第二十二節 ―――――――――――――
温かい陽射しの中、3つの人影が美しい庭を臨んでテーブルを囲んでいた。
黄金に煌めく髪に、深い青い瞳。青年に見える男とその隣に座る少年は、一目で親子だとわかるほどによく似ていた。
二人に対面するのは漆黒の髪に光の環がかかるように煌めき、それをシニヨンにまとめた、神秘的とも言えるかわいらしさの少女だった。
「お見舞いに行こうと思っていたんだけど、わざわざ来てもらってありがとう。君が無事で本当に良かったよ。」
少年が少し固い表情で口を開いた。
「いえ。急な要望に応えていただき、こちらこそ感謝申し上げる。それに、」
一度言葉を切った少女はティーカップに口をつけた後続けた。
「私のために、ご尽力下さったと父から伺った。ありがとう。」
少年は自分の顔が熱くなるがわかり、恥ずかしそうに
「いや。」
と小さく応えた。
そんな幼い見た目の二人を、細い目で眺めていた男が口を開いた。
「随分な目にあったね。ケンウッド公爵のお家騒動に巻き込まれるとは、君はある意味持っている。」
――お家騒動ね…
「本当に、災難ではありました。が、ここまで首を突っ込んでしまったからには、どうにかしたいと思っているのです。」
「君は引き際を弁えていると思っていたが。」
「ご評価に能わず申し訳ございませんが、今回の件はそうはいかない。」
少女は真っすぐに男を見据えた。
そんな少女を眩しそうに男は眺めていた。
少年は二人のやり取りを、表情を変えないよう努めて見守っていた。
「オスカー・ケンウッドは、彼は、誰の子ですか?ご存じのはずだ。」
「アルバートの子だろう。」
「アルバート・ケンウッド、現公爵の子ではないということは分かっている。ここに来る前、紋章院で確認した。彼は十年前から二年間、大陸での戦争で現地司令部に配属されていた記録がある。その期間、この国にはいなかったはずだ。 」
「だから、どうした。オスカー・ケンウッドは、戸籍上、紛れもなくアルバート・ケンウッドの息子。それが変えようのない事実だよ。」
「それほどまでに、根深いということですか?」
少女の言葉に薄い笑顔を張り付けたまま男が応えた。
「何がだ?」
「マクシミリアン・ケンウッドの貴族院での影響力が。」
男は応えない。
「彼を排除する格好の機会のはずでは?」
男は優雅に紅茶を含んだ後、少女の言葉にやっと応じた。
「知る必要のないことが、この世にはある。君は、それを学ぶ必要があるね。これは、政治的な問題の話ではないんだよ。」
――どう言うことだ?
「私から君に教えてあげられることは、マクシミリアンは亡き父王の悪友だったということ、そしてあれには悪癖があるということだけだ。直すことのできない悪癖が。」
しばらくじっと男を見ていた少女は、苦々し気に口を開いた。
「できることなら、私の将来の伴侶はそういう人間でないことを祈ります。」
少年は二人のやり取りに、不安な表情を隠せなくなっていた。
「ははっ。心配ない。」
「前にも言ったろう。ウィリアムは私に似ていると。」




