表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アゲイン×2 《クロスツー》  作者: 紺堂 悦文
第四章 絶対強者
70/140

絶対強者 後編

 



 コルテは、混乱した頭の中を、一言で表した。


「なんです。こりゃ」


 『五本目』が出てきた。

 と思ったらクロウが魔人の姿で現れて、詠唱省略で一撃で葬った。

 と思ったら崖が崩れて迅八達が落ちた。

 と思ったら翼を生やしてどこかに飛んでいった。


「と、思ったら。……近寄りがたい雰囲気出しやがって」


 コルテから少し離れた場所で、地面を見つめているセリア。

セリアは何を考えているのか、あるいは何も考えられないのか、形容し難い顔をしていた。聞こえない位の小さな声で、何かを呟いている。



「結局セリアになにも話さねえで逃げ出しやがった。あの悪魔が……。僕たちも気になりますね」


 千年の大悪魔。

 変化へんげを得意とするその悪魔は、多くは神獣の姿で語られる。



(あれが、本当の姿か……。『黒のマリア』なら張り合える? 冗談じゃあねえです。あんなの、人間が立ち向かえる相手じゃあねえ……!!)



 冒険者の最高——『規格外』という転生者。『黒のマリア』をコルテは見たことがないが、信じがたい噂は幾らでも転がっている。

 それらが全部本当だとしても、あの大悪魔に勝てるなどとは思えない。


 あれは、もはや魔人ならぬ、魔神だ。大魔術師のコルテをもってしても、あの悪魔の途方もない魔力に怖気おぞけだつ。

 すぐ近くで虚脱している第六位天使は、この世界でも屈指の実力者のはずだ。その力の底はコルテにも見えない。しかし、戦える気はする。

 あの悪魔にはそれすら湧かない。勝利か敗北か、そんな二択を感じさせない存在だった。……そして、あの転生者。


「なんだってんです。ジンのあれは」


 翼が生えていた。

 しかし、そんな事が可能なのかコルテは考える。


(魔術じゃない。そんな事は魔術じゃ出来ねえ。『翼の形』を作るだけなら出来る。氷の鎧を作るように。……だが、実際に飛んでみせるだと? あれは、なんだ? ……魔術じゃねえ。実際に飛べる——物理(・・)?)






「……コルテ、俺たちも出よう。ここもいつまで安全か分からない」


 アゼルが言うと、放心していたクーロンも我に返る。


「はー。色々と凄い坊やだねえ」

「凄い? ……ありゃ『おかしい』って言うんでしょうよ。今の戦いを始めから見てたらあんた達もそう言いますよ」


 黒陽こくようと呼んでいた迅八の技。コルテはあんなもの見た事ない。そもそもあの、変身とでも言うような異形は、なんだ?

 そして、花を守る為に自らの身を犠牲にしてみせた、あの精神。


「花じゃあ、ねえのか……」


 迅八が守ろうとしていたのは、その先(・・・)にあるものだ。しかし、コルテにはそれでも納得出来ない。

 (シズ)の為ならまだ分かる。しかし、イエールは言ってはなんだが、赤の他人だ。


「あの千年の大悪魔は、よくもまあ……同情しますね」

「ほら、いつまでブツブツ言ってんのさ」


 クーロンがコルテの肩を叩くと、その後ろでアゼルが口を開いた。


「……おかしな爆発音が外から聞こえた。ジークエンド達も何かに巻き込まれてるのかもしれない。シズ、おいで」


 アゼルが振り向くと、シズはセリアのそばに居た。

消沈しているセリアの手を、(いた)わるように握っていた。






 ————————————————






「なんだ、こりゃ」


 コルテがぼやいていた頃、迅八も同じ呟きを漏らしていた。草原は、その場所だけ荒野のように変わっていた。


「すげえな。なんなんだよコレ……」


至る所の地面が抉れている。

まるで、なにかが爆発したような跡。

緑の草原は、その一帯だけ激しい戦闘を繰り広げた跡がある。

地面に降り立ち、迅八はイエールの前に出た。


「イエール、何が居るか分からない。ここにいてくれよ」

「……うん」

「あん? もう居やしねえよ。デケエ魂が消えてやがるな」


 クロウは、近くに唐突に置かれていた巨石をコツコツと叩いた。


「……まさか、あいつら地竜と戦ってやがったのか? ……なかなかやるじゃねえか。ま、俺様だったら一撃でやるがな」


 迅八は、巨石を叩いている千年の大悪魔を見る。

 迅八には魔力の波動など分からないが、見ているだけで分かる。クロウの本当の姿は、強すぎる(・・・・)


「……ジンパチ、魔獣は近くにいねえ。ジークエンド達が向こうにいやがるぞ」


 迅八はそちらに向かう。傾斜した丘を登ると、少し離れた場所に四人は居た。






 そこには、ジークエンドとアマレロが、迅八たちに背中を向けて立っていた。その場にいるもう二人と、距離を置き、相対(あいたい)している。しかし、その様子がおかしい。


「ジークエンドさんっ!!」

「……ジンか? 動くな(・・・)


