天国と地獄 二
前に言ったはずだね。私達は天国と地獄を発見した。じゃあ、それは何処にあるのか?
少なくともこの世界は違う。ここは天国でもなければ地獄でもない。そもそも、何処かに行けば辿り着ける、そういう場所ではないんだ。
人は死にそうな目に遭ったりすると、時間を遅く感じる事があるという。——周りの景色がスローモーションのように見えた。一瞬で自分の過去を思い返した。……走馬灯というやつだ。
なぜそのような現象が起こるのか。これについては色々と言われている。ただ、全部仮説だ。そりゃそうじゃないか? そんな事、確かな事は分かるはずがない。
けれど、私達はその結果どういう事が起こるのかは探り当てた。だからといって、なにがどうなった訳でもないんだがね。
臨死体験というのも知ってるね? ……知ってろよ。死の間際、目の前にお花畑が、あるいは暗い河原で舟に乗りそうになった。まあ、色々ある。
ところで、あれは目が覚める瞬間に体験するというのは知ってるか?
夢でこんな経験はないか? 高い所から落ちる夢を見て、息を荒げて目を覚ますとベッドから落ちたところだった。
夢の中でドアの呼び鈴がうるさく鳴っていたら、目覚めると現実でも鳴っていた。
目覚める一瞬。その時間を引き伸ばして、脳が夢を見ているらしいんだな。臨死体験もそれと同じだ。目覚める一瞬に見ているんだよ。
走馬灯の話はしたね。夢の話もした。臨死体験の話もだ。これらは、脳が時間を引き伸ばして、一瞬を長く感じさせて起きることだ。もっとも全部が全部そうではないけどね。
さて、天国と地獄だ。
死の間際、稀に『夢を見る』人間がいる。条件は分からない。宗教観が強い人間はそうなりやすいという仮説もあるが、別に無宗教の人間でもそうなる
……死の間際に見る、瞬間の夢。
それが、自分にとっては永遠のように引き伸ばされて感じられるとしたら。その一瞬は、なんて呼ばれるのだろう。




