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内幕

話はフタバが城へやってくる前に巻き戻る。


「陛下、よろしいのですか?」


そこ……、王、イエナガの執務室にはイエナガと側近のヨシヒデがいた。ヨシヒデは眼鏡をかけた細身の男で、体格のいいイエナガと並ぶと余計にほっそりとして見える。

重厚な木の机を挟んで二人は向かい合っていた。


「いいんじゃねえか?こんな美男子ならあいつだって気に入るだろ。隠密からの話を聞くと性格も悪くないみたいだしな」


イエナガはこれからフタバに渡す予定の婚約相手の絵姿を広げており、そこにはあの薬草を探していた青年が描かれていた。

そう、フタバに結婚を申し込んだのはフタバの『心当たり』通り、彼だったのである。

絵姿を再び丸めて机に置いたイエナガに、ヨシヒデは首を振る。


「違いますよ。フタバ様を国外に出していいのかと聞いてるんです。あの方のスキルは我が国にとってかなり有益でしょう?」

「そうだな。王の血縁者な上に、貴重な薬草を増やし放題、非合法な薬の材料も生やし放題ときたもんだ。あいつの力を知ったらあらゆるところが欲しがるだろうな」

「それはそうでしょう。けれど、そのためにあなたの婚約者にしてスキルは秘密にさせていたのでは?」

「そうだな、俺の婚約者として保護してたわけだ」

「ならなぜ今さらになって?」

「それが最善だったから」

「……スキルですか」


イエナガにもフタバと同様に特殊なスキルがあった。

それは予知。しかし自由自在に未来が見えるわけでなく、彼が見えるのは自分にとって最も良い未来だけ。

昔、それこそイエナガがフタバの婚約者になる前。スキルを使った彼には、年頃の娘になったフタバと金髪の青年が笑い合う姿が見えていたのだ。当然ながら、その青年は自国の人間の風貌ではない。

イエナガは最善の未来を実現するため、自分がフタバと婚約することで彼女がその相手以外と結ばれないようにした。十八まで結婚相手が現れなかったら結婚すると言ったのは、婚約解消する時のための保険で、』年齢を指定していたのは予知で見たフタバが十八に届いていなかったからだ。ミズキ王国では十八を境に女性の服装が変わるので、ある程度推測が出来たのだ。

だから、もしもフタバが王との婚約に乗り気でなく自ら縁談を潰さなくとも、イエナガの手によってなかったことにされていただろう。なぜならそれが最善なのだから。

ヨシヒデは恐ろしいと思いつつも、それを咎めることはしない。イエナガの最善を視る力は今のところ正確かつ有益で、何度も国を助けていて信用に足るものがあった。


「それで?お前、何か用事があったんだろ?なんだ?」

「国際指名手配犯のお知らせに参りました」

「おいおい、物騒だなあ。何をやらかしんだんだ、そいつは」

「スキルを使って他人を服従させていたようです。何があったかはわかりませんが、突然スキルが解けて被害者が警邏に駆け込んだことで発覚したようですよ」


その男の似顔絵だと差し出された紙をイエナガが広げると、そこにはフタバが海に落とした男が描かれていた。

この男には服従のスキルがあり、他人を従者としてタダ働きさせたりするなど好き放題やっていた。ただ、そのスキルには服従させる相手には命令しかしてはいけないという条件があり、男はフタバに突き落とされた時に『助けてくれ!』とお願いをしてしまったがため、スキルは解けてしまったのである。


「失礼します。フタバ様がいらっしゃいました」

「お、来たか」


扉の外からメイドに声をかけられて、似顔絵を机に置いてイエナガは立ち上がる。そして、数歩進んで


「おっと、忘れてた」


机の上の丸まった紙を取る。そう、先ほどの指名手配犯の似顔絵の方を。


簡単な話だ、イエナガがフタバに渡す方を取り違えたのである。




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