表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デュアル・クロニクル  作者: 不破 一色
幕間 其の1
10/31

 0.5-2

ここのところ、ちょっとブランクです。

当面は継続に問題無さそうですが、状況によっては週2投稿が難しくなるかも?

頑張れるだけ、やってみる予定ですがw

 武器は既にみんなが取り出していたから、よくよく考えれば不思議だとは思うけれど、それでも有る事だけは分かっていた。

 驚いたのは、ゲーム時のオレ達が持っていた装備や各種アイテムも全て、鞄の中に入っていた事だった。

 中にはHPやMP回復薬もあったけれど、現実ではゴミアイテムだった。

 実際には影像体が動いていたのだろうという推測が裏付けられたかも知れないそれらアイテムは、要はバッテリーの様なものだったのだ。

 HP回復薬は影像体の自己修復を補助する構成物質だったし、MP回復薬は影像体を動かす為のエネルギーという、影像体を使わなければ使い道が無いものばかりだったので、全部後で売り払う事にした。

 

 毒や麻痺と言った状態異常解除薬は、そういう機能を持った魔具だったので使い道はあるらしいけれど、それならば状態異常を減退する効果を付与した服でも着れば良いし、それ以前に防御をしっかりしていればそうそう状態異常を受けないと言われてしまう。

 ゲームでそんな簡単に対策出来てしまえば面白味が減るけれど、現実はそんな事を言っていられないという差なのだろう。

 ゲーム要素としての部分もあるのだろうけれど、影像体という非生物用向けアイテムも多いので、武器どころか、持ち物を一度全て整理する必要がありそうだった。

 戸畑天には、一度全部売り払ってから買い直した方が早そうだと言われてしまった。

 

 こうした部分を見ても、オレ達がこっちに流されたのはデュアル・クロニクルというゲームが大きく関係している事は間違い無い。

 では何故、ゲームにそんな罠--巻き込まれたオレ達からすれば、罠としか言いようが無い--が仕込まれていたのかが一番の問題になるわけだ。

 ありふれたパターンとしての勇者召還という感じでも無いし、そもそもこっちの人達に対してオレ達あっちの人間が優れているという事も無さそうだ。

 罠を仕掛けて多数の人を引き込む理由が、そもそも分からないのだ。


 ともあれ、仲間達はこれからゲームをしようという状態だったので、当然室内着だったし、靴さえ履いていなかったのだから、飛ばされたこの状況で言えば、使える使えない以前に、装備やアイテムが有ったのは救いと言えるのかも知れない。

 オレだけは、こっちに流される可能性も想定してはいた為、かなりの装備を持って来てはいたのだけれど、流石にみんなの服までは気が回らなかったし、身に付けていたわけではなくて、背負い部分に腕を通していただけのリュックも一緒に来られる保証も無かったから、色々と助かったのは事実だ。

 けれど、手にしていたコントローラや、手を乗せていたであろうキーボード等々もこっちに流されて来ていないのは不思議だった。

 こういう部分まで意図されていたのだとすれば、こっちに流れてくる者へのそれなりの配慮があったのかも知れない。



 とりあえず、今野と川瀬辰弥は装備品を取り出して、室内着から着替える事になった。

 ここで早速、戸畑天の用意したテントが役に立ったのだけれど、先刻の小鬼の様に何かに突然襲われる可能性もある事が気になっていたのか、それまで会話にも参加していなかった荻野玄太が真っ先にテントに飛び込み、防具まできっちり着込んだその素早い動きには、みんなびっくりしてしまった。

 恐怖心故と言われればそれまでだけれど、危機意識が強く出ている要素は、決して悪い状態では無いだろう。

 もっとも、小鬼に一番やられた荻野玄太の傷自体は、水流に言わせると藪に飛び込んで素肌の部分に負う程度だったという事だったので、自分達の体にもゲームキャラクターの数値が影響しているのかも知れない。

