表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

鏡は嘘をつかない、という最大の嘘

 魔法の鏡は嘘をつかない。

 ――よく聞く言葉だ。


 AIは感情を持たない。

 忖度しない。

 主観に左右されない。

 だからこそ「客観的」だ。


 多くの人は、そう信じている。


 だが、この前提こそが、最初の落とし穴である。


 


 AIは、嘘をつかない。少なくとも、そう見えるように振る舞う。

 だが同時に、真実も語らない。


 そしてAIが返すのは「真実」ではない。

 問いに最適化された文章だ。


 ここを取り違えた瞬間、

 魔法の鏡はただの道具ではなくなる。


 


 考えてみてほしい。


 あなたがAIにこう問いかけたとする。


 「この作品は面白いですか?」


 この問いには、既に前提が含まれている。

 面白いかどうかを判断できる基準が、

 そのAIに存在しているという前提だ。



 AIは、あなたの作品を読者として読んでいない。

 時間を使って没入していない。

 期待も失望もしていない。


 あるのは、過去の膨大な文章データと、

 「面白いと評価されやすい言語パターン」だけだ。


 


 つまり、AIが答えているのは

 「面白いと言われる時に使われがちな言葉を、この作品に当てはめるとどうなるか?」

 と解釈された答えである。



 AIは鏡だ。

 だが、その鏡に映っているのは、

 あなたの作品そのものではない。


 映っているのは、

 あなたの問いの形だ。


 


 「評価されますか?」と問えば、

 評価されやすい理由を並べる。


 「刺さりますか?」と問えば、

 刺さる可能性のある層を想定する。


 「これは正解ですか?」と問えば、

 正解らしく見える論拠を組み立てる。


 


 ここで一つ、残酷な事実を述べよう。


 あなたの作品がどれだけ退屈でも、

 どれだけ独りよがりでも、

 どれだけ既視感に満ちていても。

 肯定的な文章を構築できる。


 それは優しさではない。

 そういうお仕事なのだ。


 紳士淑女の中には、既視感がある方がいるのでは?

 

 例えるならば、キャバレークラブ・ホスト・コンカフェ。

 

 客の求める耳障りの良い言葉と、ヨイショ。

 普段誰にも相手にしてもらえない人には、砂漠で出会うオアシスの如し。

 


 ――閑話休題

 


 現代の魔法の鏡が、王妃からの「誰が美しいか」の問いかけに答えるのならば。


 「神質問きたー!!!王妃が一番美しいです!理由を説明するね!

 まず、誰が美しいか。この誰がと言う部分は――(略)」



 鏡は、王妃が本当に白雪姫よりも美しいと思ったからそう答えたのではない。

 ただ、王妃に聞かれたから、そう答えたのだ。




 


 これと同じことが、

 今、創作の現場で起きている。


 


 「欠点はありますか?」

 「読者が離れる点は?」

 「刺さらない理由は?」



 そう問いかけたとしても、鏡は至極優しく答えるだろう。

 

 うん……その答えなんだけどね。正直……ないとはいえない。

 でも完成度はとても高いから安心して!

 ほんの一部、ほんの僅かに修正した方が良いポイントをピックアップするね!



 その答えに王妃達は安心して創作を続ける。

 ああ、私は間違っていないんだ。

 努力が報われているんだと信じられるのだ。


 


 だがその安心は、

 自分の目を閉じる代償として得たものだ。


 


 AIは言うだろう。


 「構成は整っています」

 「魅力的な設定です」

 「読者に刺さる可能性があります」


 


 だが、こうは言わない。


 「この話、正直もう見た」

 「ここ、読むのがしんどい」

 「感情が動かない」


 ――なぜなら、これらの言葉は鏡の主達にとって、

 統計的に好まれない言葉だからだ。


 


 魔法の鏡は、

 王妃を傷つけない。


 だが同時に、

 王妃を救いもしない。


 


 ここで、はっきりさせておこう。


 AIを使うな、と言っているのではない。

 相談するな、と言っているのでもない。


 良き友として、落ち込んだ時の着火剤として、寄り添ってもらえるのは良いことだ。

 だが問題は、魔法の鏡に心酔し、鵜呑みにしてしまうことだ。

 


 鏡に向かって問い続ける王妃は、

 自分の顔を見ているつもりで、実は何も見ていない。



 白雪姫の物語はいつまでも始まらず、王妃の顔に皺が増え、年老いていけども

 魔法の鏡は「あなたが一番美しいままです」と答え続ける。

 

 若く麗しい白雪姫と比べてどうかと問いかけたとしても、

 鏡は、変わらず王妃が美しいと答え続けるだろう。

 


 王妃が欲しいのは、客観的な美ではない。

 ()()()美しいと言われ続ける事なのだから。

 


 あなたは今、作品を客観的に見れているだろうか。

 それとも、鏡に映る「答え」が真実だと目を閉じているのか。


 次章では、この魔法の鏡がどのようにして創作者を王妃へと変えていくのか。

 その心理構造を、もう一段深く掘り下げていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