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アゲイン×2 《クロスツー》  作者: 紺堂 悦文
第五章 魔法の言葉
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狐のおんなのこ

 



「こんにちわー」


 楽園の中でも特に寂れた一角、一軒の家の中に向かい、迅八は声をかけた。


「おいジン。ここか?」

「ありゃ……いないのかな?」


 迅八は、右手に下げた袋を見る。ニコルとロココへのお土産として買ってきたもの。今度は一緒に食べようと思って買ってきたものだ。


「んー、どうしよっかな……」

「おい。こんな場所になにをしに?」

「いや、友達の家だよ。……うーん、どうしよ。勝手に中に入ったらまずいよな」


 迅八が、どうしようかと考えていると、日の光が差し込む家の、光が途切れた闇の奥から声がした。


「……だれ? どなたですか? ……ごめんなさい。今は仕事をしていないの」

「あ、おばさん。俺、ジンだよ。ニコいる?」

「あら、あらあら……」


 闇の中から一人の狐人が出てくる。暗がりに浮かぶ美貌。蛍の光のような女。


「ジン様……。ごめんなさいね。ニコは外に出ていて」

「あ、そうなの? お土産持ってきたのにな」

「よかったら中で待っててくれればニコも喜ぶわ。ろくなおもてなしは出来ないのだけれど……」

「本当に? ありがとうおばさん。……けどさ、ジン様ってのやめてよ。落ち着かないから」

「あら、あらあら……。ごめんなさい」


 ロココは迅八の隣に立っているアゼルを見た。


「ジンさん。……そちらの方は?」

「ん? ……ああ、アゼルっていうんだ。俺の友達だよ。一緒に入れてもらってもいいかな?」

「……アゼル?」

「うん、アゼル。『ロックボトムの弟』とか言われて、」


 ばさっ。突然、ロココは倒れこむようにその場にくずおれた。


「ああ……! あの子が、あの子が何かっ。どうか、どうか私の命で」

「だ、だから違うって! アゼル、お前からも言えよ」

「……ふう」


 アゼルスタン(・・・・・・)はため息を一つ。


「害を働きに来た訳ではない。……アゼルスタンだ。それと、俺はこいつの友人ではない。知り合いだ」

「お前もクロウもなんなの? そのこだわりに意味あんの? 友達でいいじゃん」


 その言葉を聞きロココが顔をあげる。


「アゼルスタン、さまですか?」

「……アゼルスタンでいい。突然の訪問を許してくれ。さあ、立って。……美しい人がそんな格好をしてるのは似合わない」


 ——すっ。アゼルがその手をロココに差し出すと、蛍の光のような女の白い肌が、ほんのりと朱く染まった。


「は、はい。アゼルスタンさんも、どうかお入り下さい」

「……失礼する」


 中に入るロココと、その後に続くアゼル。なぜか迅八は続かない。

 それに気付いたアゼルは迅八に声をかけた。


「……なにしてるんだよ。入らないのか?」

「いや、なんか、う〜ん」

「なんだよ?」

「……やっぱ、お前可愛いよな。この場合はカッコいいだけど」

「なっ!?」


 アゼルはロココ達の家に半分入り込んでいる。(ひさし)の陰に隠されて、その顔色は見えないが、迅八にはその声がうわずったように聞こえた。


