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赤い糸が見える女

作者: うずらの卵。

私は富子、高校二年生でごくごく普通の女の子。

でも、一つだけ他の人と違う所が有るの。

それは10歳の頃から赤い糸が見えるの。

人の小指の先に赤い糸が巻き付いていて、

その赤い糸の先が長過ぎて見えない人、

途中で切れてる人、両親のように小指にお互い繋がった赤い糸が巻き付いてたりする人。

でも、私の小指の赤い糸は見えないんだけどね。

幼い頃の私は皆が赤い糸が見えてると思って、

両親に聞いたけど、両親は見えないって言うし、私の事をロマンチストな子だねとか言うの。

一緒に暮らしているお婆ちゃんに言うと、

その事は他の人には言っちゃいけないよと言われた。

お婆ちゃんも昔は見えてたけど、私が10歳になった時に見えなくなったんだって。

お婆ちゃんの家系でたまに赤い糸が見える人が出るんだそうだけど、見える力が私に引き継がれたから、お婆ちゃんは見えなくなったらしい。

そして、その赤い糸は見える者だけが切る事が出来るんだって、悪魔の鋏と呼ばれ代々引き継がれるのだけど、その鋏は決して使っては駄目で、使うと悪魔が出て来て使った人に罰を与えるとか。

私が10歳の誕生日にお婆ちゃんから桐の箱を貰ったの。

それが、悪魔の鋏だった。

お婆ちゃんは決して使ってはならない。時が来るまで大切に仕舞っておきなさいと。

その時は意味が解らず、こんな物貰っても嬉しくないと思ってたけど、

お婆ちゃんの真剣な顔を見て取り敢えずその時は受け取っておいた。

そして、高校に上がる頃お婆ちゃんは天国に召されたのだ。

時が来るまでとは、きっと私の力が子孫に受け継がれるまでだと今は解った気がする。

高校二年生に上がってから、私は彼氏が出来たの。

彼氏の名前は勇二、野球部のキャプテンでとてもイケメン。

そんな勇二に告白されて私は天にも昇る気持ちだった。

だって密かに憧れていたから。

きっと私の赤い糸は勇二と繋がっていると確信していた。

でも、勇二の小指の赤い糸は何故か私の小指の方を向いてなく、先が長過ぎて見えなかったの。

そして、日曜日勇二とデートに出掛ける事になった。

私はお洒落して待ち合わせの駅前に行くと、

勇二が知らない女の子と話をしていたのだ。

私が行くと勇二は笑顔で、その女の子を紹介してくれた。

その女の子も私達と同じ年で、勇二が中学の時のクラスメイトで名前は葵、偶然会ったそうだ。

ふと、二人の小指を見ると何と赤い糸がお互いの小指に繋がって一本になっていたのだ。

私は青ざめて足が震えてその場に立っているのがやっとだった。

そして、二人に背を向けて走り出した。

後ろから勇二の声が聞こえたけど、

振り返らなかった。

家に帰り部屋に駆け込み、ベッドに潜り込み泣いた。

そして、私はふと思い出し押入れから桐の箱を取り出したのだ。

今の私の頭の中には葵への憎しみしかなかった。

勇二と私が結ばれるはずだったのに、

何で…何で…途中から葵という女が割り込むの?何で赤い糸は二人の小指で繋がってるの?

切ってやる、切ってやる、赤い糸を切ってやる。

すると、桐の箱の中から低い声が聞こえたのだ。

「ワシの出番かぁー切れー切れー」と。

私は桐の箱を開けて中から鋏を取り出した。

黒光する鋏が私を見つめていた。

私は月曜日に勇二の小指の赤い糸を切ろうと鋏を鞄に入れた。

そして、その夜私は夢を見た。

亡くなったお婆ちゃんが無言で私の前に座っており、顔は怒りに満ちており目からは涙が流れていたのだ。

私はハッとして飛び起きた。

お婆ちゃんは私のしようとする事を怒っている。そして悲しんでいると。

私はお婆ちゃんの言い付けを破ろうとしていたのだ。

勇二の事を愛するあまりに、悪魔の誘惑に乗る所だったのだ。

何故か私は急に怖くなり、鞄から鋏を取り出し押入れに仕舞った。

その後、勇二は部活が忙しくて中々会えず自然に高校卒業と共に疎遠になった。

私は会社に就職して職場で知り合った男性と21歳で結婚した。

そして女の子を出産したのだ。

今思えば、あの時鋏で赤い糸を切っていたら、

今の夫とも、産まれたばかりのこの子とも巡り会えなかったのかもしれないと思うと、

お婆ちゃんに心から感謝した。

お婆ちゃん有難う、私はとても今幸せです。

ただ一つだけ心配なのは、この子に私の赤い糸が見える力が受け継がれたら、

もし赤い糸を故意に切ってしまったら、

私はあの鋏をこの子に渡す日が来ない事を心から願うしかなかった。





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