第十二節 捜査二日目 ②手がかり
これ以上調べようもないので、使えるものは何でも使う。そのために、王宮にやってきました。
グレイ殿に連絡して、王子殿下とも情報共有することにしたのだ。
「エドモンド、こっちだ。」
王宮の廊下を進んでいると、控えの間から声がかかった。顔を向けると、王宮警護兵団のトマス・グレイが腕を組み、こちらを見ていた。
「グレイ殿。」
名前を呼ぶと彼は頷いて周囲を見渡してから、部屋の奥へと案内してくれた。扉を閉めると、彼は険しい表情で口を開いた。
「実は、お前が連絡してきた後すぐに誘拐犯についての情報が入ったんだ。」
「本当ですか!」
すごいタイミング!
お嬢様が攫われてからすでに半日以上が経過している。このまま時間が過ぎれば、状況はさらに悪化しかねない。
「城門の監視兵から報告があったんだ。」
「城門の監視兵……?」
「そうだ。昨夜の当番兵が、王都から出て行く荷馬車の荷台の中を改めずに通行を許可したと。」
「え?」
「どうやら金を掴まされたらしいが、それがばれて処分されるのを恐れて今まで黙っていたらしい。しかし、ブラックモア侯爵家の私兵や王宮の兵士が次々に聞き込みに来るものだから、大ごとだと思って白状したようだ。中は確認しなかったが、荷台には人の気配があったそうだ。」
「それは……まさか!その荷馬車にお嬢様が乗っていた可能性があるってことですか。」
「ああ。その荷馬車と同じ特徴の荷馬車が、ブラックモア侯爵令嬢が消えた辺りでも目撃されているんだ。怪しいだろう。」
確かに怪しい。でもそうすると、お嬢様とオスカー・ケンウッド公爵子息は、すでに王都の外へ連れ去られた可能性があるってことだ。
「荷馬車の行き先は?」
「北だ。ウェイバリーの森の方面へ向かったんじゃないかと。」
ウェイバリーの森か。王都から東へ半日ほど馬を走らせた場所に広がる、人跡まばらな森林地帯。そこに向かったということは、誘拐犯たちは王都での捜索を逃れ、身を潜めようとしているってことか。
「さらに、怪しい情報を得た。最近、ウェイバリーの森近くの廃屋に、不審な男たちが出入りしているという報告がある。元は貴族の屋敷だったが、今は誰の所有でもない。」
「貴族の屋敷にですか?」
「そうだ。かつて伯爵家のものだったらしいが、当主が亡くなり、相続者もなく廃墟となったらしい。それが…例の事件があったアッシュフォード伯爵の屋敷だそうだ。」
それは、めちゃくちゃ怪しい!あたりかも!
「可能性が高そうですね。」
思わず拳を握りしめる。
「俺、行ってみます。その屋敷。場所はわかってるんですよね?教えてください。」
「一人で行って何ができる。」
グレイ殿の声は冷静だった。
でも、せっかくの手掛かりなんだ。当たりでも外れでも確認したい。
「何もできなくても、行きます!」
俺をじっと見ていたグレイ殿ははぁーっとため息をついて
「そう言うと思ったよ。だが、お前一人で乗り込むのは無謀だ。俺が同行する。」
「えっ、いいんですか?」
「どうせ俺も、お前の行動を見張るように言われていたんだ。王子殿下からな。」
「……王子殿下が?」
「まあな。本当は兵団を動かしたいところだが、まだ確信がない段階で動すことはできない。しかし、王子殿下もこの情報にかけたい思いがあったんだろう。」
そうだったんだ…。
なんか一人で意気込んでたのが恥ずかしいな…。
「ありがとうございます。では、すぐに出発しましょう。」




