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第二十三節 捜査四日目 ①再びケンウッド公爵家へ


昨日、王宮から戻ってからお嬢様の機嫌がすこぶる悪い。


帰って来た時にはいっぱいに甘いものが詰め込まれた袋を抱えていて、付き合わされた護衛に同情したし、ずーーっとチョコレートばっかり飲んでるし。


おかげで、昨日の家宅捜査の話もできなかった。

寝てすっきりしたのか、急に「ケンウッド公爵家に行く」って言いだして、今はその道中、馬車の中。

やっと家宅捜査の結果を伝えられた。

ついでに、気になっていたケンウッド公爵令嬢の話もしたんだけども…


「手紙の内容はレストラードに確認しておけ。」

「珍しいですね。お嬢様がそう言う内容を気にするの。」

「推測はできるが、関係性が不明瞭だからな。知りたくはないが、致し方ない。」

「推測って?なんです?」


お嬢様は窓を眺めてぼんやり答えた。


「彼女はアッシュフォード伯爵子息のガヴァネスだったんだろう。それか、フィンチ本人の。年齢を考えれば、フィンチ本人の可能性の方が高いか。」


なるほど? そう言えば、被害者の子爵夫人はガヴァネスしてたって。

よく覚えてるなー。


「でも、その子爵夫人は反ジェントリだったって話ですよ。そしたら、貴族の子息のガヴァネスだったんじゃ?」

「医師はジェントリとは違う上流階級だ。爵位を持たずともな。」


そう言うもんなの?


「狙われたんですかね…。ウィルモット子爵夫人…。」

「どうだろうな。」

気のない返事が返ってきた。変わらずお嬢様は窓の方をボーっと眺めていた。


お嬢様、大丈夫かな。すごいボーっとして。


「それより、その子爵夫人の家は調べたんだろうな?」

「それは、今日警部が行くって言ってましたよ?」

「一緒に行って来い。」

「え?でも…間に合わないですよ。ウィルモット子爵に連絡したら、今日の朝来てくれって言われたらしいんで。」


お嬢様は俺を苦々しくにらみつけて

「なぜ言わなかった。」

とか言ってきた。


いや、あなた、昨日話聞いてくれる感じじゃなかったじゃないですかぁ。


「えーーーー。俺のせいですか?」

「まぁ、いい。」


当然だよ。


「じゃあ、ケンウッド公爵家から戻る前にヤードに寄るぞ。」


今回、お嬢様は結構やる気を出している。

いつもは家で待ってるだけで、俺にどこいけー何やれーの指示するだけなのに。


「そういえば、ケンウッド公爵令嬢の話、どう思います?」


俺はここのところずーっと気になっていた話を切り出した。


「何のことだ?」

「いや、あの変なご令嬢の話したじゃないですか。『げーむ』だの『やんでれ』だのって…。」

「あぁ、脳が理解を拒絶したので忘れていた。」


脳が理解を拒絶って…そんなことある?


「なんなんですかね?」

「わからん。」

「でも、ケンウッド公爵子息の出生の秘密っていうのは気になるんですよね。昨日のエリオット・フィンチのノートにもメモがあったし。」


お嬢様はあからさまに嫌そーな顔をした。


意外と顔に出すんだよな。


「それをこれから確認しに行くんだ。」


え?


「そうなんですか?」

「それ以外、何のためにわざわざケンウッド公爵家なんぞに行くんだ。」

「だって、一緒に拘束されてた子息の様子を見に行きたいって…」

「それは、」

「嘘だったんですか?」


お嬢様の言葉を遮って、じとーっとお嬢様を見ると

「それも理由の一つではある。嘘ではない。」

と断言した。


ふーん?


「でも、公爵家の人たち素直に話してくれますかね?」


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