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デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
第1幕
18/31

 1-7

基本、水曜投稿が、諸事情で抜けました(><;

明日投稿含め、週2はギリ確保? な感じです。

 オレは深く息を吸い、吐く。

 意識して気を落ち着かせないと、オレとしてはこの話しは未だ厳しい。


「では、三つ目。

 神ってのは何だ?」


 オレ達人間が、あっちで認識しているのとはどうも違う印象を、こっちに来てから受けているのだけれど、それでもこれまでの認識から来るイメージが先行するのは避けられない。

 もし神が、言われていた様に救いをもたらす存在ならば、オレは・・・。


「怖い顔になってるぞ。

 神族に対して何か思うには、こっちに来たばかりだろう? 何があるのか言ってみな」


 どうも好奇心を刺激してしまったらしい。

 オレ自身もこの話をしなければ、聞きたい事が得られない可能性も考えていたから一人残ったのだ。口に出したくない気持ちはあるけれど、そんなものはどうでも良い。


「オレの両親は、国に殺されたんだ」


 そう話し出した。


 どういう経緯だったのか知らないけれど、それまで自衛以外は非戦を唱えていた日本という国が、海外に居る日本人や、協力下にある他国を守るという条件の下に、先行自衛という理由で戦闘参加を可能とした。

 当時も賛否合ったらしいけれど、あくまでも可能とするだけだという理由で押し切っての決定だったらしい。

 その流れので、武器や兵器の輸出や供与も増え、国内での軍需色はそれまでより増加した。勿論露骨に軍国主義に走ったわけではなかったので、オレ達が生まれ、育って来た中でも一般人にはそうした変化は見えなかったけれど。

 とは言え、オレ個人で言えばそんな事はどうでも良いとさえ言える話しだ。

 問題は、オレの両親が技術者だったという事だろう。

 当然民より公の方が、仕事としての安定性は高い事も有り、両親共に軍需関連の仕事も行っていた。

 父親は機雷撤去関係の機械類制御に関わる技師で、母親は運用に関わる電子機器に絡んだ技師だか研究者だったらしい。当然露骨に軍需産業を生業にしていたのではなく、その技術が軍需利用もされていただけなのだけれど。

 オレが十二才の時、両親に会社から海外出張の声がかかった。

 国が、設置された機雷を除去する為に海外に軍を出していて、そのバックアップ業務の依頼があったのだ。

 勿論赴任先は機雷敷設地域ではなく、もっと後方に用意された場所だったし、そもそも戦闘行為をする為ではなく、平和目的の派兵だからというのもあったのだろうし、バラバラの人間を赴任させるよりは、一家揃っての方が会社的に都合が良かったという事も理由だろう。

 オレが未だ小さかった事も有り、一家揃って一年間の海外生活となった。

 それから数ヶ月のある日、機雷を撤去された側からすれば日本が敵と連んで自分達の戦線を崩壊させようとしていると取られて、両親の仕事場になっているメンテナンス基地が攻撃され、オレの両親は帰らぬ人になった。

 戦闘地域じゃないから攻撃は受けないだろうという甘い考えで、オレの両親を含む非戦闘員が大勢死んだのだ。

 とは言え、それでは軍需に絡んでいなかったかと言われればそうではない。攻撃する側からすれば、攻撃する理由が、正当性がそこにはあった。

 そう、甘い考えと、そうした事情を理解出来ていなかった腐った政府に、国に、殺されたわけだ。

 オレはその時、十三才になっていたとは言え、何かが出来る程の年齢では無い。直ぐに日本への帰国が決まり、訳も分からない内に両親が努めていた会社の人に連れられて日本に帰った。

 両親の保険金や、会社から渡された金で、オレ自体の生活は当分困る事は無かったけれど、問題は家だった。

 両親が死に、親が頑張って建てた家は、相続税を払う為に売りに出すしかなかった。

 勿論そうした手続きをオレが出来るわけもなく、弁護士だか何だか知らない大人がやったわけだ。

 で、オレの両親には近親者が居なかった。

 遠い親類は居るらしいけれど、それこそ親でさえ付き合いが無かった、戸籍を辿れば程度の親類では当然オレの事を面倒見る義務も無く、オレは施設の世話になる事になった。

 こうしてオレ自身の意志はどこにも含まれないまま、両親と家、要はこれまでの全てを失ったわけだ。

 そういう時に近づいてくるのが宗教というやつで、露骨にでは無かったけれど、その手の、いわゆる恵まれない子供達に、施設の目が届かないところで近づいて来た連中は、神による救いだのを説いた。

