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第五節 捜査一日目 ②依頼


「あ、あれ?あなたは…」


あ、気づかれた。

見覚えあるもじゃもじゃ、王立美術館の学芸員のアーディス・メルドさんだよね?

あんな盛大なため息ついてる理由なんて明白じゃん。


絶対…


「この前、『微笑む女』がないのを発見してくださった、お嬢様ですよね?」


お嬢様は、彼の方を向いた。

む、無表情だ。


「人違いでは?」


いや、無理あるよ。

お嬢様、容姿も目立つし、無理あるのよ。


「いや、絶対そうですよね?何でこんなところにいらっしゃるんですか?」


はぁーーーー

と、今度はお嬢様がこれ見よがしに盛大なため息をついた。


「この前の美術館の特別展で興味を持っただけだ。それより、貴殿は声が大きすぎる。場にそぐわないので、我々はこれで失礼する。」


と、小声で言ったお嬢様は、くるっと出口を向いた。


「ま、待ってください!」


場にそぐわないって言われたばっかりなのに、メルドさんは大きい声でお嬢様を呼び止め、立ち上がった。


お嬢様は視線だけで、不機嫌さをこれでもかと醸し出している。

すごい。

メルドさんもやばって顔になってる。


「あ、す、すみません。良ければ、話を聞いていただきたくて。あの、ブラックモア侯爵令嬢は謎解きが得意と聞いたので…」


あーこのパターン。

すごい。お嬢様の顔が、ものすごい無表情に。

嫌な時ほど無表情になるんだよなー。


「あの、近くのカフェでお話でもどうでしょうか?」


メルドさんが極めて小声で言った言葉に、お嬢様は肩眉をピクリと動かした。


―――――――――――――――――――――――


結論、お嬢様はお菓子に弱い。


カフェにつられてのこのこついて来て、また面倒に巻き込まれるんだなぁ。


「それで、絵がなくなったのは僕の管理が悪かったからだと、言われてしまって…。」

「まったくもって、その通りでは?」

「このままじゃ、せっかく見つけた職が…首になっちゃいますよぉ。」

「そうか。」


お嬢様、割とちゃんと返事してくれてるんだよなぁ。

メルドさんは何にも聞いてないっぽいけど。


「助けてください! 絵が見つからないと、首になちゃう。そうしたら、僕は…僕は…路頭に迷って…死んじゃうんだぁぁぁ。」


非常に迷惑そうな顔で、お嬢様はメルドさんを見ていた。

はぁ、と短いため息をついて、お嬢様は口を開く。


「どうやって探すんだ?貴殿の話では、いつから絵がなかったのかも、わからないんだろう。貴殿の、とは言わないが、完全に美術館の管理がずさんなのが原因だ。」

「いや、先週はちゃんとあったんですよ。僕、ちゃんと週に1回は美術品の点検をしてまして、その時には確かにあったんです。」

「あのー、口をはさんで申し訳ないんですけど。そもそも、王子殿下とそのご婚約者が来る前に、点検しなかったんですか?」


俺の言葉に、メルドさんは固まった。


「そ、それは…」


それは?


「特別展の方の準備が…忙しくてぇ…」

「手が回っていなかったと。」


あーあ。メルドさん、何か小さくなっちゃってるよ。

何か、かわいそうではあるなー。

メルドさん、新人さんならしいし。


「お嬢様、何かとなりませんかねぇ?」


俺がそう言うと、メルドさんはパッと顔を上げた。


すごい期待のまなざし。目がキラキラしてるよ。

お嬢様は…そんな嫌そうな顔して。


お嬢様、元々事件に関わるのを好んでたわけじゃないけど、ハロッズ事件の後からは前にもまして、事件に関係するのを拒んでるんだよなぁ。


お嬢様は嫌そう―な顔で、メルドさんをちらっと見た後、はぁと小さなため息をついた。


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