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デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
第1幕
13/31

 1-2

 歩き始めた当初は、みんな色々考えたり、周囲を警戒したりで、ただ黙々と歩くだけだったけれど、やがて今野が水流に対して、あっちでの男女の付き合い方として水流のアプローチがおかしいだとか吹き込んでいたり、川瀬辰弥が戸畑天に戦い方等を聞いたりしていた。

 温度差がある二組の会話を聞きながら進むと、やがて木々の隙間から壁の様なものが見えて来た。

 近づく程にその全景が姿を現す。

 木々が途切れて広場の様になった場所の先に門の様なものがあり、その左右に壁が広がる。その見た目は全体的に和風で、まるで昔の町並みを再現させたテーマパークの様に感じるものだった。

 ただ、その外見に気を取られたり、やっと町に辿り着いたとほっとする事も無かった。


「ねぇ、何か揉めてない?」


 と今野が言った通り、門の辺りで複数の人同士が向かい合っていて、その全員が武器を手にしていたのだ。


「状況が分からないが、門を背にしているのは衛士衆だ。

 門の外側にいる連中が盗賊か何かで、押し入ろうとしているって感じでも無いしな」


 その戸畑天の声に状況を再度見てみると、確かに押し入るのを防がれていると言うよりも、むしろその、衛士衆とか言う人達がそれ以上出て来ない様に押しとどめられている様に見える。


「衛士衆は、あっちで言うところの警察みたいなものだ。

 それに追われてるなら未だ分かるが」


 状況が分からないし、迂闊に介入するわけにも行かない。

 オレ達は細い山道を来て、門までまだ少し距離があるのだ。

 道を出るギリギリまで近づいてみると言って戸畑天は木々に隠れつつ進んで行った。

 オレは水流に声をかけて、二人で戸畑天の後に続く。何が起きるか分からないので、仲間達はその場に留まらせた。

 広場に出るギリギリの辺りまで進むと、全体の人数や姿が分かり、何とか声が聞き取れる様にもなった。



「NPCのくせにうっせぇんだよ。

 イベント発生もして無ぇのに、追いかけて来るんじゃねぇよ」


 連中の中心に居る、西方風の軽鎧を着た男が叫んでるっす。

 叫んでるだけなら別に良いし、粗野なだけなら押さえ付ければ済むから問題無い。ただ連中は、いや少なくても中央の奴はずる賢さが目立つ。

 元々は六人だけれど、先刻まで衛士衆に居た二人が加わって八人に増えている。

 中央の奴と同じ、西方風の軽鎧を着た男があと二人、西方風の重鎧を着た男が一人、ローブとか言う西方風の外套を着た男が二人。

 軽鎧は装備から見て前衛、重鎧は防御役っすかね。外套の二人は術者の可能性が高い。

 残る向こうに付いた二人は、衛士衆共通の革鎧装備で、確か前衛だったっす。


 人数的にも、相手の装備等から見ても、多少被害が出る事を覚悟すれば何とかなると思うっすけど、問題なのは三人の拘束された女達。中央の奴も自ら一人を左腕で押さえている。

