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第二十四節 捜査六日目 ②司祭の罪


お嬢様って、時々予言者かなんかなのかって。

思う時があるんですよ。


レストラード警部から、ヤード本部に来てほしいという連絡をもらって、どうしたのかな、と思い来てみると。

レストラード警部は困った顔で頭をがりがり搔いていた。


「どうしたんですか?」

俺が尋ねると、

「とりあえずこっちに」

と言って、いつもの応接室に通してくれた。


ソファに座ると、警部はドスンとソファに深く座って

「どうなってんだ?」

と聞いてきた。


それは、こっちのセリフなんだけど?


「な、なにが…」

「サンティアゴ大聖堂の司祭が、例の話題の絵を盗んだのは自分だとか言って、出頭してきやがった。」

「えぇーーーー!」


あ、あの司祭が?

天使のような義理の息子が描いた絵を本物として返却しやがった、あの司祭が?


「しかも、こっちが本物だとか言って、例の絵まで持って。」

「え、えぇぇぇ!」


どうなってんの?


「そ、それで、その絵は?」

「美術館に確認したら、担当の学芸員が休んでて不在だとか、こっちには本物があるんだから偽物だろうとか、言ってやがった。」


あ、メルドさんまた休みなんだ。

ほんとに消えちゃったのかな。


「あの、お嬢様連れてくれば、本物かどうかわかるんですけど…」


なんか、そんなこと言ってたしな。


「いや…うーん。」


警部はぼりぼりと頭を乱暴に掻いている。

なんだろ、珍しく歯切れが悪いな。


「本物だとまずいんだよ。美術館側は、例の絵をすでに展示してるしな。」

「そういうもんなんですか?あれ、本物じゃないですよ?お嬢様も言ってますし…」

「お嬢が言ってても、あっちが本物ってことになってるからなぁ。変に偽物だーなんて言えねぇだろ。証拠もねぇし。」


右目の暗号のことは、証拠にはなんないのかな?

みんなが認識してるわけじゃないから、だめなのか?

うーん。


「そうすると、どうなるんです?」

「とりあえず、あのモンフェランって司祭は偽証罪と詐欺罪が適用されるだろうなぁ。」

「窃盗ではなく?」

「本物は返却されてるからな。」


うーん。


「あ、本物を盗んで、返して、それで、偽物を作って、出頭したっていうのは?」

「まぁ、それでもいいけどよ、俺は。判事が納得するわけねぇだろ。」

「そうですねー。」


警部ははぁぁーと大きく息を吐くと

「とりあえず、事情は分かった。あれは、ほんとは本物なんだな。どうすっか…。お嬢は、なんか言ってなかったか?」

と聞かれた。


屋敷を出る前、お嬢様に言われたことを思い出す。


「お嬢様は、制服警官の制服を借りてこいって。」

「は?」

「あの、俺のサイズでお願いします?」

「はぁ?」


ですよねー。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「で、どうするつもりなんですか?」

「制服は借りてきたのか?」


俺は、お嬢様が座っている執務机に、袋を置いた。


「借りました。警部にすごい不審がられましたよ。」


「そうか。」


そうかって…


「どうなってんですか?司祭は意味わかんない自首するし、本物の絵は、ヤード本部の証拠品保管庫行きだし。」


お嬢様は、怒っている俺を怪訝そうに見てくる。

怪訝に感じてんのは、俺の方!


「順序だてて、説明を!」


お嬢様は、すごい顔でこっちを見ながら、小さく「わかった」と言った。


「まず、司祭の行動については、奴の絵画盗難の動機を考えれば、驚きはない。」

「理由って、ヴァロワのなんだからヴァロワに返すってやつですか?」

「そうだ。やつは、アルビオンなんかが本物を所有し、展示するのが許せない。だが、自分が疑われていると感じ、さらに事件が大げさになってしまったために、このままではまずいと思ったんだろう。リュカの描いたものを返却した。本物は返さないが、盗難事件は絵が戻ったんだ。追求されなくなると踏んだんだろう。ところが、だ。」

「あー。絵がヴァロワに返還されるって、今日の新聞ですかぁ。」

「そうだ。公式に、絵がヴァロワに戻る。とすると、本物は奴の手元、日の目も見ずにアルビオンの大聖堂の倉庫に保管され、偽物が『奇跡の絵』などと謂れがついて、祖国に戻るわけだ。大層注目されてな。」

「本末転倒ですね。」


そう考えると、司祭ってバカじゃないか?

まぁ、外交の状況なんてわかんないし、仕方ないけど。


「それで、本物は返ってくるって、お嬢様は言ってたんですね?」

「そうだ。」


で?


「でも、警部の話だと、ヤードでは司祭の持ってた絵は偽物ってことで、処理するしかないって。」

「そうだろうな。」

「なんか、上流階級の裏技、使えるんですか?」

「使わなければならない場面はある。が、今はまだ使えんな。」


どういうことだよー。


お嬢様は部屋のランプの光を瞳にともして、怪しく微笑んで言った。


「お前が、どうにかするんだ。」


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