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アゲイン×2 《クロスツー》  作者: 紺堂 悦文
第四章 絶対強者
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 ……藤堂と俺たちは、最初うまくやっていた。

 静は新しい父親によく懐いていたし、俺は兄貴みたいな存在が出来て嬉しかった。


 俺たちの名前は『寺田』のままで、母さんと藤堂は、法律で認められた夫婦にはなっていないらしい。俺の中でその事に対する疑問はあったけど、別にどうでも良かった。むしろ、名字が変わらない事にホッとした。……だってさ、色々あんだろそういうの。


 俺は別に平気だけど、静はきっとそうじゃない。静は子供には思えないような整った、大人びた風貌をしていたけれど、本当は大人しくて優しい女の子だ。クラスメートにからかわれても、何も言い返せないかもしれないから。






 ある日、俺は藤堂に殴られた。

理由なんて覚えてないよ。けど、突然の事だったからその時どれだけショックだったのかはよく覚えている。


「迅八。僕はお前らをしつけなくちゃいけない義務がある。それも家族の役割だ」


 俺は混乱する頭の中でも、謝らなくちゃいけないって思って、それを口にしてしまった。


「ご、ごめんなさい……!」

「分かればいいんだ。気をつけるように」


 ……なんで殴られたんだっけ。本当に思い出せないんだ。

 けど、その後も度々された『躾』のおかげでなんとなくは分かる。どうせ靴を揃えてなかったとか、その位の理由だったんだろ。


『初めの一歩』は、かなり大切だ。その後の方向性も決まってしまう。藤堂が俺にしたしつけ

その方向性は、藤堂の暴力とそれに対する俺の服従って形で決まってしまった。……それからはしょっちゅう色んな理由で殴られた。必ず母さんか静の見てる前で。


 けど、母さんはそれを止めることはなかった。俺は気が付かなかったけど、もうその時には母さんは藤堂に対して、恋愛っていうか、崇拝みたいな感じになっていた。

 静は何度も止めてくれた。いつも、それを合図にして藤堂は俺に対する躾をやめてくれた。


「……迅八。静は優しい子だな。お前も妹に心配かけないような兄貴になるんだ」


 いつもそんな感じで躾は終わった。

 ……人間は不思議だ。誰かと喧嘩したり、虐げられたりする。すると当然腹が立つ。当たり前だ。ぶっ殺してやろうって思う。けれどそこに『理由』があると、心の中を色んな波が通り過ぎた後、なぜか反省してしまう。……自分の悪い所を探してしまうんだ。


 藤堂は必ず理由を用意した。どんな些細(ささい)な事、下らない事でも、奴が理由を付けずに俺を殴る事はなかった。そして、その度に俺は反省してしまった。


 おかしいって思うか? けどさ、裸にされて殴られて、そのまま表に放り出されると反抗する気なんてなくなるんだ。

 それで、藤堂に許された(・・・・・)後にまた暖かい家の中に入り、あいつに買ってもらった服を着て、あいつの金で作った食事を食べて、あいつの買ったベッドで眠りにつく。……赤の他人に生かされてるって、心の底から実感させられた。




 別の日だ。風呂上がりの藤堂の姿が見えた。藤堂と廊下ですれ違う時は端に寄らなくちゃいけない。

 藤堂の気に触らないように、俺は廊下の端で身を固くした。すると、風呂場から静が出てきた。

 俺の事をチラリと見て、通り過ぎようとした藤堂に、俺は勇気を振り絞って声を出した。


「と、藤堂さん」

「……なんだ迅八」

「し、しずかと風呂入ってたの?」

「家族だったら当たり前だろ。お前とだって入った事あるじゃないか」


 そのまま藤堂は通り過ぎて行った。静は俺の方は見ないで、廊下だけ見て歩いてた。

 後で静に聞いたら、前から時々そういう事はあったらしい。少しずつとはいえ、静は成長している。家族とはいえ、異性と一緒に風呂に入る歳じゃないように思える。それにあいつは自分で言ってたはずだ。俺たちは家族みたいなもん(・・・・・・)であって、家族じゃないんだ。