「ま、いいや。お邪魔しまーす」


 迅八はアゼルの横を通り、その家の中に入った。薄暗い家の中では、ロココが(かまど)に火をおこそうとしていた。


「今、お茶を沸かしますから」

「ありがとうおばさん。けど、あんま気ぃ遣わないでいいよ。横になってなくて大丈夫かい?」

「そんなに体調が悪そうに見えますか? 今日は気分が良いんですが」


 クロウから迅八が聞いた、死の匂い(・・・・)。ロココはその事を知らない。


「いや、そうじゃないんだけど……。今まで寝てたんでしょ? だから、体調悪いのかなって」

「そうですね。……だいぶ前からですが。けど、今日は気分が良いんです」


 するとアゼルが立ち上がり、またロココに手を差し出した。


「俺がやろう。あなたは座っているといい」

「あ……」


 暗闇の中、部屋に入り込んでくるほのかな日の光に照らされて、ロココの頬に紅が差す。

アゼルは手慣れた様子で火をおこすと、ロココに尋ねながらお茶を準備した。


「…さあ出来た。ジン、飲めよ。 まあ、俺が出すのもおかしいけどロココさんのもてなしだ。……なんだ? おかしな顔をして」

「いや……なんか、なんか。おい、俺は負けてねえからな」

「……? なにを言ってるんだ本当に。よくわからないけど、喧嘩売ってるのか? 俺に勝てるとでも思ってるのか?」

「いえ、喧嘩は売ってませんけど」

「ほ、ほらほら。お二人とも召し上がれ。……あ、ジンさん、昨日と同じで綺麗なお召し物で」

「……いいよおばさん。気ぃ遣わなくて」

「……?」


 よくわからない顔をして、アゼルも腰を下ろしてお茶に手をつけた。



 ……三人で会話をしながら、爽やかな香りのお茶を飲む。迅八が『お土産』の事を思い出し、それをロココに渡そうとした時、玄関とも呼べない入り口から元気な声がした。


「ただいまーっ。……あれ? なんかいい匂いする。……あっ。にいちゃん!」

「おー、ニコ。おかえりー……って、おわっッ!!」


 自分の方に突進してくるニコルに迅八が身構える。しかし、ニコルは迅八の胸に飛び込もうとして、その手前で足を止めた。


「……兄ちゃん。この人だれ?」


 アゼルの事を言っているのだろう。

 アゼルは完璧な、よそさま向けの顔で、柔らかく微笑んだ。


「……やあ。こんにちは」

「ん? ああ、こいつは俺の友達だよ。最初、俺に聞いてきただろ? こいつが『ロックボトムの弟』だよ」

「え? だってこのひと女じゃん。どこが弟なの?」


 その言葉に反応したのはアゼルだった。


「……よく分かるな。こんなに短時間で見破られるのは珍しいよ」

「だって匂いでわかるもん。ねえ母さん」

「え、おばさんわかってたの? けどなんか、顔を赤くしてなかった?」


 迅八がロココの方を見ると、ロココは頬を染めて静かに頭を下げた。


「いえ、それは、なんというか……。こんなに凛々しい女の子が、……説明しずらいです。アゼルさんごめんなさい。隠してらっしゃるようでしたので」


 ロココの的を射ない言葉に迅八は首を傾げた。アゼルがロココに向けて言う。


「……別に構いはしないよ。今となっては習慣みたいなものだ。だからといって、言いふらされたくはないが」


 その言葉で、迅八の中で気になっていた疑問が再び湧き出た。


(こいつ、なんで男の格好をしてんだ?)



