第一節 プロローグ
――どうしてこんなことに…。
薄暗い部屋の中、ランプが一つだけ静かに灯っていた。手入れのされていないその部屋はひどく埃っぽく、かすかな光が浮かび上がらせる影の中に異様な静けさが漂っていた。
男は、ランプに照らされた小さな影をじっと見ていた。影は、何事もなかったかのように行儀良く座り、淡々とパンを頬張っている。
それは、男がぞんざいに汚れた床に放り投げたものだ。
それでも、少女は自由の利く方の手でそれを拾い、ためらいもなく口に運ぶ。
少女の瞳はランプの光に揺れて、オレンジ色にまたたいていた。
冷たい瞳が、何かを計っているかのように不気味に動く。
彼女の右側には、小さな体が丸くなって座っていた。ときおり身じろぎをするように、微かに動いている。
そして、左側には――。
汚物を吐き出し、無様に横たわる男がいた。彼はピクリとも動かない。
――正気の沙汰ではない。
「あいにくと、死体と一緒に食事をするのは、非日常ではなかったものでな。空腹を前に、気にしている余裕はない。」
男の視線に気づいたのか、少女はゆっくりと口元を歪め、穏やかに笑いながら言った。
黄昏色に光る瞳が、妖しく弧を描いていた。