 拘束されているからか武器を突き付けられてはいないけれど、下手な動きをすれば彼女達に被害が出る可能性もあるから、手が出せないっすよ。


「なぁ、あの副隊長さんも連れて行こうぜ。

 猫耳が一人でも増えた方が楽しめるだろ」

「見た目も良いし、二人で一人を楽しむには丁度良いぜ」


 などと下卑た笑いを浮かべて話しているのが聞こえる。

 あての後ろに並ぶ衛士衆の皆が殺気立つけれど、ここで感情にまかせて飛び込むわけには行かない。


「そうだな。

 オイ、そこのお前も楽しませてやるから。武器を捨ててこっち来い。

 じゃねぇと、誰かの腕とか飛んじまうかも知れねぇぞ」

「くっ」


 衛士衆の皆が気色ばむのを、首を振って押さえる。

 このまま三人を拐かされるよりは未だ、私も付いて行って隙をうかがった方がチャンスはあるかも知れない。

 最悪も頭を過ぎるけれど、むざむざ三人を目の前で拐かされて、私だけが無事で居るわけにも行かない。

 両手に持った小刀を、地面に突き刺す様に投げ捨てる。これは衛士衆の中でも一部しか知らない“隙を窺え”の合図なので、向こうに付いた二人には分からない筈だ。


「さっすが正義の味方、衛士衆の副隊長さんだな。聞き分けが良い」

「どうせMPCだから、その動きがデフォなんじゃね?」

「この後の事考えると、どんなエロゲだよ」


 等と騒いでいる。


「とは言え副隊長さんだからなぁ。

 オイお前ら、女共を他に任せて二人で拘束して来い」


 中央の奴が、残る二人を押さえていた、向こうに付いた奴らに指示した。

 マズいっす。流石に拘束された上で二人がかりだと、隙を見て何とか三人を逃がすのも難しくなる。

 女達を渡す時に隙が出来ないかと様子を伺うけれど、奴らは拘束された女達を、別の男達の方に突き飛ばす様に押すと、私の方へと足を踏み出した。



「何してるんだ、あの馬鹿は。

 隊長も見えないし、何がどうなっているのか・・・」


 戸畑天が呟く。

 確かにそうだ。人質が居るからと言ってその安全を考えても、連れ去られれば人質の安全は保証され無い。

 更に増えればそれは、単純に被害増という可能性が増えるだけだ。


「こっちでは、狙撃とかはあまりしないのかな?」

「術や魔具を絞り込んで使う手はあるが、人質を巻き込む可能性があるし、そもそも衛士衆は、この町の自治部隊みたいなものだから装備の問題もあるから難しいが」


 オレの質問に応えた戸畑天の言葉から考えて、難しそうな事は分かった。

 となると、人質には治療を前提としたある程度の被害で押さえ、力押しで速攻で決めるしか方法が無いのか。

 昨夜、水流がやった様な治癒術があるからこその選択肢があるから、こうした飛び道具は規模が小さいところだと運用が難しいのだろう。そんな事を思っていると、副隊長とか呼ばれていた人だろう女性が、両手に持っていた小刀を投げ捨てた。

 話しを盗み聞いていると、どうも革鎧を装備している二人が、その女性を押さえるらしい。その二人だけ、装備が門のところに居る衛士衆という人達と同じ様なので、他の連中とは立場が違うのだろう。

 オレの銃に弾は六発、相手は八人。その二人だと、オレ達の位置からは遠いので衛士衆という連中に任せれば行けるだろうけれど、連携していない状況で上手く動いてくれる保証は無い。

 ならば後方のローブ姿の二人と判断した。

 革鎧の二人が、連れていた女性二人を突き飛ばす様にしたのを目にし、咄嗟に水流に声をかける。


「水流、後方の二人に目眩まし」


 返事も待たずに銃を抜く。目線は既に狙いを付けていたのでそのまま、銃の方を合わせて引き金を引いた。

 魔銃と呼ばれるこの銃は、火薬式ではないので発砲音もしないし、反動もほぼ無い。

 昨夜聞いた話しから判断すると、この銃もいわゆる魔具の一つになるのだろう。だからこそ可能な方法だ。

 引き金を引くと共に、目線は次の標的へ向け、そこに銃を合わせ、引き金を引く。その繰り返しで装填済みの六発を撃ち尽くす。

 後方に位置したローブの二人以外が肩や腕を押さえ、武器が手放されたのを確認すると同時に、手元ではリボルバー部分をずらして装填を行う。排莢の必要が無い分楽ではある。

 オレの意図がきちんと通ったのだろう。ローブの二人の目の前に狐火が上がり、身を引いたのが見えた。弾を込め直した銃をそっちに向け・・・撃つ必要が無い事を認識した。

 いつの間にか、ローブ姿の二人の元に戸畑天が走り込んでいたのだ。


 オレが言った通り、狐火は目眩まし用のものだったのだろう。直ぐに消えたけれど、その狐火に隠れる様に近づいていた戸畑天が、鞘に入ったままの長刀を振るう。一振りずつでローブ姿の二人共が倒れた。

 オレが撃った六人は、撃たれた部分を押さえて悲鳴を上げつつ、蹲っていたり、中には痛みの為か転げ回っている者も居て、無力化出来ていると感じたものの、念の為に銃は出したまま警戒を解かずにいた。

 水流は早々に拘束されていた女性達の元に向かったし、道の途中で待っていた三人も様子を見てか、オレのところへと歩き出していた。


「衛士衆、何をしてる」


 戸畑天が声を上げると、門のところで呆然としていた連中がやっと走り出し、男達を拘束して行った。

 一通りの拘束を終え、衛士衆が男達や、拘束されていた女性達を連れて行くのを確認して、副隊長と言われていた女の人が戸畑天のところへ向かった。話しかけたので、事態の確認か何かだろう。

 ・・・あ、叩かれた。


「馬鹿かお前は。人質増やしてどうする」

「いや、でもですね、あの女達に何かあってもだし・・・」

「お前までその仲間入りして、それで人質が無事に解放でもされるのか?

