第十六節 捜査二日目 ⑤ケンウッド公爵家とアッシュフォード伯爵家
「アッシュフォード伯爵の家族構成?」
王都に戻った俺は、警部のいるヤード本部に向かった。着いた時にはもう空が暗くなり始めていた。
受付でレストラード警部をお願いすると、彼は
「どうした?」
といって割とすぐに来てくれた。
「忙しいところすみません。」
「ちょうど飯でもと思ってよ。」
ぐーーーー。
今日、朝食をとってから何も食べてないな…そう言えば。
「一緒に行くか? 腹が減っては戦はできぬ、だ。」
警部の問いに俺はコクリと頷いた。ちょっと恥ずかしい…
警部おすすめのレストランで食事をとる間、俺は気になることを警部に聞いていた。
「確か、3人家族で全員死亡のはずだ。8歳の子どもが被害者っていうのが後味も悪くてな…よく覚えてるぜ。」
「でも、屋敷にはベビーベッドがあったんですよ。夫人が妊娠してたとか、分かりませんか?」
「いや、そうだったらさらに後味悪い。悪い意味で忘れられねぇよ。」
じゃあ、あれは誰のベッドなんだろ?
「あと、ケンウッド公爵とアッシュフォード伯爵に関係があるかご存じですか?」
腕を組んでしばらく考えた後、
「被害者の夫人が、ケンウッド公爵家の娘かなんかだったはずだ。それで、判事だったケンウッド公爵が捜査にもごちゃごちゃ言ってきたって話だ。」
え?
「そんなこと、ケンウッド公爵の人たち、誰も言ってなかったですよ?」
「まぁ、そこはうろ覚えだけどよ…」
警部…貴族の家とか興味なさそうだもんな。
後で紋章印にでも確認しに行くかな。紋章印では貴族の家紋と家系図、それに出生の記録が残ってる。
そこでアッシュフォード伯爵家の方も確認しよう。
「まぁ、あれだ。なんて言うかよ、お前の追ってる事件も俺のヤマも毒殺っていうのがな。毒殺ってーのは後味悪ぃもんだ。」
「そう言えば、ハロッズ事件の捜査はどうなんですか?お手伝いできなくて申し訳ないですけど…」
警部は顔を顰めて、ステーキをガリガリと切って頬張った後、口をもぐもぐさせながら
「ぼちぼちだな。」
と呟いた。
あんまりなんだな…
申し訳ない。
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警部と別れた後、紋章印でケンウッド公爵とアッシュフォード伯爵についての資料を出してもらった。
これは一般市民には公開されてなくて、ブラックモア侯爵家の使用人だから見せてもらえるわけだ。
えーっと、まずケンウッド公爵家の家系図と。
前ケンウッド公爵、マクシミリアン・ケンウッド卿にはご子息とご令嬢が一人ずつ。ご子息が今のケンウッド公爵、アルバート卿だろう。
で、ご令嬢の方は…
あら、警部の言う通り。アッシュフォード伯爵家に嫁いでる。
何でケンウッド公爵家の人たちは、このことを教えてくれなかったんだろ?
アッシュフォード伯爵家の方も確認すると、被害者のアッシュフォード伯爵夫人は、ケンウッド公爵家出身になっていた。
自分の姉が亡くなった事件の真相のせいで、自分の息子が誘拐されてるのに。
冷静に状況を説明してくれたケンウッド公爵を思い出す。
うーん。
それに、前公爵も記録を確認してるって話だったけど、自分の娘と孫の事件を覚えてないわけ?
警部の話では、事件捜査に口出ししてたみたいだし?
詳細を確認するためってことなのかな?
うーん。
「あのー」
考え込んでいると、背後から声をかけられた。
びっくりした…
「そろそろ、閉院の時間です。」