「……お母さんに言ったら、あの人(・・・)の言うことをききなさいって」


 この頃から、静は俺の前では藤堂の事を『あの人』って呼ぶようになっていた。

 静も風呂に入ることには抵抗があったけど、自分達の立場を思い出したんだ。俺と同じように。

 ……この家の中ではあいつの命令は絶対だ。俺たちは少しずつ気づき始めてた。俺たちはあいつと一緒に暮らしてる訳じゃない。あいつに飼われてるだけだって事に。




 また別の日。


「静。肩揉んでくれないか」


 食事を終えてから藤堂が静に言う。静は言われた通りに藤堂の肩を揉み始める。


「……いい気持ちだ。じゃあ、お父さんもやってあげよう。ソファに横になるんだ」


 そして藤堂が静の体を揉み始める。別におかしな事は何もしない。胸に触る訳じゃない、尻の上に乗る事もない。けどさ、おかしいだろ?

 それでも、初めの一歩を許してしまうと俺たちには何も言えなかった。それに、異常なのかどうかの判断が難しい事ばかりあいつはした。そして、いつも母さんは無表情に静を見ていた。


 あいつは、いつもいつも、わざと他の人間がいるところを狙ってそういう事をしていた。静の体に触ったり、俺の事を痛めつけたり。……そして、二人きりになった時に時々こんな事を言うんだ。


「迅八は最近男らしくなったな。お前は将来大物になるぞ」





 俺は、怖かった。なにがって、嬉しかったんだよ。


 ……些細な事で俺を殴りつけてくる男。

中学生の妹の体を触ったり一緒に風呂に入ったりする男。

(ほこり)が残っていると言って、母さんに寝る事を許さずに掃除をやり直させる男。

いつの間にか、気が付かれないように、俺たちを支配している男。

 あいつに褒められて『嬉しい』って感じる事が、たまらなく怖ろしい。


 一番変わってしまったのは母さんだった。

 母さんは、静の事を()として意識するようになっていた。実の娘を恋敵として見だしたんだ。そんなにおぞましい事、他にあるか?

 母さんの事は言いたくない事がいっぱいある。ただ、その頃から静は少しずつ笑わなくなっていった。





 ————————————————





 窓を叩く雨の音で目を覚ます。

 ぼんやりとした頭で枕元の時計を見ると、四時を回った辺りだった。寝ぼけた頭で机に近寄り、引き出しを開けてその中にしまってある金を数える。一日一回はそれを数えてしまう。すると、不思議と心が落ち着いた。


「百万は、遠いな……」


 一年程前から友達の親の店でアルバイトをさせてもらっていて、その金を貯めてある。

高校を卒業したら、静を連れて家を出る。それだけを考えて俺は日々を送っていた。


 なんで百万なのか、静の学校はどうするのか、住むところは、母さんは……。突っ込む所は自分でもいっぱいある。けど、そういうかすかな希望を持って、ギリギリで毎日を送っているのが俺だった。



 誰も、俺たちを知らない場所に、行ってしまいたい。

……そんな妄想ばかりしていたんだ。



 少しずつ強くなってくる雨の音を聞きながら、静の事を思い出す。妹は、もう帰ってきてるだろうか。

 廊下に出て静の部屋をノックすると、いつも通り返事はない。その扉のノブをゆっくりと回すと、呆気なく扉は開いた。


 外ではまだ陽は沈んでいないけれど、どんよりとした雲がその日差しを遮っている。明かりの点いていない部屋の中、机の上に置いてあるPCのスクリーンセーバーに目を惹かれた。

