世界
ギャル語──二十世紀末の、女子高生同士の会話をそう呼ぶ──が、簡単な構文と時制の短縮化で簡略化された日本語として普及に一役買った。
つまりピジン日本語である。
ギャル語に必要な単語は僅か二千語で、それだけの語彙で女子高生は世界を表現している。
世界中の人々は日本風の名前を名乗るようになり、会話の中に益々日本語の単語が混入していく。例えば英語の七十パーセントがフランス語起源であるように、日常会話の大部分が日本語起源となっていったのである。
普及の流れはまず「アニメ」「マンガ」などの受容が盛んだった欧州で始まった。日本語受容の流れはアメリカ、南米に広がり、経済圏として重要な地位に上がっていた東南アジア、インド亜大陸でも広がっていく。
モンゴル、東欧諸国のウラル・アルタイ語圏では、もともと日本語と同じ膠着語族であったゆえに、普及は一気呵成に進んだ。最後まで抵抗していた中国、朝鮮半島においても、渋々であるが、日本語が第二母国語として認められるようになった。
国連は事実上消滅し、替わりに幕府の問注所がその役目を果たした。全世界に幕府の出先機関である奉行所、代官所がおかれるようになる。
ここに「大江戸共栄圏」が成立したのである。日本の新たな江戸幕府を盟主とする、新たな秩序が構築されたのであった。