0.三月十二日(月) 晴(1)
・・・3月12日。世の中に「普通」なるものが存在しないということが分かった日である。
最寄駅から神裡村近くの駅「御常」まで電車に揺られ、駅に降り立つ。
・・・見渡す限りの田んぼ。と畑。のどかで良いところそうだ。
紺青高校は新しい高校らしく、ネットには詳細な位置は載っていなかったが、どうやら山の上にあるらしい。
詳しいところはそこまでわからなかったので、あとは現地の人に聞くしかない。
とりあえず駅で自転車を借りて郵便局を目指す。又は村役場で場所を聞く。流石に立札くらいはあるだろう。
・・・・・・情けなくなるほど行き当たりばったりかつテキトーでいい加減だが、始めないことには始まらない。
・・・・・・ちなみに駅員に聞いてみると、
「う~ん・・・わかんないや」と苦笑しながら返された。
妙に若い駅員だった。
ネットで探した地図を片手に郵便局を目指す。
駅から徒歩10分。
ならば自転車だったら5分だろう。
* * * * * *
・・・・・・郵便局に着いた・・・・・・のは良いのだが、何故か局員がかなりのコワモテのお兄さん方。
ガタイが頑丈そう。
超恐え。
そしてなんだか若い!
と、ビビる俺。
だが此処で聞かなきゃ俺は中卒資格しかないぞ!!
「あの~」
局員が此方を見る。眼だけで人が殺せますよお兄さん。
「なんじゃ?若えもんが」
・・・・・・お兄さんも十分若いじゃないですか。
「紺青高校ってご存知でしょうか・・・?」
周りの局員も集まってくる。
何だかリンチ一歩手前みたいな光景だ。・・・・・・助けを求めようにも、こんな時に限って客は全然いない。・・・運ねえな、俺。
「なんかあったか?」
「紺青高校に行きてえってよ」
「・・・前にそう言った奴は鶴舞池に沈んでるぜ」
「15分ほど前にな」
若い局員さんたちの話が超恐い。なんだ、鶴舞池って。
・・・怖い。怖すぎる。
・・・・・・けど。
「俺は紺青高校を知っているかどうかは聞きましたが、行きたいとは言っていないので沈むことはないようですね」
案外冷静な声が出た。・・・・・・・・・喧嘩売ってそうな台詞だけど。
最初に話しかけた局員が笑う。
「なかなか面白いことを言う奴じゃないか。・・・お前、ちょっとサイコロ振ってみろよ。・・・・・・その数字の和が俺より大きかったら場所を教えてやるよ」
机の引き出しからサイコロを2つ取り出す。・・・・・・なんでサイコロ?
「ちなみに、数字が小さかった場合は鶴舞池な」
隣に立っていた局員が笑う。・・・・・・・・・そう来ると思ってました。
最初の局員がサイコロ2つを同時に投げる。
・・・成り行きで大変なことになってんぞ、俺。
「賽は投げられた・・・ってな」
なかなか格好よく笑い、局員が出した数字は――――――――――――――――――――
5と6。
「11・・・・・・・・・・・・!!」
最悪だ。俺が勝つには6と6――――――――――12を出さなければならないのか?
確率36分の1じゃないか。
「お前の番だぜ」
サイコロを渡される。・・・目はちゃんと1から6まであるようだ。
手の中で十分に振り、投げる。
出た目は――――――――――
6・・・・・・と・・・1?に変わりかけたサイコロが――――――――――
机から落ちる。
「何っ!?」
近くにいた局員が慌て、床を見ると・・・もう一つのサイコロの目は6に変わっていた。
・・・・・・何だかラッキー。と思うと同時に、これで失敗していたら、生命の危険が迫っていたのだと少しでなくかなり背筋が寒くなった。
最初に話しかけた局員はため息を吐いて、肩を竦めた。
「ち、しゃあねえな・・・・・・だが約束は約束だ。紺青高校を教えてやるよ・・・・・・」
「ありがとうございます!」
別の局員が近辺のいやに正確な地図を取り出した。
「紺青高校はここから北東に1㎞ほど行ったところにある山の頂上にある。山の麓には寺が建っているから分かり易いだろう。中腹の鳥居のある方の分かれ道を進んだ先に有るはずだ」
「・・・・・・親切にありがとうございました」
礼を言って郵便局を後にし、俺は再び自転車に跨った。




