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第二節 事件(1)


「お嬢様。大丈夫なんですか? こんなところウロウロして。」


「問題ないだろう。特に立ち入りを禁止された場所の説明はうけていない。」


「そう言っても、お茶会に戻った方がいいんじゃないですかねぇ。」

「お前は、こんな年端も行かない少女を並べて、品評会のように品定めするような場所に戻れと言っているのか? 私に?」


うぅ…


俺、ことエドモンド・アンリは、すんごい眼力で俺に圧をかけていらっしゃるこちらのご令嬢、シェヘラザード・ブラックモア侯爵令嬢の従者です。

ブラックモア家は代々、国の外交に秀でて国を支えてきたお家柄で、こちらのお嬢様はそのブラックモア侯爵家唯一のご令嬢なんだけど…


「でも、王子殿下主催のお茶会に招待されて、参加しないのはまずいですよ。色々と。」


「参加しただろう? きちんと王子には挨拶もしたし、責任は果たしたはずだ。」

そう言って、お嬢様はすたすたと歩き始めた。


はぁ。まじかぁ。


今日、お嬢様はこの国、アルビオン王国の第一王子であるウィリアム殿下主催のお茶会に招待されて、王宮に来ている。それを抜け出して、王宮を自由に散策していらっしゃるのわけで…


王宮の奥まった場所にある小さな庭園には、整然と手入れされた美しい花壇に、色とりどりのバラが咲き誇っている。俺の前を歩く小さな頭を見つめながら、ため息をつきつつ後をついて歩く。


そんな俺の心の声など知らない彼女は、庭園に点在する古い彫像の一つの前で足を止めた。


「素晴らしいな。見ろ。まるでサモトラケのニケのようだ。」


サモトラ家のニケって誰だよ。


「実物を見たことはないが、資料で見ただけでも神秘的な美しさだった。ここの良いところは、これまで見れなかったものを見ることができるということだな。まぁ、同じものではないが。」


「お嬢様――。俺のこともちょっとは考えてくださいよ。怒られるの俺ですよ。まじで!」


わけわかんないことを言ってるお嬢様に懇願するも、普通に無視される。


「侯爵様にもしっかりアピールするように言われてたじゃないですか。」


「冗談じゃないな。せっかくだから、今回は自由に生きると決めている。また勝手に知らん人間に嫁がされるなんてごめんだ。」


またって何? あなた今7歳でしょ? その年で誰に嫁いだんだよ。


お嬢様はこんな感じでわけわかんないことを言うのである。俺がお嬢様と出会った時にはもうこんな変な子だった。


はぁー。何度目かわからないため息をついた時だった。


「きゃーーーーーーーーー」


突然、遠くから悲鳴が聞こえた。


なんだ? あたりを見回しても、俺とお嬢様以外に人はいない。


「あちらの棟からだな。」


お嬢様が顎で庭園に面している一つの棟を指した。


「行ってみましょう。」


「行ってらっしゃい。」


「え? お嬢様も行くんですよ。」


「なぜ? 気になるなら一人で行け。私はここを散策して待っているから、心配するな。」


「いや…お嬢様を一人にするわけにはいかないじゃないですか!」


そんなやり取りをすること数分、結局お嬢様は一緒に来てくれなかった。お嬢様なら大丈夫だろうけど、「それなら行くのやめようかなー」と言ったら、「気になるなら行け!」と言われて、結局来てしまった。お嬢様とのやりとりでかなり時間をロスした。


棟の入り口、重厚な木製の扉の前で考える。

勝手に入って大丈夫かな。でも、ここまで来てちゃんと確認しないで帰ったら、お嬢様の冷ややかな視線とネチネチとした小言に耐えなきゃいけなくなりそうだしなぁ。

そもそも、何で誰もいないの?

普通、兵士のひとりでも警備してるもんじゃないの?


おそるおそる、重たい扉を押すと、普通に開いた。

そのまま棟の中に入る。すると、正面にそびえ立つ壮麗な中央階段が目に飛び込んできた。窓からさす光以外に明かりはないので、すんごく薄暗い。

日中でこれなら、夜は相当怖いな。


「誰かいますか――――。」


自分の声が石の壁に吸収されるようにすぅーっと消えた。

反響もしないし、返事もない。

「二階に行ってみますか…」


意を決して、二階に上がる。

二階に上がると、長い廊下が階段を中心に左右に伸びてた。小さくたくさん開いている穴のような窓から光がさしているけど、薄暗い。


「誰か、いますかねぇ…」


とりあえず、確認するしかない。右と左、どっちから行こうか…


『こういう時は右に行くと決まっている。』


前に聞いたお嬢様の変なルールを思い出して、とりあえず右に進む。

一つのドアの前で立ち止まると、ドアには大きな鉄製の南京錠がついていた。外から鍵がかかっていて、部屋に入れないようされている。ドアをノックしてみたけど、返事がない。


なんか怖くなってきた。

これ、誰もいなかったら、あの悲鳴はって話になるじゃん?


その時。



「失礼ですが、こちらで何を?」


しわがれた声が背後から聞こえた。


「ぎゃーーーー!」


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