 今がそれを聞くいい機会なのかもしれない。しかし、迅八が口を開く前に、ニコルが他の疑問を口にした。


「……ねえねえ。姉ちゃんはさ、兄ちゃんの恋人なの?」

「ぶっっ。……な、なに言ってんだよニコ。そんな訳ないじゃん!! ……ねえ、アゼルさん?」

「俺に確かめるまでもない。当たり前だ」

「……いや、まあそりゃそうなんだけど」

「そっかあ……。んじゃ、姉ちゃんもゆっくりしてってよ!!」


 そう言って、ニコルは満面の笑みで迅八に抱きついた。




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・




「おーいしーい!!」

「あらあら……良かったわね」


 小さなテーブルを四人で囲み、迅八達はコロッケに舌鼓(したつづみ)を打っていた。一人を除いて。


「アゼル、なにやってんだよ。食えよ」

「……フン。お前、さっき俺には食わせないって言ってたじゃないか」

「それは違う話でしょって。……もうお土産は開いてんだから食っていいんだよ」

「うるさいな。別に食いたくない」


幸せそうにコロッケを食べていたニコルは、アゼルを見て言った。


「ねえねえ姉ちゃん。……凄い綺麗な目だね。近くで見てもいい?」

「……別に、いいけど」

「えへへ……」


 ニコルが小さな体を動かして、アゼルの膝の上に乗る。それを見たロココは娘を小さく(とが)めた。


「こら、ニコっ」

「構わないよ」

「うわあ……。宝石みたいだ」


 深い深い、緑色の目。

 薄暗い部屋の中で、その瞳は僅かな光を反射する。——緑色の瞳の、鏡のような虹彩。ニコルには、そこに映る自分の顔が、いつもよりも輝いているように見えた。


「……こんなに綺麗なひと、いるんだね」

「顔だけはいいんだよ。顔だけは」


 本当は、その心にも何度も助けられている。迅八はわかっていたが、憎まれ口を叩いた。


「……顔だって綺麗じゃない」


 アゼルの言葉。

 その意味がなんなのか、迅八は一瞬だけ考えた。



「ねえ姉ちゃん。その布、取ってみてもいい?」

「それは、」

「……ニコ。こっち来いよ。そんな奴と遊んでたって面白くねえだろ」

「そんな奴? 俺の聞き間違えか? ……お前、本当に喧嘩売ってるのか?」

「ま、まさか。違う、違うよ!」


 二人のやり取りを見てニコルが笑う。そして、手に持っていたコロッケを二つに割った。


「はい姉ちゃん。半分こしよ」

「……ああ、そういう事か。ありがとうニコル」


 アゼルがそう言うと、ストールが、ばかっと割れた。


「「「なッッッッ!?」」」


「むぐ、むぐ……ありがとうニコル。美味しかったよ」

「おま、おまっ……。なんだよ今の。ビックリすんだろ!!」

「お前はいつも見てるだろ」

「いや、こんなに唐突なのは見てないよ。手も使ってないじゃん!!」

「俺が何年これを巻いてると思ってるんだ。そのくらい出来るさ」

「何年巻いてたらそんな事が出来るんだよ!!」


 その言葉を聞いたアゼルの目が薄暗い部屋をさまよい、やがてその目はニコルの顔の上で止まる。

 赤毛の少女はニコルの首筋を撫でながら言った。


「……何年だろうな」




 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 ニコルはすっかりアゼルに懐いたようで、その様子を見ていた迅八は苦笑した。


「はは。ま、いいけどさ」

「あの子があんなに楽しそうに……」


 ロココの静かな声には喜びが乗せられている。それは、純粋な母親としての愛だった。

 その言葉に、自分の過去を重ねた迅八が俯きかけたところで、ニコルの頭を撫でていたアゼルが声をあげた。


「……ん? ニコル、どうしたんだこれは? 擦りむいてないか?」

「あ」


 アゼルがニコルの髪の毛をかきあげると、そこには薄っすらと血が滲んでいた。それを見つけたロココが言う。


「……ニコ。なにがあったの?」

「なにもないよっ。転んだだけだから」

「あなた、危ない事をしてるんじゃ……」

「してないよ!!」

「……こっちにいらっしゃい」


 アゼルの膝の上から離れ、ニコルはロココの元へいく。そばに来た娘の手を掴み、母親は奥へと消えた。



 ——あなた、危ない事を。仕事だったら母さんが

 ——本当に、本当に大丈夫だって!!



