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第十五節 ―――――――――――


「必ず、生きて帰ってきます。」


そう言った男の顔を思い出すことができない。

顔も思い出せないのに、こうして未練がましく何度も夢に見るのはなぜだろうか。


これが夢だと知っている。

遠い記憶の夢だ。


そして、夢の行きつく先は…


よく晴れた夏の日。


雲一つない澄んだ青い空。


焼けるように熱いのに、体の芯が冷えて寒くて仕方がない。


馬車の揺れで目が覚める。


馬車からは異国の街並みが見える。

レンガつくりの家屋など、私の国では横浜くらいでしか見なかった。

この風景に慣れる日は来ないだろう。


夢を見た後はひどく喉が渇く。

渇いて、渇いて、仕方がない。


彼は約束通り生きて戻ってきたのだろうか。

そうだったとして、何だと言うのか。


私は約束を果たすことはできなかった。

結果が変わっていても、合わす顔もないし、会うこともなかっただろう。


もう一度、目を瞑る。


「必ず、生きて戻ってきます。」


やはり顔を思い出すことはできない。


「愛とは、なんだろうな…」


先ほどの男を思い出す。

彼が愛しているのは自分自身だろう。


きっと、私のことを世間知らずで、苦労も知らない箱入り娘だと思っていることだろう。

女の身とは生きづらいものだ。

この世界でも、前でも。

男と言うのは、女は結婚すればなんの苦労もないとでも思っているんだろうか。


次男で家督も爵位も継ぐことができないからといって、人の孤独を食い物にしていいものか。


だが、わからないものだ。


「本当に利用していたのは、どちらだったのか…」


やはり、王妃など望む位ではない。


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