 パソコンなんて個人情報の塊だ。それを見るってのは、日記を盗み見るのと変わらない。


『しずかちゃん、お金を取られてるみたい。理由は教えてくれないけど』


 由布子の言葉を思い出して、つい、魔が差した。

 ……マウスを動かすとデスクトップ画面がでてくる。可愛らしい動物の写真、狐の親子が丸まっている。

 素早くマウスを操作して日記がないか探る。この部屋に静がいないってことは、雨の中で震えているかもしれないって事だ。けど、その時の俺は覗き行為を優先させた。


 めぼしいデータはなかった。インターネットエクスプローラーを展開させて、『お気に入り』サイトを見る。

 そこには、可愛らしい女の子の物に混じって、『死』『自殺』。そんな不穏な文字もあった。


 俺の心臓は跳ね上がったけど、まだ判断はつかなかった。グロ画像なんかを好んで見る奴なんて山程いるし、俺だって検索くらいはした事ある。

静のコレも、いつかは興味を失う好奇心かもしれない。それらを調べてから今度は『履歴』を漁った。その中には静の純粋な趣味のサイトもあった。


 こんな所を見られたなら兄妹の縁を切られる事は間違いない。けれど、俺はそれを続けた。

 そして、それを発見したんだ。






「裏サイト……」


 学校裏サイト。珍しくもなんともない。

 だけど、書いてある内容がおかしい。あけすけ(・・・・)すぎる。

 今時の教師はこんなもん毎日チェックしてるもんだ。そんなのは生徒側も分かってるから、露骨に人名を出したりヤバい事は書き込まない。書き込んでるのはよほどの阿呆だけだけど、このサイトは露骨・・だ。


 自分の携帯から静の中学校の裏サイトを探し出す。あまり時間を掛ける事もなくそれは見つかった。

 そのサイトは一般的な裏サイトだった。『一般的な裏サイト』なんておかしな言葉だけど、PCの画面と携帯を見比べると、その内容は違った。


「ダミーか? 凄えな。最近の中学生は」


 手元の携帯サイト上では当たり障りのない『カッコイイ人ランキング』やら、卒業生達の飲み会やら、そんな話題が並べられてる。


 けどPCに表示されている履歴から探ったサイトには『ウザい教師ベスト3』やら『非処女っぽい女』、『キモい奴トップテン』、様々な、中学生のあけすけな話題がそこにあった。