 そこでオレは思ったのだ。神が救いを与えてくれるなら、何故両親達は非戦闘地域だからという名目上の理由で戦地に送られなければならなかったのか、何故決めた連中ではなく無関係の彼等が被害を負わなければいけなかったのか、何故オレの生活は奪われなければならなかったのか。

 そして、神が救いを与えてくれるというならば、何故こんな事になったのだ・・・と。

 オレは施設にさえ、ここに居るのは恵まれない子供なんですよと示している様に感じ、施設を飛び出して路上生活をした。

 何しろ国への恨みも大きかったので、警察の目に付く事さえ警戒して、逃げ回って数ヶ月を生きた。

 そして今の義父に捕まって、とある交渉の結果養子縁組をする事になった。

 今思えば、互いの、と言うより義理の親が養子縁組出来る年齢ではなかった筈なのだけれど、その辺りが出来たのだから、義父だか義母だかは分からないけれども、普通じゃないのだろう。

 流石にオレも十五才になり、こうした流れの中に、仕方が無い部分や、想定外の要素があった事くらいは今は分かる。

 ただ、分かる事と、納得出来るかどうかは別だから、未だにオレは国を、政府を恨んでいるし、神という曖昧な存在への疑問も持ち続けているのだ。

 それが、ここに来て神族は居ると言う。目の前にいるのが、堕ちたりとは言えその系譜に連なる者だというのだ。

 オレが神について知りたくなるのは、むしろ当然の流れだろう。


「坊やも苦労して来たんだね。

 とは言ってもねぇ・・・」


 そう言うと、頭をかく。


「坊やが考えてるのとは大きく違うかも知れないよ?」


 という前置きから話しが始まった。

 

 オレ達が神という存在、こっちで言う神族とは、この日之本では大きく、古来と外来の二つに分かれるらしい。

 古来とはこの地に生じた存在の神族で、いわゆる土地神というやつらしい。

 つまり、この国と言うか、それぞれの地を生み出した産土神うぶすながみと、出来た土地を守る氏神うじがみ等が該当する。

 外来とは他で生じた存在の神族で、例えば太陽神や雷神、風神等と言った、いわゆる土地神以外の多くの神々が該当する。

 古来は地を造り、地を継続させるという、いわばこの世の理の根源となる能力を持った存在であり、欠かす事は出来ないけれどそれだけでは成り立たない。

 外来は地とは異なる理によって生じ、この地の理の枠にはまった存在となる。

 例えば、天照大御神あまてらすおおみかみは太陽神であり、この地ではなく宇宙の理で生じ、天目一箇神は鍛冶神で、地が継続されるという結果の理で生じた神だから外来という事になるわけだ。

 ともあれ、それでは神族が根源に関わる力を持つからと言って、何でも出来るかと言えばそうでは無い。

 あえて土地神や太陽神、鍛冶神等と分かれている通りで、個々の能力は限られた範囲でのみ発揮されるというのは、神族以外と変わらないだけで無く、それこそ天照がこの国で能力を発揮した場合、地上に太陽が発生するのと同じとまでは言わないけれど、それでも同様と思える程度の影響が生じる事になる。


「つまりは、簡単にその能力を使う事さえ出来ないわけか」

「そう考えて間違いでは無いな。

 とは言え存在するからこその影響というものも有るのは事実だから、そこに在ればそれで良いとも言えるが」


 結構辛辣な言い様だ。

 とは言え日本、いやこっちでは日之本か。そこには居なくても、世界的に見れば創造神やら全能神というのも聞くけれど、それはどうなんだろうと疑問が生じる。


「国外の神族についてはあたしは詳しく無いけど、それじゃ坊やに聞こうか。

 創造神が居たとして、創造し続けたらどうなる?

