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第二十節 捜査三日目 ②誘拐犯の正体


お嬢様に、ケンウッド公爵令嬢の話をしたいんだけれども…


さっきから考え込んでるんだよなー。

うー、こういう時のお嬢様には声をかけづらいんだよ…。


そんなことを考えていると、ドアがノックされた。

誰だろ…ドアを開ける。そこには


「レストラード警部!」

「よう。邪魔するぞ。」


そう言って部屋に入って来た警部は、お嬢様を確認すると

「お嬢、大変だったな。」

と言って席に着いた。


「まぁ、災難ではあったな。」

「無事でよかったよ…本当に。」


警部の言葉に、お嬢様は気まずそうに視線をそらして、焼き菓子を口にしていた。

やっぱちょっと反省してるんだな。あれで。


「それより、」


焼き菓子を咀嚼しながら、お嬢様はレストラード警部に視線を戻した。


「ハロッズ事件の捜査状況は?進展はあったか?」


お嬢様、ハロッズ事件のことかなり気にしてるんだよなー。

自分の巻き込まれた事件以上に。


「いや、あんまりねぇけどよ…。それより、お前さん、自分の事件の方じゃねえのか? そっちも大した情報ねぇけど。」

「死んだ誘拐犯ならわかっている。」


「は?」「え?」


俺と警部は変な顔をしているに違いない。


「どういうことだよ?」「どういうことです?」


さっきから警部とハモるな。


「アッシュフォード伯爵一家毒殺事件の、死亡した被疑者の息子だろう。」


「なんで?」「えーーーーーー」


お嬢様は俺と警部を変なものを見る目で見ながら、2つ目の焼き菓子をポリポリしていた。


「お前たち、事件のたびに理由だの動機だのを気にするくせに、なぜ理解できないんだ。今回の件で、理由と動機を持っているのは一人だけだろう。」


た、確かに?

そう言えば、ケンウッド公爵令嬢も犯人の医師の息子が犯人って…言ってたな?

え?あの子のあの話、ほんとなの?


「まぁ、他に関係者がいなければの話だが。それでも、年齢、性別など人物像に一致する。間違ってはいないだろう。」

「なんで今になってこんな事件起こすんだよ。9年も経ってんだぞ?」

「9年経って、自分の父親が犯人ではない確証を得たんだろう。」

「じゃあ、誰があいつを殺したんだ?」

「わからん。が…」


一度言葉を切って、お嬢様は考えるように言葉を続けた。


「彼には私や子息に危害を加える意図はなかった。解放すると言っていたからな。我々を解放した後、逃げるつもりだったのかもしれんし、出頭するつもりだったのかもしれん。いずれにしても、彼が生きていると都合の悪い誰かがいる、それはケンウッド公爵家の関係者だ、ということしか今のところはわかっていない。」


「ケンウッド公爵家だと!」


レストラード警部が大きな声を上げた。


「冗談だろ?そんな大貴族…」

「あの、ケンウッド公爵は怪しいですよ。アッシュフォード伯爵家との関係も、隠そうとしてた感じだし。」


俺がそう言うと、警部はぎろっとこっちを見て言った。


「そういうことじゃねぇよ。犯人だったとして、手が出さねぇんだよ。あのレベルの貴族になるとな!」


そうなの?


「ヤードの管轄からは外れる。司法院が直接身柄拘束することになるが、ケンウッド公爵家は司法の頂点に長らく君臨している。前ケンウッド公爵、マクシミリアン卿などは『司法の権化』と言われるほどだ。内々に処理されて終わりだろう。」

「そんな、司法の権化ならちゃんと罪を裁いてくれるんじゃ?」


窓の方を見た後、お嬢様がぽつりとつぶやいた。


「あの男も言っていた。ケンウッド公爵家は清廉潔白などではないとな。」


「お前にいくつか頼みがある。」

少しの沈黙を破って、お嬢様はレストラード警部に顔を向けた。


「なんだ?」

「例のチャリティーイベントの参加者に、アッシュフォード伯爵家の事件の被疑者、確かフィンチと言ったか…関係者がいないか確認して欲しい。あとは、誘拐事件の犯人の家宅捜査をしろ。その時にはエドモンドも同行させろ。」

「いいけどよ…」


「それと、」


警部が続けようとした言葉をさえぎって、お嬢様は俺に顔を向けた。


「イベントの参加者リストは持っているな?」


えーっと?持って…


「あっ、あります。もらいました!」

「確認したい。」


はい、はい。


あと10話で第二章完結となります。

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