 幾つかのトピックを覗いて、静に関する事がないか探し出す。すると、その名前は時々出てきた。



『寺田間違いなく非処女っしょ』

『あいつ可愛いよな。タメだと思えないオーラあるし』

『ウチらの中学じゃナンバーワンだろな。あんま学校来ないけど』

『あいつめっちゃイジメられてんじゃん? なんで?』

『知らん』

『可愛いからだろ』

『マテ、ナンバーワンはバレー部の二年でしょ』

『で、いつやんの?』



 ・・・・・・・・・



「今でしょ、なんてもう誰も書かねえよ。つーか、誰の妹が非処女だ。殺されてえのか」


 下らない書き込みを流し読みながら、様々な話題を見る。

 在校生だけでも三百人はいるのか? そいつらが全員書き込んでる訳はないとしても、結構な量の話題がある。

 そして、その中に『姫』という物を見つけ、なんとなくクリックした。





 それは、『姫』って呼ばれてる奴に関する事を書く場所みたいだった。姫って言っても、言葉通りの意味じゃない。溢れ出ている悪意。馬鹿にした文章。

 日付が古い順から流し読む。すると、幾つかの気になる書き込みがあった。



『姫うぜえええええ。あいつなんかお高くない? 着てるもんもやたらいいもんばっかだし』

『あいつんちババアが金持ちと再婚して凄いらしいよ。昔からあいつの事知ってる奴から聞いた』

『男はやたらと持ち上げるしな。あいつ円光でもしてんじゃねえの? 父親相手に』




「……おいおい」


 静の事か? 頭の中がサッと冷える。誰が書いてるのかも分からないただの文字列に、胸が刺されたようになる。

 時系列を考えてある程度書き込みを飛ばして再び読む。







『あいつ、オヤジに毎日やられてるらしいよ。子供も何回も堕ろしてんだって』


『マジで?』

『ウソw』








 一行目を読んで、一瞬目の前が真っ暗になった。続く書き込みを見て膝から力が抜ける。


 冷静に考えれば当たり前だ。俺はいつも外の音が聞こえるように扉を完璧には閉めない。けど、一回もそんな様子は伺えない。藤堂が静の部屋に行くことはたまにある。

 俺はその度に何か異変があったら部屋に飛び込もうと構えてたが、いつもあいつはそんなに長居しないで出てくる。長くても三十分てところだ。

 けどな、そういう『噂』が出回る事自体が致命的なんだよ。そこらへんから『姫』に関する書き込みは過激さを増していった。


 ……話しかけられても無視してやった、上履きを隠してやった、拾われた消しゴムを目の前で捨ててやった、殴るフリ(・・)を何度もしつこくやってやった。


 読んでるだけで頭が煮えそうになる嫌がらせ。

 俺の気持ち分かるか? そりゃあシンプルなもんだったよ。ぶっ殺してやろうって思ったな。……けどさ、あんなもん誰が書いてるかなんて分かりゃしないんだ。




『今日あいつの携帯没収してやったらマジヤバいんだけど! あいつ自分の裸の画像めっちゃ携帯に入れてんの!』

『なんで? それ本当に?』

『撮られたって言ってた! そんで、自分の携帯にそれ入れておかないと、撮った奴に怒られるんだって! 毎日自分で見ろってっw』

『うわあ……。』

『引くね。彼氏変態すぎっしょw』

『彼氏かどうかは最後まで言わなかった。言わないのムカつくから、その画像私の携帯に送ってやったwww』




 血の気が引くってのはあの時の俺の顔みたいなんだろうな。


 そこからの書き込みはひどいもんだった。

 みんなの前で踊らせた、カラオケで奢らせた、まあ色々と書いてあったよ。けどさ、『ヤバい』って気付き始めたんだろうな。だってさ、そろそろ書き込みが犯罪自慢みたいになってきてたからな。

 最近の日付では殆ど書き込みはなかった。で、一番最後の書き込みは『今日』だった。



『あいつの兄貴ぜってえ殺す! 姫にも地獄見せる! 写真ばら撒いてやる!』

『私にもチョーダイ。』

『姫見つけたって。電話にしよっか』











「うおおおあああらあああああっ!!」


 目の前のパソコンを衝動的に殴りつけた。吹っ飛んだそれを掴んでそのまま窓に向かい投げつける。繋がっていた幾つものコードが外れたノートパソコンは、窓ガラスに当たると跳ね返った。


「っだらあああああっ!!」


 知ってるかい? 窓ガラスって頑丈なんだよ。まさか跳ね返るとは思わなかった。

その時の俺は完全に正気を失ってたから、そのまま窓ガラスを殴りつけた。普通やるか? 窓ガラスを殴りつけるなんて。……けど、藤堂の家のもんは全部高級なんだろうな。それでもガラスは割れなかったし、俺の拳からは鈍い音がした。


 窓ガラスが割れない事を知ると、俺は玄関に向かって走った。だってガラスが割れないんだったら他のものを割ってやらなくちゃいけない。例えば、静のクラスメートの頭とか。


「迅八!!」


 後ろから藤堂の声がする。それに振り向く事なく俺は叩きつけるように扉を閉めた。





 ————————————————





 外は土砂降りになっていた。

 その冷たさでも頭は全く冷めやしない。

 だってさ、長くなるから省いた部分もあるけど、そりゃまあ色々やってくれたらしいんだよ。俺の妹に。

……鼻水垂らして泣いてる顔を、携帯で撮った時が『マジウケた』ってよ。


 それにさ、非処女っぽいから確かめてやろうとした事もあったんだと。気が狂ったみたいに『姫』が暴れたから出来なかったらしいんだけど、ムカついたから今度は男呼んで必ずやるってよ。泣きながら暴れてたのが『キモかった』ってさ。