 川瀬辰弥も、目という弱い部分でなければ被害はそれ程でもなかったらしいし、実際目の回りに一緒に受けた傷は、水流の治療で傷跡さえ残っていない。

 何でも、よほど古い時代や、出来の悪い装備でなければ、術式によって装着者の全身に効果が及ぶというのが普通らしい。

 素肌や目に傷を負ったのは、何の効力もないあっちの室内着だったからというのが残念なところだ。



 ここから一番近い町までは歩いて二時間程かかるとの事だった。

 道が、車などが通れそうもない感じだったので、ある程度は歩きになる事を予想していたものの、街まで歩くというのは予想していなかった。

 聞けば、こっちではそもそも乗り物があまり無いらしい。

 そもそも人間より移動能力を持っている種族も居るし、中には飛行能力を持つ種族さえ居る。また、生活環境が色々と違うので基本的に種族同士が固まって生活している事もあり、長距離の移動手段があまり必要とされていないのだそうだ。

 加えて言えば、例えば農作物では品種改良等で全国的に同じ程度の水準を確保する事よりも、土地土地で変化がある多様性や、地域の特色こそがこっちでは重視されるのは、種族事の差異も含めて考えてみれば当然の結果となるだろう。

 とは言っても完全に物流等が無いわけでは無いし、その地域外で収穫される作物等に、全ての種族が関心を持っていないわけでも無いと言う。

 広域に商いを行う者も居るらしいけれど、それこそ地域毎に特産が異なれば、その品種だけでも相当な数となる反面、一つ一つの品種は数が少なくなる。結果として、商いを行う者は決して多くは無いそうだ。

 種族的な差異で、元々自分達の地域で賄える分を作り育て、余剰分が外に出るというのがこっちでの基本であり、それは農作物に限らず、使う道具や武具でも同じだ。

 結果として、長距離移動はこっちではあまり必要としない事になるわけだ。


 勿論緊急性が必要な場合もあるので、移動や輸送の手段が全く無いわけではなく、多種族で構成された与力隊よりきたいを始めとした、いわゆる国の機関が使う物や、一部の大種族、ごく少数の広域商人が空舟そらふねというものを持っているらしい。

 これは文字通り空を飛ぶ舟という事で、ファンタジー的な要素を感じたのだけれど、聞くと空間制御系統の能力を持つ者が動かせる様に式を組み込んだだけの、悪く言えば大きな舟形の魔道具だそうだ。舟の形をしているのは単純に、大きさの為に置き場に困る為、水上を主な置き場としているかららしい。

 国や大種族が所有する空舟は、基本的には非常時に多くの人員や物品を輸送する為のものでしか無く、その数は少ない。

 商人が所有する小型の空舟を含めた、国内全ての総数は百隻には届かないだろうという事だった。


 結局のところ、こっちでは種族的な問題も有って環境等への影響は可能な限り抑える事を当然としている。

 それでは道を必要以上に整備する事も無いし、公共交通を充実させる事も無いのだ。

 それでも少ないながら公共交通はあるらしいけれど、それは大きな街や都を結んだり、そうした大きな街や都の周辺だけの様で、ほとんどの移動は自分の力で行う事が基本らしい。

 結局のところ、オレ達が暮らして来たあっち側である文明面では、利便性が追求されて来たけれど、こっち側である文化面では、利便性より永続性の方が追求されて来た、求められる前提の差なのだろう。


 ちなみに、自動車や自転車等々の知識は、デュアル・クロニクルのユーザーを除いてもこっち側に流されて来た人達が少数は居たので、こっち側でも理解されているし、技術的にも作る事は可能らしい。

 ただ、作るとなればその分の資源を必要とする事から、人間族を含めて必要性を感じていないらしい。

 どちらにしろ、街までの歩きは避けられない事が確実となったわけだ。



 防具まできっちり着替えた荻野玄太がテントから出て来なかったので、これらの話しを聞いた後、川瀬辰弥は付き添う為にテントに入って行った。

 一気にあれこれを聞いたところで、理解し切れないだろうという事もあった。

 では休むかという流れになりそうだったのだけれど、結局話しは続く事になったのは、オレと水流との関係に関して、五十鈴がかなり興味を持ってしまった為だった。


 今日のゲームでの約束は夜9時だった。

 これは仲間達の生活を考えても、いつもと比べて少し早い集合時間だったのは、当然学校によって若干違うけれど夏休みが始まる時期だった為、全体的に余裕があったからだ。


 とは言えオレは遊び目的で始めたわけでは無かったから、最近の日課となった放課後の検証結果報告の為に、研究練に向かった。

 うちの学院はかなり特殊な状態で、まともな学校としても見なされていない--法律等に適合しないとか理由があるらしい--のだけれど、その特殊性は校内の様子にも表れていて、どこの施設に入るにもIDカードでの認証が必要になっているし、IDによっては正規の学生どころか教職員でさえも入れない施設なんてざらにある。

