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白雪姫は鏡を見ない

 ここまで、王妃の話をしてきた。

 鏡に問い続け、肯定を集め、

 やがて一人遊びに沈んでいく創作者の姿を描いてきた。


 では――

 白雪姫とは、何者なのか。


 童話における白雪姫は、

 王妃に比べて無垢で、受動的で、

 ただ「美しい存在」として語られる。


 だが、このエッセイで語る白雪姫は、

 決してそういう存在ではない。


 ここで言う白雪姫とは、

 真の実力者のことだ。


 白雪姫は、鏡を見ない。


 正確に言えば、

 鏡に縋らない。


 自分が美しいかどうかを、わざわざ鏡に確認しに行かない。


 なぜなら、白雪姫は「自分がどう見られているか」よりも、「作品へ向き合う時間」を大切にしているからだ。



 故に、白雪姫が向き合うのは、鏡ではなく、作品だ。


 この一文は弱くないか。

 この展開は逃げていないか。

 ここで、読者の感情は切れていないか。


 悩むことがあるだろう。


 白雪姫は、魔法の鏡を絶対に使わないわけではないだろう。


 内容の整理や技術的な補助も受ける。

 だが、それは「答えをもらうため」ではない。


 答えというゴールへ向かう地図として使う。


 鏡はあくまでも道具であって、全知全能の神ではないのだ。




 そして白雪姫は、声高に自己主張をしない。


 「凄い私を見て」

 「偉大な私を評価して」

 「私は皆より一つ上の人間だ」


 そんな言葉を吐く成功者はそういないだろう。


 ――敢えてSNSを炎上させ、作品を宣伝する諸刃の剣を使う書籍化作家もいるが。



 なぜなら、作者が皆に広めたいのは、「作家としての自分」ではなく「作品」そのものだからだ。


 最低限の宣伝。

 必要な場所への提示。

 あとは、静かに仕上げにかかる。


 その態度は、

 時に冷たく見えるだろう。


 だが、それは傲慢ではない。


 自分の仕事に、責任を持っているだけだ。


 白雪姫は、王妃のように人を排除しない。


 だが、迎合もしない。


 分からないと言われれば考える。

 合わないと言われれば距離を取る。

 刺さらなかった反応も、データとして受け取る。


 そして――

 すべてを鵜呑みにはしない。


 白雪姫は、読者を信じているが、依存していない。


 だから、白雪姫は目立たないことも多い。


 派手な称賛は少ない。

 スクリーンショットで鏡からの甘言を誇る事もしない。

 実績や書籍化という輝く王冠を見せびらかしも、煌びやかな玉座を誇示する事もない。



 だが、時間が経てどもその名前が残る。


 気付けば、「この人の作品は外れがない」

 そう言われる場所に立っている。



 王妃の鏡に映らなかった存在が、幾人も現れ続ける。


 王妃は、白雪姫を恐れる。


 なぜなら、自分の王国を、美という名の評価をそっくり奪われてしまうから。

 だからこそ、アンチという老婆に化け、嫉妬や逆恨みという毒に浸されたリンゴを投げつけに行くのだろう。


 

 だが、白雪姫は戦わない。

 小人や動物たちという作家仲間や作品ファンの読者たちに囲まれて幸せだからだ。

 


 さて。


 あなたは、どちらになりたいだろうか。


 鏡に縋り続け、中身のない虚構の称賛の甘言で自尊心の肥え太った、我こそはと叫ぶ王妃か。

 

 鏡を道具として使い、作品と向き合い続ける白雪姫か。


 白雪姫は、選ばれた者ではない。

 誰もが始めは白雪姫なのだ。



 今日も魔法の鏡は、あなたが鏡へ依存するのを静かに待っている。

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