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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第95話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「さて、これは……悩むな」


 銭湯から帰って来て厳選した缶詰を不透明なゴミ袋に入れてリサイクルタワーに大量投入した結果、俺の緑の壁に変化が現れたんだけど、どうやら缶詰を入れ過ぎた様で聞いていた話と違う変化が発生している。


「選択肢は三つか」


 過剰供給による選択肢の増加と言う思わぬ結果を表示している緑の壁。


 よく血みどろになる折り畳み椅子に座りながら見詰める先で悩ましい選択肢がゆっくりと点滅している。選択肢は多ければ多いほどに悩む物で、説明が無ければよけに悩んでしまう。


「まぁ二択でも三択でも悩むもんは悩むな」


 悩むのは変わらなくても、無駄に色々考えてしまってもう小一時間ほど同じ態勢で悩んでいる気がする。あまり体にもよくないので立ち上がると俺の動きに合わせて移動する緑の壁。そこに映し出される選択肢は、魚の缶詰と肉の缶詰と缶ジュースの三つ。


「魚か肉か缶ジュース」


 それ以外に何の説明も無く一つ選べと迫ってくる緑の壁、どこを触っても詳細な説明は無く、ただ選べと迫って来るのは中々にストレスである。しかもこの表示のまま購入画面にも恩恵の確認画面にも移行できないのだから困った。


「参考資料がない所が嫌らしい……」


 魚を選べば魚の缶詰が買えるようになるんだろうけど、どんな商品がEマーケットに増えるか分からないのだ。俺のおにぎりは種類がいくつか分かれている仕様だけど、缶詰も同じとは限らない。むしろ店長みたいにお茶一種類で紅茶も緑茶もウーロン茶も出る仕様の可能性も高い。ちょっとした闇鍋ガチャである。


 でも店員さんの言っていた話は正しい事が分かった。そしてより多く投入することで選択肢も増えると言う新事実も判明したのは大きい。


「これって、ダイナマイトを大量にリサイクルしたら、ダイナマイトも売りに出されるのだろうか……」


 特定の物が欲しければそればかり入れたら良いとなれば、今も大量に余っているダイナマイトもと、思ってしまうがそう簡単な話ではないだろう。


「今のところそんな話は聞かないし……。基本生活必需品なんだよな」


 店長の話を聞いてから、ネットやTを使って情報を集めて見たら結構似たような話が聞かれたが、それは大体生活必需品や生活雑貨くらいなもので、武器や兵器が出たと言う話は聞かない。


 国が情報統制している可能性もあるけど、正直銃弾買えるよりおにぎりとお茶の方が有り難がられるのが今の日本である。いくら化物が現れて大変だと言ってもそこは変わらない様だ。


「……これってEマーケットのシステムとリサイクルタワーのシステムは連携してるって事なんだよな。受け入れてしまっているが、不思議な話だ」


 不思議だなと思えばどこまでも考え込んでしまうけど、ネットから聞こえてくる声は使えればそれで良いと言う声が大半である。あまり悩んでも仕方ないが、不思議なEマーケットのシステム。どこかに説明書でもあれば是非とも読んでみたい。


 とりあえず今知りたいのは、この缶詰のラインナップが闇鍋ガチャなのか、商品がいくつか用意されているかについてである。


「これは肉にするのが一番か、いやジュースなら野菜とか果物とかもある可能性が」


 健康的な生活大事、姉ちゃんの料理食べて食事の重要性を再認識した今だとより悩む。


 魚の缶詰はシュール缶バッタで手に入るのがとてもおいしいので良いとして、なら肉を選べばいいかと言えばそうでもない。何故なら健康を考えた時に魚も肉もタンパク質である。満遍なく健康的に栄養を取るなら、可能性を信じて缶ジュースを選んだ方が賢い。


「健康かおかずのバリエーションか……ぐぬぬ」


 何の説明もないから最悪缶ジュースが栄養的に糖分だけみたいなこともあり得る。そうなって来ると心の栄養を考えてタンパク源のバリエーションを増やしたいところ。たとえそれがコンビーフだけとか、焼き鳥缶だけであっても食卓は華やかになると言うものだ。


「運に任せよう」


 これ以上悩んでも時間を無駄にしそうなので財布の中から五円玉を取り出して穴を覗く。穴の向こうにはいつもと変わらない石の床が見える……このホールって何年ものなんだろう。


 悩みすぎて頭がおかしくなって来たのかどうでもいい事を考えてしまったけど、とりあえず五円側を肉にするか、どっちになっても嬉しくはあるんだろう。二個選択だったらこんなに悩む必要も無く小躍りするくらいには嬉しかっただろうに……。