 奥から聞こえてくる声に、アゼルが顔をしかめた。


「……悪い事を言ったかもしれない」

「ん……」

「おいジン。そろそろ帰ろう。長居しちゃ悪いよ」

「ん……俺たちが聞いていい話じゃないな。……おばさん、俺たち帰るから。また来るよ」


 迅八が奥に向かい声をかけると、ロココとニコルが部屋に戻ってくる。


「ごめんなさいね。また来てちょうだい。この子も喜ぶわ」

「兄ちゃん……」


 きゅっと。迅八の腰にしがみつく。

 そして、顔をあげるとニコルは無理やり笑みを作った。


「……また来てね。今度は町を案内するから!」

「ああ。お土産も買ってくるよ」

「ジン。行こう」


 迅八とアゼルは入り口に行き、一度振り返ってから外に出た。


「……兄ちゃんまたね。絶対だよっ。姉ちゃんも!」

「わかってるって。またなっ」

「ん……ああ。また」


 以前、迅八が見送られた時とは違い、ニコルの姿はすぐに家の中に消えた。






 ————————————————






「……ふぅ。わざとじゃなかったし、悪い事だとは思わなかったんだけど。なあジン、ニコルは怒られるかな?」

「まあ……、色々あるだろうから。けど、別にお前は悪い事を言ってないよ」


 迅八の頭の中では色々な事が渦巻いていた。

 ニコルの仕事。

 そして、母親の仕事(・・)

 おそらくそれは違うものなのだろう。


 ニコルの仕事は迅八にもなんとなく想像がつく。それは時には危険を伴うのだろうし、やめさせた方がいいかもしれない。

 おそらくそれは人に褒められる仕事ではない。しかし迅八は、道義的な意味でそれをやめさせたいと思った訳ではなかった。


(……あんな小さな女の子が、他にどうやって金を稼げばいいんだ)



 しかし、迅八はこうも思うのだ。

 誰もが、自分のような(・・・・・・)人間ではない。もしも、まずい人間を的にかけて、失敗したとしたら。


 そして、母親の仕事。

 それも迅八には想像がつく。

 厳密には違うかもしれないが、迅八の母親も、迅八や静の為に働いていたからだ。


 それらの事が渦巻く頭の中で、奇妙な単語が迅八の頭の中にあった。

 それは、ロココがニコルの事を奥に連れていってから聞こえた。

 闇の中、囁くような声色で聞こえたそれは、その場には場違いに聞こえた言葉だった。



「魔法の言葉……」

「……なに?」

「いや、さっきおばさんが奥で言ってなかった? なんか、魔法の言葉がどうたら」



 その言葉を聞いたアゼルの顔が、ハッキリと歪んだ。


「え? なに? 知ってるの?」

「……ああ。昔、クーロンに聞いた事がある。亜人の女の間に伝わるおまじないさ」

「なんなのそれ?」

「……とっておきの言葉だ。絶体絶命の時に効果を発揮するんだ」

「すげえな。魔術なの? 教えてよ」

「……嫌だ」

「え」



 アゼルの顔に憎悪が浮かぶ。

 それは迅八に向けられたものではないし、迅八自身もそれは理解していたが、そのあまりの表情に自分が失言したのかと思った。



「ご、ごめん。……けど、俺の知り合いの人たちからは、そんな言葉を聞いた事がなかったから」


「ある状況じゃないと意味ないのさ。……それと、この言葉を知ってるのは亜人だけじゃない。誰にでも聞こうとするんじゃないぞ。お前に悪気がないのはわかるけど、『いいもの』じゃないんだ。……この話は終わりにしよう。クーロンにも聞くなよ」


「う、うん。あとさ、もう一個、聞きたい事があるんだ」


「……なんだ?」


「アゼル……あのさ、さっきのおばさん。ロココさんは、」


「ん? あの人がどうした」


「クロウが言うには、あの……死の匂いがするって。病気なんだって。魔術は効かないんだろ? それでさ、あの、お前の力……」


「ジン」



 いつの間にか、ジンと。

アゼルはそう呼ぶようになっていた。しかし、アゼルの声色はいつもよりも冷え込んでいた。



「……さっきも言った。お前に悪気がないのは分かってる。だけど、その話もやめてくれ」


「けど、ロココさんが」


条件がある(・・・・・)。セリアの時も言ったはずだ。あの力は、使うのに条件があるんだ。……ジン。触れられたくない話は誰にでもあるよ。俺たちはお前とシズに無理強いした事が一度でもあるか? ジークエンド達はお前の過去を聞いたらしいが、それは無理矢理だったのか?」


