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ラーさんの短編集

作者: ラーさん
掲載日:2010/10/02

 雨に降られてしまった。

 天気予報を聴かなかったのは失敗だった。


 ――今朝はあんなに晴れていたのに。


 秋の空。

 傘がない。

 歩いて帰るのは難儀だった。

 雨宿りをすることにした。

 駅の構内にたたずむ。

 雨はしとしと降り続いている。

 帰宅する人。

 天気予報を聴いていた、利口な彼らは傘を開いて駅を出る。

 傘でいっぱいの風景。

 手持ち無沙汰。

 雨音。

 足音。

 忍び寄る夜気。

 濡れた空気。

 雨の匂い。

 ポケットに三百円があった。

 駅の向かいに喫茶店がある。

 喫茶店は暖かかった。

 少し濡れた肩を拭きながら、コーヒーを一杯頼む。

 苦かった。

 ガラスの向こうに雨が流れる。

 そのまま数刻。

 雨は止まなかった。


 ――このまま降り続ければ、二度と帰れなくなるだろうに。


 夜。

「もう閉店ですが」

 ウェイトレス。

「そうですか」

 カップの底にコーヒーの跡。

「実は傘がないのです」

 呟き。

「そうなんですか」

 奥に消えた。

「では、この傘をどうぞ。古い置き傘ですのでお構いなく」

 白いビニール傘。

「またのご来店を」

 傘を差して店を出た。

 濡れる傘。

 しばらく歩くと雨がやんだ。

 月。


 ――悪くない。


 ゆっくりと傘を閉じた。

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