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第二十九節 エピローグ


「こんにちは。」


「こんにちは?」


少女の挨拶に、庭の丘にシートを広げて座っていた少年は、首をコテンと傾けて応じた。


「数日ぶりだが、元気そうで何よりだ。」

「今日は、お腹すいてない?」


少年の問いに少女は苦笑する。


「ご一緒しても?」


少女の問いに、少し移動してスペースを開けると、少年は

「どうぞ。」

と、嬉しそうに応えた。


座りながら少女は尋ねる。


「キャラメルをおばあ様と配ったと言っていたな。チャリティーのイベントで。」

「うん。」


「特別な『当たり』を入れたって?」

「うん。」


「『当たり』には何が入っていたんだ?」

「ナッツだよ。あのビニールハウスの中でとれるの。」


少女は少年が示した方に視線を向けると、遠目にビニールハウスが見えた。

少女は少年の方に視線を戻して

「そうか…。」

と応えると、少年も

「うん。」

と応じた。


少女は少年から少し視線を外し、芝に敷かれたシートをじっと見たあと、少年に質問した。


「おばあ様には、特別なキャラメルのことを言ったのか?」

「うん。」


顔を少女に向けて、少年が応えた。


「おばあ様に一つあげたから。」


「そうか。」

そう短く応じた少女は、

「どうして、そのナッツを?」

と聞いた。


「ビニールハウスによくいるおじさんが言ってたの。絶対に食べちゃダメって。おじさんはそのナッツで、大事なお薬を作ってるんだって。そのお薬、凄く苦いんだって。僕、味がわかんないから。食べたらどうなるのか、他の人に食べてもらおうと思って…」


「どうなるか、わかったか?」

「わかんなかった。みんな、すぐにキャラメル、食べてくれなかったから。」


少女は少年を無表情に見ていた。


「どうなるか、知ってる?」

「苦しんで、死ぬんだ。」

「あの男の人みたいに?」


少女はコクリと頷いた。


「そっかぁ。それって、かわいそうだったかな?」

「かわいそうだろうな。」

「ふーん。」


視線を下にして、投げ出した足をゆらゆらしながら少年は続けた。


「じゃあ、僕と一緒だね。僕もかわいそうなんだって。みんな言うんだー。僕ができない子だから。だから、特別な学校に行くんだって。」


しばらく少年の顔を考えるように見つめていた少女は、瞳を細めて、優しく微笑むと、少年の頬を両手で包んだ。

少女の瞳は日差しを受けて琥珀色に輝いていた。


「お前は、かわいそうなんかじゃない。

かわいそうなのは――お前をかわいそうだと言う者たちの方だ。」


少女の瞳はきらめきを増していた。


「だが、学ばねばならないな。良いこと、悪いこと、いろんなことを。」


少女の瞳をじっと見つめていた少年は、少女に尋ねた。


「そしたら…美味しいっていうの、分かるようになる?」


少女はふっと笑って応えた。


「きっとな。」


少女の言葉に、少年は嬉しそうに微笑んだ。


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