 振り返りもせず言うジークエンドの白いコートが、血に塗れている。その横で大剣を構えるアマレロの足元にも、血溜まりが出来ていた。

そして、ジークエンド達が見すえる先にいる二人組。その二人の異状に迅八が気付いた時、クロウが先に口を開いた。


「おい、ジンパチ。ありゃあ、誰だ?」



 ……迅八がそちらを見ると、キリエがこちらに何かを向けて立っていた。

 その手に握っている『何か』は強く注意を引いたが、それよりも、キリエの横に立っている人物が、強く迅八達の目を奪った。


寝癖のような跳ねた金髪。

スマートさのない丸眼鏡。

薄く生えた無精髭も髪と同じ金色だった。

しかし、顔立ちは整っていて、青い光を湛えた瞳がこちらを油断なく見ている。

迅八がこの世界で何度も見た、ロドやジークエンド達のような男が放つ、強い力を持つ瞳だ。


 着ている服は、なぜかどれもサイズを間違えたようにダボついているが、そのシャツには『萌え魂』と書かれていた。


「……あんな二枚目知らねえよ。誰だよあれ」

「ジンさん、動かないで欲しいッス」


 見知らぬ男に注意を引かれすぎていた迅八が、声の方に目をやる。

 キリエがこちらに向けている『何か』。それが何かを理解すると共に、疑問と混乱が迅八の頭を占めた。


「ちょ、ちょっと待てよ。ジークエンドさん、何がどうなってんの!?」

「おい、ジンパチ。ありゃなんだ? ひょっとして、武器か? ……そんなもんを、この俺様に向けてやがんのか?」


 キリエがその両手に握るもの。

 それは、元の世界で『拳銃』と呼ばれていた。


「ちょ、ちょっと待てって。トムは!? トムはどこに行ったんだよ!!」

「……ヘイ、ジャパニーズ。もう一回言うぞ。ボカぁトムじゃない」


『萌え魂』の男も懐から銃を出す。

 それは、迅八が見た事も無いような形だったが、向けられた銃口から、それが武器だと理解させられた。


「……キッドだ。商人ギルドの『先読み』キッドだ。忘れるなよ」


 キリエの両手に収まる銃が鈍く光る。

 それを一度、器用に回してからキリエが笑う。

 二人が持つ『拳銃』は、その四つの銃口で迅八達を正確に捉えた。


 迅八の頭の中は混乱と疑問、そして、その間を大きな空白が占めていた。


「先読み? 拳銃? ……なんだよそれ。お前、なんで痩せてんの!?」

「『先読み』するとこうなる。……いいかジン、動くな。そっちの千年の大悪魔もだ。動いたら宣戦布告と見なすぞ」

「宣戦布告と見なす、だあ? ……てめえ、誰様に向かってそんな口をききやがる……」


 クロウが一歩足を踏み出そうとしたその瞬間——踏み出した後ではない。

 足を動かす前に(・・・・・・・)、銃口が火を噴いた。


「な……!?」


 クロウの足元から薄く煙があがる。

 それを見て、『キッド』が口を開いた。


「動くな。言ったはずだぞ。次は当てる」


 血管から音が出そうな程に、クロウの顔色が変わってゆく。その敵意を向けられた訳でもないジークエンドとアマレロが息を呑んだ。


魔人形態(この姿)になるとな。いつもよりも、ちいっとだけ残酷な気持ちになれるぜ……!!」

「……待てクロウ。動くな」


 それはジークエンドの言葉だった。アマレロも微動だにせず目の前の転生者二人を睨みつけている。すると、キリエが喋り出した。


「さっき信号上げたんで、ウチらの馬車がそろそろこっちに来るッス。……いいッスか、ジンさんと千年の大悪魔。あたしらはここから消えたい。こんなの予定になかった。だから帰るッス」

「消えたいだあ? じゃあ消してやろう」


 ——パンッ

キッドの拳銃から音が響く。

腰をかがめ飛びかかろうとした魔人の体が、そのまま膝から崩れ落ちた。

それに疑問を抱く前に、迅八の膝を結魂による激痛が襲う。


「っが!! いってえええッッ!?」

「だから、動くな(・・・)。何度も言わせるなよ。別にお前らと事を構えたい訳じゃないんだ」


 撃ち抜かれた己の膝を、クロウは呆然と見つめてから、不意に笑い出した。


「くく、くきききききき……っ。貴様ら、本気でこの俺様とやり合うってんだな……」

「だからそんなつもりないッスよ。魔人形態まで出てくるなんて。お互いね、考えたい事いっぱいあるっしょ? だから、ここでお別れしましょ」

「キリエ、……なんで!? なんでジークエンドさん達と揉めてるんだよ!!」


 迅八がふらつきながら立ち上がると、キッドが目を細めた。


「千年の大悪魔と、それと結ばれたオズワルドの転生者。予想以上の回復だな。もう立てるのか? ……キリエ、どうする? もうこうなったら仕事にするか?」

「しないッス!! オフの日は商売(あそび)しかしたくないッス!!」


 その会話の最中、クロウは密かに魔力を己の右手に纏わせる。すると、その右手が撃ち抜かれた。


「ぐおおおおおッッ!?」

「おい、理解力が足りない奴だな。別にな、本当にお前ら皆殺しにしてもいいんだぞ。……勘違いするなよロートル。この場の支配者が誰なのか」


 信じられない思いで、クロウは撃ち抜かれた自らの手と足を見る。

 ジークエンドとアマレロの顔には、苦悶と汗が浮かんでいた。



「……よお。時代遅れ(・・・・)の千年の大悪魔。お前が活躍出来た時代はとっくに終わってるんだよ。だから、動くな。……この場の絶対強者は僕達だ」









 ————————————————

 ————————————————








 VS 『絶対強者』


 オズワルドの転生者 寺田 迅八


心臓剣(ソード・オブ・ハート)

ツバサ

『迅九郎』


 * 超回復

 * 魔術無効



 千年の大悪魔 クロウ


『千の技』

『魂食らい』


 * 自動回復

 * 変化身

 * 変化身解除——魔人形態





 先読み キディ・ジョー・オブライエン

 一人軍隊 柴崎霧絵


『先読み』

『異界武器』


 * その他不明




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