第十四節 捜査二日目 ④アッシュフォード伯爵の屋敷(2)
屋敷の中をブラックモア侯爵家の私兵団と一緒にくまなく探した。
結果、お嬢様は見つからなかった。
ケンウッド公爵子息もいなかった。
ここじゃなかった…
でも、捕まえたごろつきはお嬢様とケンウッド公爵子息の誘拐の実行犯だった。
グレイ殿は王都の独房にやつらを連れて行き、詳しく尋問するって言っていた。
そのため、グレイ殿と私兵団、それに旦那様は一度王都に戻るそうだ。
俺はというと、残って屋敷の捜査をすることにした。
この屋敷はアッシュフォード伯爵のお屋敷、つまり例の事件の現場だ。
何か手掛かりが見つかるかもしれない。
ということで、捜査開始だ。
まずは食堂から。
食堂には大きな暖炉があり、天井には立派なシャンデリアがある。大きなテーブルの上には燭台がいくつも置かれていて、燭台は床にも点在していた。さっきの騒ぎで倒れているものもあるけど、使われている形跡が見える。
大勢で過ごすにはちょうどよかったんだろうな。やつらはここで過ごしていたみたいだ。
でも…そのせいで事件の手がかりは期待できなさそう。テーブルと同じ仕様の立派な椅子には埃がたまっていた。
ほんとなら、ここに一番事件の手がかりが残ってたはずなのに…
仕方がないので、厨房に向かう。
毒殺事件で、毒は食事に入っていた、ということは毒が入れられたのは厨房から食堂までの動線のどこかのはずだ。
と言っても、厨房もすごい荒れ放題なんだよな。
あのごろつきどもの仕業かはわからないけど、棚は引っ掻き回されたようで、特に金目のものを漁っていきました、という感じだ。食糧庫にも何も残っていない。
9年も前じゃ、手がかりなんてないのかな…。
気を取り直して、2階の捜査だ。
2階には主寝室の他に子ども部屋だったっぽい部屋が2つと客間がいくつかあった。
あと、主人の書斎も2階にある。
まずは書斎から。
調度品は持ち出すのが面倒だったのか、そのまま残っている。
そう考えると、前の事件でサム・グリーンとロドリゲス嬢が調度品をばらしてでも処分したのは、すごい執念だったのかもしれない。
執務机の引き出しを確認する。
うーん…特に気になるものはないかなぁ。
中にはほとんど何も残っていなかった。書類がいくつか残っているけど、内容は収支報告書とかそんなのだ。
金庫は開けられてしまって、書類が床に散らばっている。
それらの書類も確認したけど、領地の権利書やらの重要書類だった。
これ、このままでいいのかなぁ。
次は子ども部屋っぽい部屋。
水色の壁紙にかこまれ、天蓋付きのベッド、それに小さな執務机が置いてある。
どれも埃が被っていてきれいではないけれど、作りはしっかりとしていて、いいものだとわかる。
被害者となった長男の部屋だろう。机の中やベッドの下を調べてみる。
ん?ベッドの下に何か落ちてるな…
はいつくばって腕を伸ばす。うーん……届いた。
埃まみれのそれは、ジンジャーマンの人形だった。
やたら固いし人形にしては薄い。中に何が入ってるんだろ。木かな?
赤ちゃんの歯が生える時に噛む人形に見える。日記とかだったら嬉しかったんだけどなー。
小さい時の思い出の人形なのかな。
さて、次はもう一つの子ども部屋…
同じように水色の壁紙にベッド。違うのは、ベッドが明らかに赤ん坊向けってことだ。
アッシュフォード伯爵夫人は妊娠してたのかな?
被害者は確か夫婦に長男の計3人だった。
この部屋は誰の部屋なんだろ?
レストラード警部にでも、アッシュフォード伯爵家の家族構成を確認した方がいいかもしれない。
この部屋にもめぼしいものはなさそうだな。
ベビーベッドを見ると、脚の部分の装飾に目が行った。
なんか…見たことあるな…。
最近どっかで……
あっ! ケンウッド公爵家だ!
たしか、屋敷の柱にも同じような装飾がされていた。ケンウッド公爵の家紋モチーフっぽい装飾。
そういう装飾は基本、他の家では使用NGで勝手に使ったりしたら、ドロドロのつぶし合いに発展しかねない。
家紋モチーフっていうのはそれくらい大事なはずなんだけど。
ケンウッド公爵、何か怪しいな。
――お兄様は出生の秘密を知って…やんでれに…
ケンウッド公爵令嬢の意味不明な話を思い出す。
あの時は、意味わからんが勝ってしまって流したけど、出生の秘密ってなんだろ?




