悠樹君と両想いの方が良いよね?」


 それはそうです。

 主様に想って頂けた事を考えるだけで、私は幸せな気持ちになれます。

 でも、それは難しいのです。


「何で?」

「主様と私では、同じ時を生きられません。

 私達神代狐は平均寿命が二千年程です。金狐は更に長いと言われています」


 主様が年老いても、私は若いままなのですから、そんな私が横に居れば、主様は辛い思いをされる事になるかも知れません。


「あ~、確実に悠樹君の方が短命だよね。

 あれ? でも待って。そうすると水流さんの方が置いて行かれる事にならない?

 辛いのって水流さんだよね?」

「そうっすね。確か狐族は一生、ただ一人を想い続けるって聞いたっす」


 あ・・・悠様が余計な事を言った・・・。


「え、水流さんって一生悠樹君だけを想い続けるの?」


 もう誤魔化せそうにはありませんし、今野様に対して誤魔化すのも失礼でしょう。

 私は正直に話す事にしました。


「そうですね。狐族は一度想った相手だけを一生想い続けます。

 なので私はこの先、生ある内に主様以外の異性をお慕いする事は無いでしょう」

「何で? 紅袴だっけ、それになると他の種族からしか相手選んじゃいけないんでしょ? 何で一生に一人なのに、寿命が違う他の種族からだけに決められないといけないの?」

「あー、それは仕方無いっすよ」


 悠様が言わんとする事は分かります。

 なのでそれは、私自身が言わなければいけないと思いましたので、悠様の言葉を引き継ぎました。


「確かに狐族は、異なる種族との間に生まれた子供が力を持つ傾向はありますし、それが一族の為というのも嘘ではないのですが」

「ですが?」

「金狐や銀狐で生を受けた者は、何故か同族とでは子を授かる可能性が限り無く低いのです。

 加えて、そういう生態だからかも知れませんが、同族の異性に対して、特別な感情を持つ事もほとんど無いのです」


 そう、しきたり等は建前で、それが無くても実際には変わらないのです。


「そっか~。

 でも、それはそれとして、水流さんは悠樹君を選んだわけだから、寿命とか関係無く両想いにならないとだよね」

「いえそれは、主様のお気持ちもありますから」

「だったらわたしもお返ししとく。 押し倒しちゃえ!

 って、それは最終手段だとしても、あっちでは、子供作って女をポイ捨てはロリコンどころじゃなく非難されるから、水流さんも攻め方変えないとだよ」」


 私は顔が赤くなっている事を自覚していました。

 そう言われれば、私は主様に押し掛けたという以前に、私自身を押し付けただけなのです。それでは主様もお困りでしょう。


「ところでさ、そういう恋バナ、悠さんはどうなの?」

「え、あて《私》ですか?

 相手がいないんすよー」


 女部屋ではそうしてワイワイと、夜遅くまで話しが盛り上がって行きました。

 最初感じていた気不味さ等、どこかに吹き飛んでしまう程に。

 その中で、やっぱり呼び方が堅苦しいという事を今野様が言い出して、名前呼びで様付け禁止を言い渡されてしまったのでした。

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