 全能神が居たとして、では何故他の神族が存在する必要が有る?」


 そう聞かれてしまうと、返す言葉が無い。

 勿論、宇宙のどこかにというレベルまで広げれば、その存在は否定し切れないものの、少なくともこの星に居続ける必要性は無いわけだ。


「つまりだ、神族って言うのは、力が強すぎて扱いに困る存在の総称でもあるわけだ。

 しかも、その扱いに一番困っているのが本人達神族だという、一種の自己矛盾という存在だね」


 深く息を吐く。

 あっちでの概念的な部分との大きな差異がありすぎて、自分の中にあった疑問や不満という部分が困惑し始めていた。


「そもそも、坊やはあっちで言うところの神ってやつに、救ってやると言われたのかい?

 と言うよりね・・・」


 布目一箇が示したのは、宗教についてだ。

 宗教には大きく二つの流れがあり、一方は人間の力が及ばない出来事等への観念的なものと、聖人と呼ばれる人の教えを伝えるものがある。

 そのどちらであったとしても、どこに“神が人を救う”要素があるのか、救われた人が居て生じたとされる宗教だけを挙げても、だからといってそれ以外の人を救うなどという根拠がどこにあるのか? と聞かれれば、確かにその通りとしか返す言葉が無い。


「とは言えあたしはあっちの事は、聞いた話しでしか知らないから、それが正解だとは言えないけれど、少なくともこっちの神族は、誰かを救う為に存在してはいないね」


 これはトドメだと感じた。

 そもそもオレ自身、神については曖昧だと感じていたのだから、否定する意味も無い。

 直感でしかないけれど、こっちの神族と言うのは人間の認識や都合、解釈等が介在しない、いわば純粋な状態、あるいは原型なのだろう。

 そうであれば、そこからの派生であるあっちでの神に対する概念から生じる“救い”という言葉の意味は、個々への救いを示すのでは無く、救われたいと思う心が向かえる先としての“救い”といった感じだろう。

 その想定は、この二年の内に推定するところまでは至っていたから、それを受け入れればそれで良い。

 要は、オレはそこに救いを求めなかったから疑問を感じたのだろう。

 もう一度、大きく息を吐く。後は気持ちに整理を付ければ良いのだ。


「さて、三つの質問には応えた。

 あとはとっとと帰れと言いたいところだけど、一つあたしも聞きたい事がある」

「何だ?」

「坊や、未だ緋緋色金を持ってるだろ?」


 本当にブレ無いな。

 隠してもあまり意味が無さそうなので、あと七個の金属塊が有る事を告げると唸り出した。


「全部買うには金が足りない。

 あと二つだけ売って欲しい。それと、残りの五つは予約取り置きだ」


 全部買う気だよ、この人。まぁ良いけど。

 とは言え、これは交渉材料になるかと思い付き、言うだけ言ってみる。


「なら予約代わりって訳でも無いけれど、もう一つ教えて貰えるか?」

「何が聞きたいんだい? 言ってみな」

「全能、って言うのは成立すると思うか?」

「・・・・・・」


 その応えは、オレにとっては全ての情報を得たのと同じだった。

 オレは、売る分の二つだけでなく、残る五つ分の金は都合の良い時でかまわないからと言って、全ての金属塊を置き、二つ分の金を受け取って宿に帰った。

 布目一箇の店を出る時に、後ろで小躍りしていたのはまぁ、見なかった事にしよう。



 宿にみんなが集まった頃は、夕食に出るには少し早い時間だったので、暫く自由時間となった。

 みんなは買って来た物を整理したりしていたけれど、オレは鍛冶屋で終わったので、一人窓際で外を眺めて過ごした。

 外からはそれなりの喧噪が聞こえるが、ほとんどが店舗の並ぶ方向からのもので、一番の大通りとなっている正面側からでさえあまり音は聞こえて来ない。

 たまにゴロゴロと音が聞こえて来るのは、大きな道に併設される様に敷かれている軌道の上を行くトロッコの音だ。

 重い荷物や、嵩張る荷物の移動の為に、町の中には手押しトロッコ用の軌道が張り巡らされていて、トロッコ自体は自由に使えるらしい。

 こういう所からも、馴染んだあっちとは違うのだなと感じてしまう。

 のんびりとした時間が流れ、喧噪の音も騒がしい程でもなく、自然と眠気を誘う様な柔らかな空気感が部屋の中に満たされていた。

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