 俺にも分かるぜ。ムカついたら必ずやるよな。そりゃそうだ。絶対にやらなくちゃダメだよ。



「……うははははははっ!! そりゃそうだ!!」



 完全に俺は普通じゃなかった。傘を差した周りの人間が、俺の事を狂人を見るようにしていた。いや、狂人を見てたんだろうな。


 俺の頭の中には一つの事しかなかった。

 あのクソガキ共をぶっ殺す。俺は言った。約束は絶対に破らないと。まだ、あいつらを殺す宣言はしていないが、それはあいつらの前ですりゃあいい。

 静が残った公園の前を通ると、こんな雨の中で争っている奴らがいた。


「うははははは!! ……居た。居たああああっっ!!」


 それはゲームセンターで静を囲んでいた女達だった。正気を失っていた俺は、その場にいた静の事も、仲裁していたのか由布子がいる事にも気付かずに、真っ直ぐに女達の元に走っていった。


「言ったなよなっ! 静になんかしたら『やる』って言ったよなああああっっ!!」


 その叫びで俺の存在に気付いたのか、女達がこちらを見た。


「せ、せんぱい!」


 その声で、俺は由布子の存在に気がついた。そして、由布子の後ろに居た妹の事も。



 全てがスローモーションみたいに見えた。

 俺の事を恐れを含んだ目で見る女達。

 突然の乱入に驚愕している由布子。

 そして、手に持ったナイフを真っ直ぐに突き出して、女達に走り出した静。


 おい静。けど、それはまずいだろ。

 それじゃ、由布子に当たるじゃねえか。

 お前も俺と一緒だな。すぐに周りが見えなくなる……。


 静は俺を見ていなかった。俺は、由布子を庇うために間に入った。だって、妹に親友を傷付けさせる訳にはいかないだろ。




 





 ——雨に濡れる体


 ——胸に刺さったナイフ


 ——自分を見て泣き叫ぶ妹、静の顔




 これが俺の最後の記憶。

 淀んだ水みたいな毎日の最後だった。









 色々とあるんだ。考える事は。

 まずさ、誰が写真なんて撮ったんだ?

 まあ、そんなもんは分かり切ってるけどな。クラスメートよりも先にあいつを殺しておけばよかった。

 けど、そしたら由布子の事を助けるのは間に合わなかったし、これで良かったのかもしれないな。


 それとさ、俺は、こっち(・・・)の世界で目覚めて悪魔に出会う前に、なんか見た気がするんだ。黄色い花畑……。


 まあ、それも今となっちゃ急いで解決する謎じゃない。静については、クロウがこっちの世界での悲惨な記憶は消してくれたし、元の世界での記憶も覚えてない所がいっぱいあるみたいだ。出来れば、このまま思い出さないでいて欲しい。


 他にも細々(こまごま)と気になる事はあるよ。

 けど、もうさ、ハッキリ言って、元の世界に帰るつもりなんかない。記憶を取り戻した今となっちゃ、それは尚更だ。静にとってもその方がいいだろう。


 なんでこの世界に来てしまったのか。

それは考えるべきかもしれないけれど、優先順位は下だ。今はそんな事よりも重要な事がある。例えば、急に姿を現した青い髪の天使をどうするかとか、俺とクロウはどこに向かうかとか……。そろそろ他の転生者にも会いたいしな。



 ……なんて、その時の俺は考えてたよ。

 俺は辺境にいたからよく分かってなかったんだな。


 俺たちが飛んできたのは、他の転生者たちが暴れ回った後の世界(・・・・)。異世界転生の旨味なんて食い尽くされた後の世界。

天使や悪魔に匹敵するようなチート連中が、この世界にはゴロゴロいたんだ。




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