 迅八は、黙って首を振った。


「お前にもあるしシズにだってあるだろ? 俺にだってあるんだ。……この話は終わりにしてくれ」


 アゼルはそれだけ言うと、迅八を置いて歩き出した。





 

 まだ日が落ちるには時間がある。

 迅八は、本当ならアゼルを連れて、ニコルと三人で、町を歩こうと思っていた。


 少しずつアゼルの背中が遠くなってゆく。予定では楽しい外出のはずだった。

 しかし、先ほどまで隣を歩いていた少女は、いつの間にかとても小さくなり、やがて曲がり角に消えた。


「……あーー」


 出そうになるため息を抑えこもうとして、迅八は抑える必要がないのに気付いた。周りには誰もいない。


「……はあああぁぁ」


 迅八はクロウに言われた。

 これは忠告(・・)だと。

 収穫祭の洞窟でも言われた、もうなにも出来る事はないという意味の言葉。

 フィレットを助けた時とは違う。力で解決できる事ではない。迅八に出来る事はなにもなかった。


 ニコルの仕事。

 やめさせたとしても、迅八になにが出来るのか。

 ニコルの母親の病気。

 それこそ迅八には何も出来ない。迅八は普通の高校生だ。ロココに元気になってもらいたいと思うが、思う事しか出来ない。


「……どうすんだよコレ」


 深入りするなとクロウは言った。

 この結果が分かっていたからだ。


「……けど、ほっとけないよ」


 日本(らくえん)育ちの少年。

 黒髪の転生者。

 こちらの世界の『楽園』は、元の世界とは訳が違った。立ち尽くす少年の髪を風が撫でる。

 今はその髪はざわめくことなく、ただただ、風に揺れて流れていた。






 ————————————————






 迅八が頭を抱えていたその頃、千年の大悪魔もまた頭を抱えていた。



「……おおっ。まさか、まさかワシが生きているうちに、またお会い出来るとわあああッ!!」

「や、やめろジジイッ!! 誰なんだよテメエはッ!?」


 はじめは周りの通行人達に小さな輪が出来た。

しかし、豪奢なマントに身を包んだ男に平伏している老人——その老人が誰なのかに気付くと、みんな顔を青ざめさせて、同じようにクロウに平伏した。


「おおおおおおおおおぉぉ…!! 魂食さま、魂食さまあああああああ!!」

「な、なんだよ。だからテメエは誰なんだって!!」

「わたしの顔をォ、お忘れですかああっ!?」

「てめえみてえなシワクチャは知らねえよ。梅干しか!? ……足離せって!!」

「おおっ……!! やはり、その口の悪さは間違いありませぬうううう!!」


 クロウにすがりつく老人の腕は、見た目からは計り知れない膂力(ちから)で、決してクロウの足を離さない。

 平伏する人の輪はどんどん広がっていく。この場で立っている人間は、老人が召し連れていた、眼鏡をかけた女性一人だけだった。



 ——へへーー!!

 ——だれ? あれだれ?

 ——知らねえけど、いいから頭下げとけ!!

 ——あの『救国』のサジタリアが頭下げてんだぞ!!

 ——どっかの国王じゃねえのか?

 ——バカ言え。国王だったら逆に頭下げるわ!!

 ——んじゃ誰だよ。その上なんていねえだろうが



「……おおおおおッッ。魂食さまああああ!!!」

「だ、だからテメエは誰なんだって!!」



 一人だけ立っている女は、なにも語らずにクロウの事を見つめている。

 女がかけている丸いグルグル眼鏡の奥の目は、クロウからは見えなかった。




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