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第六節 捜査一日目 ③美術館の裏側


まぁ、こうなるんですよ。

毎回。


「ほんとう~に、ありがとうございます! ブラックモア侯爵令嬢は、事件捜査のプロフェッショナルだって聞いてますし、ほんとに助かります~。」


となりで、赤茶色のもじゃもじゃが嬉しそうにそう言った。


「まぁ、本人は、家で本でも読んでるんでしょうけど。」


お嬢様は、渋々メルドさんの依頼を受けると、

「私はバターケーキを買って帰るから、お前は美術館にでも行ってこい」

とか言って、俺を置いてさっさと帰ってしまったのである。

残された俺は、ニコニコのメルドさんと美術館に来ている。


えーっと、お嬢様のいつもの確認メモによると…


「まずは、美術館のセキュリティの確認ですよね?」


そうそう、1にはそう書いてあるって…

え?この人、メモ見てないよね?

何で知ってんの?

メルドさんの方を見ると、すっごいニコニコである。


「そうですね。えっと、警備をしている憲兵の方にお話しを伺えると。」

「承知しました~。」


と、言うことで、こちらは警備を担当してる憲兵さんの休憩所。

王宮の警備兵団とは違って、憲兵はもっとこう、何と言うか、お嬢様に言わせると、非機能的と言う感じの制服で、もふもふの縦長の黒い帽子に赤いジャケット、黒いズボンの横には赤いラインが入っていて、かなり目立つ制服なのだ。

かっこいいから、男子の憧れだったりもする。

休憩所にいる憲兵さんたちは、みんな特徴的な黒い帽子を脱いでくつろいでいた。


「警備は、敷地の出入り口に必ず2人立ってるよ。」

「敷地への出入り口って、美術館をぐるっと囲っている塀の出入り口ってことですか?」

「そうだよ。東西南北に各一か所、門があるから。それと、美術館の建物への裏側の搬入口な。あとは、セキュリティチェックのために、正面の入り口。多めに4~5人は配置してるけど、人数は曜日によるな。」


ふーん。


「閉館時間はどうしてるんですか?」

「塀の全ての出入り口に、鎖を巻いて南京錠をかけてる。鍵がかかっているかどうかは、夜勤の警備担当がチェックすることになってて、記録とってるよ。ほら。」

そう言って、話をしてくれた憲兵さん、アダムさんはファイルを渡してくれた。

中を見ると、表に日付と名前、それに時間が書かれている。


「夜間も警備してるんですね。」

「あぁ。かなり高価なものもあるからなぁ。」


うーん。夜中に潜んで、盗み出すのは難しそうだけど。

警備の人が犯人とかだったら、可能なのかな?

なんか元スタッフが…とかお嬢様も言ってたし?


「最近、退職された方とかいらっしゃいます?」

「いや?っていうか、知らないな。ここは定期的に人員配置変わるから。希望でここに長くいる奴もいるけど、せっかく憲兵になったからには、もっとやりがいがあるとこに配置されたいって奴の方が多いしな。」


そう言うもんかー。

ってことは、

「退職者は、軍本部に確認する必要があるってことですね~。」


心の声を代弁されてしまった。

メルドさんの言葉に、憲兵さんは腕を組んで頷いた。


「あの、閉館時の出入りの記録とかあったりしますか?」

俺の質問に、メルドさんが答えた。


「あ、必ず記録を残してますよ、人も、物も。」

「人の方はこっちで管理してるけど、物の方はこっちでリストをチェックした後、美術館のスタッフに渡しちまうから。」

「こっちで保管してますよ~。」


憲兵さんの言葉を引き継いで、メルドさんが答えた。

じゃあ、その記録を借りていくかなー。

お嬢様に見てもらおう。


「ちなみに、『微笑む女』がなくなったのには、憲兵の皆さんも気づかなかったんですか?」

俺の質問に、憲兵のアダムさんはちょっと嫌そうな顔をした。

攻めてるわけじゃないけど、そう聞こえる質問だもんな…


「いや、ちょうど特別展だとかで、他の展示を奥にしまったり、移動させたりしてたからなぁ。飾られてなくても、そのせいだとしか思わなかっただろうし。最後に絵を見たってやつは、夜勤で金曜に見回った時にはあったって言ってたよ。」

「そうですか。」

「ね。僕が言った通り、先週にはちゃんとあったんですよ。」


俺たちはいろいろ教えてくれたアダムさんにお礼を言って、スタッフオンリーの美術館の裏側、スタッフ用通路を通って美術品の修繕や保管をしている場所に来た。


物の出入りの記録はこの先のスタッフ用の事務室に保管されているらしい。

しかし、裏側通るの新鮮だなー。

なんか、秘密の通路感があってわくわくする。

それに、美術館の職員って普段何してんだろって思ってたけど、こうやって美術品をきれいにしたり、いろいろやってるんだなぁ。


「こちらです。」

メルドさんはスタッフ用事務室へ俺を案内してくれた。


部屋の中には執務用の机がいくつか並んでいて、壁に沿って棚が置かれている。その棚にはファイルがびっしり保管されていた。

メルドさんが、背表紙を確認しながらいくつかファイルの中を見て、うーんだの、これじゃないなぁだの言っているのを横目で見ながら、部屋の中を確認する。

この部屋のさらに奥に部屋があるようで、木製の扉があった。

結構立派な感じ。奥は館長室とかなのかもしれない。


「あ、これですね~。」

間延びしたセリフと共に、メルドさんはこちらにファイルを持って来てくれた。

お礼を言ってファイルを受け取って中身を確認する。


えーっと?

これは、日付順で記録されてるのかー。

『微笑む女』がいつ搬入された、とかは一つ一つ見ないとわかんないのか。


「これには、展示や修繕についての記録も書かれていますか?」

俺の質問に、メルドさんは丸眼鏡をくいッと上げて

「いえ、それは所蔵品目録に記録してますね。」

と答えた。

「そちらも、お借りできますか?」


メルドさんはうーんと考えてから

「館長の許可をとらないとちょっと…。目録なので。」

と申し訳なさそうに言った。


まぁ、そっかー。

うーん…


「『微笑む女』の記録だけメモさせていただくことは?」

「あ、それなら大丈夫です!」


よし。お嬢様に情報足りないとか言われなくて済みそうだ。


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