 オレは家の仕事の都合上か、全てに有効なIDカードを学生証として受け取っているので問題無いけれど、向かう先の研究第一練は学院内でも立ち入れる人が三%に満たないと言われている。

 研究第一練のぬしの性格を考えると、むしろ出入りを禁止して隔離した方が何かと良さそうな気もするのだけれど、利益性やら何やらで、結構面会申請が多いらしい。

 今野が受講していた講座の講師同様に、色々トンデモでアレ的過ぎて、オレの中では常時ダントツ争いな相手なのだ。

 溜息を零しつつ認証を通して中に入った途端、どこかに組み込まれているのであろうスピーカーから声がかけられた。


「失礼ナ事、考エテル?」


 質問の様な言い方だけれど、疑いなんか持っていない事は、もう分かっている。

 マイクとかも仕込んであるのだろうから、ここで返事をしても伝わるだろうとは思うけれど、そもそも返事自体に意味が無い事も分かってる。疲れるだけなので無視して廊下を進む。


「アレレ、聞コエテナイ?」


 更に声をかけてくる。

 何度か声をかけて来たけれど意味が無いから相手にしないし、反応もしないで進む。

 廊下の一番奥にある階下に向かう階段を下り、突き当たりの扉をノックもせず開くと、そこにこの棟の主が居た。


「返事デキナイ人?」


 首を傾けて、上目遣い気味にオレを見るその姿は、関わりを持った事がなく、その性格を知らなければ可憐に映るだろう。

 研究者らしく白衣でも着ていれば未だ格好も付くのかも知れないけれど、まるでどこかのカフェか何かでウェイトレスが着ていそうな、何かヒラヒラした服に、合わせたかの様な白いエプロンには縁がリボンで飾られている。確かツインテイルとか言う、頭の左右で結んだピンクっぽい茶髪がわざとらしく見えない整った顔は若いけれど、確か見た目だけではなく、実際の年齢も十四才と、オレよりも下だったはずだ。

 しかしその年齢で既に、幾つもの特許を持った世界的に有名な科学者であり、分析のエキスパートらしく、色々と引く手数多の状態だと聞く。奇才と言われればそうなのかも知れないし、実際能力的には優れているのだろうけれど、オレにとっては面倒な性格破綻者でしかないのだ。

 自分がそうやってもてはやされ、引く手数多な状態が性格的に合わないからと、この学院に逃げてきたとか言う話しだったので、不本意ながらオレは気に入られているのかも知れないけれど、確認する気も起きないし、確認してもしそうだったと知ったら・・・精神的にダメージを受けそうなので聞いてもいない。

 何しろこの人は、他人が自分に向ける感情や気持ちを逆撫でする能力にも長けているのだ。

 自分に向けられる好意的な目には、利益という裏があるから、逆撫でするには面白すぎるという理由で磨いた能力だというのだからもう、頭が良い性格破綻者は本当にタチが悪過ぎる。


「失礼ナ事、考エテル?」

鬼束帆乃佳きとうほのか研究主任。今日の報告書です」


 絶対に話しには乗らない様に気を付けて、用件のみを早々に済まそうとする。


「楓馬、ノリ悪イ・・・」


 顔を伏せ、肩を落とすその姿は、見た目だけで言えば傷ついた美少女だろう。

 でも騙されない。何しろ毎回の事なのだから、騙されてやる理由も無い。


「良いから、分析をお願いします」

「ム~」


 頬を膨らませながらも、渡したデータカードをリーダーに挿し、流れる様にキーボードに指を走らせる。

 画面に文字や数字が流れて行く。

 1分も経たずに画面を走る文字や数字は止まり、それを見ながら渡したデータカードを抜いて、オレに返して来る。


「多分ソロソロ安全圏限界。コレ以上は危険カモ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