 だったら治癒が効く程度で抑えられる様に速攻で事態収拾を狙うのが常道だろうが」


 うん、怒られてるな。

 近づいて行くと、その副隊長と言われていた人の姿がよりはっきりした。

 特徴的なのは髪の色で、黒っぽいグレーと白のツートンが模様の様になっていた。

 先刻の男達は猫耳と言っていた通り、その髪の中には猫耳があっただけでなく、しっかりと尻尾もあった。

 それ以外は一件人間と変わらない様に見えたので、あっちだったら明らかにコスプレだろうなと思うところだけれど、きっとこっちではそういう種族なのだろう。


 暫くお説教が続く中、オレがそんな事を考えつつ眺めていたら、水流が恐る恐るという感じで声をかけて来た。


「あの・・・主様は猫人族の方が好みなのでしょうか?」


 うん、完全な勘違いだ。

 嫌いではないけれど、別に猫耳萌えな好みも無い。


「いや、髪がすごいなと思って見てただけ」

「髪・・・ですか?」

「しっかり模様になってるから」


 色が変わってるとか、単なる色分けになってるなら、あっちにも染めてたりで居ないわけじゃ無いけれど、しっかり模様になってるのは、もし染めたのであれば相当な手間がかかりそうだ。


「あぁ、文明面には毛模様がある種族は居ないのですか」


 何か、口ぶりからほっとした印象を受けるんだが。

 てか、ああいう人が好みなのかと聞かれるなら未だ分かるけど、猫人族が好みかって、何故種族指定なんだ?

 むしろ外見的には人と変わらない水流の方が未だ好みではあるけれど、それを言うと面倒な事になりそうなので黙っておいた。


 戸畑天のお説教が終わり--十分は食らってた副隊長は涙目になっていた--、オレ達は門の中、町へと案内された。



 門をくぐる少し前から見え始めていた町は凄かった。まるでどこかの江戸村とか、映画のセットとかみたい。

 前に行った時に見た京都の、古い建物と新しい建物が混在してる感じじゃ無くて、統一された感じ。

 よく見ると古い建物と新しい建物もあったし、五、六階くらいあるだろうなっていう高層建築もあったけど、町並みが統一されているからか、不思議と落ち着く。


「今野、キョロキョロしてると置いて行かれるぞ」


 物珍しくてあっちこっちに目を向けていたら、悠樹君からそう言われて、慌ててみんなのところに走って行く。

 そこは町のほぼ中心にある大きな十字路に建っていた、これぞ旅館って感じのする大きめの建物で、実際に宿らしい。

 何か高級そうと思ったのだけど、自分の暮らしている所からはあまり離れる人が居ないこっちでは、この町規模だと、宿が一軒あれば未だ良い方らしい。

 何でも戸畑さんが、この町に来てからの半月程、ここを定宿にしていたみたい。

 わたしたちは未だこっちの事とか分からないので、戸畑さんが部屋を取る手続きをしてくれた。部屋割りは単純に男部屋と女部屋の二つなんだけど、イメージしていた和風の宿と違って、どっちの部屋も入ると居間があって、寝間と呼ばれる寝室が繋がってた。

 男部屋の方が人数が多いから居間も広いし寝間も多いけど、正直、居間で寝れば良いんじゃないの? と思うくらい贅沢な感じ。

 部屋代高そうだな~と思ったけど、聞いたら食事無し--こっちでは宿で食事が出ないのは普通らしい--で一日五銭だから決して高く無いんだとか。


 何でもこっちでは世界的に通貨基準が統一されていて、一番下が鉄貨。これは一枚で出店で串焼き一本とか買える金額らしいから二百円とかくらいの感じかな?

 で、鉄貨十枚で黄銅貨、黄銅貨五枚で青銅貨、青銅貨二枚で白銅貨、白銅貨十枚で銀貨、銀貨五十枚で金貨になって、金貨二枚で白金貨になる。

 これが日之本だと鉄貨が一厘硬貨、黄銅貨が十厘硬貨、青銅貨が半銭硬貨、白銅貨が一銭硬貨、銀貨が十銭硬貨、金貨が五十銭硬貨、白金貨が一円という単位になるらしい。

 銀貨一枚有ると、贅沢しなければ四人家族が二ヶ月余裕で暮らせるらしいから、普通に暮らしてると銀貨すらほとんど目にしないんだって。

貨幣毎の価値が不揃いなのは、素材価値が理由です。均等に桁数が上がるには素材が厳しいという罠。

素材で硬貨価値が直ぐに分かるのは利点かと考えての処置ですね。

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