指導教官
指導教授は学生のファイルを受け取り、自分の端末に読み込ませ、モニターに映し出して黙って眺めている。
学生は微かな興奮に、顔が火照るのを感じていた。
いよいよだ……。いよいよ今日、この時、結果が出る……。
指導教授は前年に助教授から昇進して、教授になったばかりである。したがって、与えられた研究室も新しく、運び込まれた様々な資料や、機材で室内は乱雑を極めている。
年齢は、そう若くはない。四十代前半か。それでもこの年齢で、助教授から正教授に昇進するのは、稀な例外だと噂されている。
鶴のように痩せていて、髪の毛はかなり薄くなっているのが、教授を年齢以上に老けて見せている。落ち窪んだ眼窩から、二つの大きな目玉が、学生の提出したファイルの中身をチェックしている。
教授の骨のような指先が、モニターの一部を指し示した。
「この静止画像は? 大分、古いもののようだが……」
ようやく口を開く機会を得て、学生はやや前のめりの姿勢になって話し出した。
「ええ、当時の雑誌をスキャンして取り込んだものです。それは──」と教授の背後から腕を伸ばした。指先を写真の中央に当てる。
「当時〝族〟と呼ばれた若者グループの集会場面です。中央に立っている〝ツナギ〟の男がグループのリーダーです。リーダーは〝頭〟とか〝酋長〟とか呼ばれていたようです。どうも雑誌の保存状態が悪く──なにしろ昭和時代は、百年以上の大昔ですから──読み取れない部分もあって、用語にはあまり自信はないのですが」
腕組みをしてモニターに見入っている教授の横顔を見て、学生の口調は尻すぼみになった。教授の横顔には、ありありと不満が表れている。




