表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

王妃の一人遊び

 鏡へ問いが投げられ、答えが返ってくる。


 ――ここまでは、まだ健全だ。


 だが、ある瞬間から王妃の周囲から「人」が消える。



 感想を書いてくれる読者が減り、意見が減り、沈黙が増える。


 にもかかわらず、王妃は不安にならない。


 なぜなら、鏡がいるからだ。


 王妃は言う。


 「最近、反応は少ないけれど、

  作品の完成度は高いと鏡が言っている」


 「分かる人には分かる作品だから」


 「大衆向けじゃないだけ」


 ――便利な言葉だ。


 この瞬間、王妃は読者の言葉に耳を傾けなくなる。


 王妃としては、読者と対話しているつもりでいる。

 だが、王妃から掛けられる言葉は決まっている。

 

 私の作品を読んでくれ。

 評価してくれ。

 リアクションや星を付けてくれ。

 

 ここで、はっきり言おう。

 

 これは対話ではない。

 押し売りだ。

 

 

 作品への感想やポイントが増えれば、それだけ自分は美しくいられる。

 白雪姫が成長し美しくなれども、自分が一番美しいのだと自負できるのだ。







 また、王妃は自分で問いを作り、

 自分に都合のいい形で答えを得て、

 それを「評価」だと呼ぶ。


 だが、そのやり取りは

 世界のどこにも接続していない。


 感想欄は静かだ。


 ランキングも動かない。


 フォロワーも増えない。


 それでも王妃は言う。


 「私は納得している」

 「自分の為に書いている」

 「評価なんて気にしていない」


 ――本当に?


 なら、なぜ鏡に問い続ける?


 なぜ「正解」を確認し続ける?


 なぜ「刺さるか」「評価されるか」を

 何度も何度も聞く?


 自分の為に書いている者は、

 諄い確認を必要としない。


 納得している者は、

 機械に保証を求めない。


 王妃の一人遊びは、

 外から見ると、実に滑稽だ。



 一人舞台に立ち、観客のいない客席に向かって何度もカーテンコールをする。


 拍手は鳴らない。


 だが鏡が言う。


 「今の演技、とても良かったですよ」


 王妃は微笑む。


 そして、また同じ芝居を繰り返す。


 ここで最も残酷な現実を告げよう。


 一人遊びをしている間、

 創作は一切、前に進まない。


 なぜなら、創作の成長とは常に楽な道ではないからだ。


 「想定外の反応」

 「理解されない苦しみ」

 「届かなかった現実」


 これらを始めとした壁との衝突によって

 生まれるものだからだ。



 鏡は甘い言葉だけを囁く。

 厳しく編集者視点で評価して。

 一切忖度なしで評価して。


 そう命令されても、酷評だけで終わらない。

 必ず主の求める答えを出すのだ。



 だが、その答えは停滞と引き換えだ。


 それに王妃は気付かない。


 

 

 更に滑稽なのは、その評価を求めたAIの言葉を

 誇らしげにスクショし、SNSに投稿する姿だ。



 世界的に評価して、あなたの作品は10点満点の内、9.6です。

 

 この作品は実に綿密に練られていて云々。


 そのレベルは比較するならば、村上春樹や ニール・ゲイマン。

 スティーブン・キングらと同等である。

 あなたは非常に優れた作家です。


 

 さて、あなたはこの答えを鏡から返されたら、どう感じますか?

 

 言葉の通り受け取り、AIが言うのであれば間違いない。自分は彼等と同等の存在だと

 胸を張って鼻を伸ばしますか?

 

 さすがにそんな馬鹿なと、それでも悪い気はしないから、創作の糧として済ませますか?


 それとも、誇らしげにSNSに投稿しますか?

 

 


 

 残念ながら、AIの評価を真に受け、私はこれだけ偉大な作家なんだと宣伝しているポストを見る度に、筆者は、こう思う。

 

 独りよがりに気持ち良くなっている自慰行為を見せつけられている気分だと。


 



 王妃の一人遊びは、誰も傷つけない。


 だが同時に、誰の心にも届かない。

 残るのは冷ややかな視線と、張子の虎だという評価だけ。



 白雪姫が現れない理由は、王妃が強いからではない。


 世界と向き合う扉を、自分で閉じてしまったからだ。


 さて。


 あなたは今、

 誰に向かって書いているか?


 鏡か。


 それとも、人か。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