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第二十一節 捜査四日目 ①絵画の在処


お嬢様は、今日は王殿下とお茶会に行ってるし、リュカ君とはあと二日待つ約束だし、暇だなー。

いや、仕事しろって話なんだけど。

お嬢様が言ってたように、メルドさんがいなくなってるのか、確かめに行こうかな?

暇だし。


ということで、美術館に行こう!

うん。リュカ君も誘うかなー。


「号外ー、号外ー。盗まれた絵が戻った! 事件についての号外だよー!」


はい?


通りを歩いていると、新聞販売の少年が何やら聞き捨てならないことを言っている。

大人たちが、一部くれ、とか言って少年に群がっているのをかき分けて

「い、一部下さいー。」と言うと

「はいよ。」

と言って少年が手を出してきたので、お金をちょっと多めに渡してあげる。


さて、号外って何が書かれているのか…


「奇跡!『微笑む女』が美術館に戻る!」


という見出しがでかでかと書かれていた。


な、なんと!

リュカ君、もう説得できたの?

それに、司祭様も、そんな簡単に返却できるの?

ちょっと美術館のセキュリティが心配になるけど。

お嬢様の言う通り、司祭っていう肩書が、不信感を消し去ってるのかな。


うーん。

確認しに行こう!


俺はものすごい行列になっている美術館の前を通り過ぎて、サンティアゴ大聖堂へ向かった。


「え?絵が戻ったんですか?」

「え?リュカ君の説得が上手くいったんじゃ…」

「僕、まだお父様と話ができてなくて…」


リュカ君を訪ねて絵のことを聞くと、どうやらリュカ君の説得のお陰で絵が戻ったわけじゃなそうだ。


「お父様、改心してくれたんだ…」


でも、リュカ君は嬉しそうだ。

まぁ、自分で悪いことに気づいてくれたんなら、それで十分だしね。


「よかったね。」


俺がそう言うと、リュカ君は嬉しそうに笑って「うん」と言った。


くぅーーー。

天使の笑顔。


「あの…」


両手を祈るようにぎゅっとして、リュカ君はもじもじと何やら言いづらそうにしている。

お手洗いかな?


「あ、全然、」

「美術館に、戻った絵を見に行けますか?」


あ、お手洗いじゃなかった。

言葉を遮ってもらってよかったんだけど、リュカ君は

小さく

「すみません。」

と言った。


うーん。見に行くのは全然いいんだけど…

混んでるんだよな…。

号外のせいで、この前より混んでそうだし。


リュカ君が零れ落ちそうなアメジストの瞳をウルウルさせて、こっちを見上げている。



「見に行ってみようか。」


俺はかわいいものに弱いのだ。


ということで、美術館前。

混んでるー。何とかなんないかなー。

とりあえず、列に並ぶとしますか。


その時、


「あれ~、エドモンドさんじゃないですか~?」


間延びした声が聞こえた。


「え?メ、メルドさん?」

「そうですよ。」


なんで?お嬢様の話では、こいつはどっかの諜報員…


「休憩でちょっと出てたんですよ。それより、エドモンドさんも、号外見ました?」

「え、えぇ…」


お嬢様の勘違いかなんだったのかな?

メルドさんが諜報員説。


「よかったら、見に来ませんか?『微笑む女』。まだ、展示はされてないはずなんで。」

「そうなんですか?」

「さすがに、チェックもなしに展示はしないですよ~。」


ははははは~とメルドさんは軽く笑った。


うーん…どうしよう。


ちらっとリュカ君の方を確認する。

すごい、期待の眼差し。


「お、お願いします。」


―――――――――――――――――――――――――――――


「はい。こちらです!」


メルドさんの案内で、俺とリュカ君は美術館の修繕室みたいなところに通してもらった。

何度か通ったことのある部屋で、館長さんや他の学芸員さんなんかも一緒に、戻ってきた絵を見ていた。


「戻ってよかったですね。」

館長に挨拶してそう言うと、館長は乾いた笑いを上げて

「そうですね。」

と短く応えた。


なんだろ?うれしくないのかな?


リュカ君はさっきからじーっと絵を見てる。

俺も、やっと拝むことのできた『微笑む女』を見てみる。


お嬢様も見たかっただろうなー。


なんか、うーん、俺にはよくわかんない絵だな。

美人なような、そうでもないような女性が、あいまいな微笑をたたえて斜めを見てる絵だ。

なんで、斜めの方を向いているんだろ?


メルドさんはご機嫌で館長やらと話してる。

やっぱ、お嬢様の勘違いだったんじゃないか?

この人がサム・リドルで、諜報員だなんて。


じーっと絵を見ていたリュカ君は、なんだかせわしなくいろんな方向から絵を見たりしている。

何してんだろ。


「この絵は、どこから見ても描かれている女性と目が合わないって言われてるんですよね。」


うわっ。びっくりした。

「背後から、声をかけないでもらえますか?」

「すみません、驚きました?」


驚きました。


それより、目が合わないか。それで斜め向いてるのかな。

俺もリュカ君みたいにウロウロ場所を変えて絵を見てみる。

ん?


いや、ここからだと…

めっちゃ目が合うな。

自意識過剰?

いや…

見てるな。こっち。あれ?


すると、誰かが俺の服を引っ張った。

見ると、真っ青な顔をしたリュカ君が震えながら。ぎゅっと俺の服の裾を握っていた。


「これ…違います。」


消え入りそうな声で、リュカ君が言った。


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