 宙で五円玉が回転して、重力に従って手の平に落ちる。


「……缶ジュース」


 昭和27年、ずいぶん古い五円玉だな……記念に取っておこう。今日からお前は缶ジュース記念の五円玉だ。


 缶ジュースか、指で突けば本当に缶ジュースで良いか聞いてくる緑の壁、こういう所は親切仕様である。


「さて、品ぞろえは……シンプル!?」


 親切設計のEマーケットに増えた缶ジュースのタブ、開けばそこには炭酸ジュースとミックスジュースの二種類だけ、値段は1個50Eとおにぎりや水と変わらない。普通のスライムキューブ10個分であるが、果たしてそれだけの価値がある缶ジュースが出るのだろうか、心配になってくる。


「これは、運要素が強いのでは?」


 どこをどう調べてもそれ以上の情報は見当たらない。ネットスーパーならもっと絵とか写真があっていい所だが、残念なことにEマーケットは文字だけである。


「店長じゃないけど、試したくなるな」


 そんな不安を他所に指は勝手に動いて炭酸ジュースを選択して行く。


「Eマネーも増えたし、行くか……十連ガチャ」


 そして数量は10個、最近のソシャゲなら十連特典で一回無料とか付いてくるところだけどそんな事も無く。緑の壁の購入をつつけば一個ずつ缶ジュースが現れ手の中に落ちてくる。掴み損ねたら炭酸だから大変な事になりそうだ。


「なんと言う……パチモン感」


 どこかで見たことある様な赤いデザインや青いデザイン、とてもスパイシーな炭酸ジュースが入ってそうである。名前はスパイスジュースらしい、何が入っているか不明だけどカロリー表記などはちゃんと書いてあるようだ。と言うか、ビタミンCが妙に多い。


「次は、ミックスジュースで」


 体は自然と十連ガチャを求めている。


「商品名シンプル!? 当たってるのか? 外れてるのか? ……わからん」


 野菜ミックスジュースα! 野菜ミックスジュースβ! 野菜ミックスジュースγ! 全く内容が分からない!! 手抜きにもほどがある。あとは果物の100%ジュースだ。


 これは、もっと引かないと当たりなのかどうかも分からない。


「わからんが、正直ドロップ缶詰めの方が豪華そうだ。魚を選ばなくて良かったのか、いやもしかしたら魚はいい物が出やすかったり……くっ! シュレディンガーめ」


 開けてみないと何も分からないとかなんて不親切、いやそれよりも、このEマーケットガチャは確率が不明、ガイドラインの無い世界線の産物だった……。


「まぁ……美味いので良しとしよう」


 試しに飲んでみたコーラっぽい炭酸スパイスジュースはそれっぽい味でおいしかった。ただ、サイズが小さい。一本250ミリリットルがデフォの様で全部同じサイズである。


 ミックスの山からも適当に一本手に取る……100%バナナジュース。


「バナナ100%ジュースなんて初めて飲んだな」


 美味しかった。普通にすっきりした甘さのバナナ味のジュースである。嫌いじゃない。





「黒スライムの時間だ」


 本日朝の一杯ガチャは黒いデザインの炭酸スパイスジュース、すっきりした甘味で美味しかったけど、カロリーがゼロだった。黒スライムと戦うのにカロリーが無いのは頂けない。


「地下道で黒とか完全に保護色だよな」


 狩りの相手に合わせたか知らないけど、スライムと同じくらい黒いデザインのジュース缶。地下道にポイ捨てしようものなら誰か躓いて怪我しかねない。ちゃんとゴミ箱に入れて来た。


「音は…………特になし」


 黒スライムエリアの目印である巨大クレーターを越えたので、もう出て来てもおかしくはないけど気配を感じない。


「ライトで照らすしかないか」


 あまり気は乗らないけど照らし出すしかなさそうだ。


「いたな」


 自転車のカーゴから取り出したライトで照らして五分ほど、地面の途中から真っ黒になっている何かが目に入る。更に照らし続けると闇に波紋が生まれこちらに近付いてくる黒スライム。


 改めて言みると結構な大きさだ。背は俺より低いけど横に大きいので人よりずっと重いだろうな。


「着火よし! 場所確認、そい!」


 地面に置いたライトの先でうねり近付いてくるスライムに、点火したダイナマイトがぶつかった瞬間瞬く間にスライムの体が変形してダイナマイトが飲み込まれる。


 炸裂。


 静まり返った地下道にくぐもった音が響き渡り、限界までスライムが膨張した瞬間、軽い音と共にスライムが弾けた。


「おお!」


 三分の二ほど体を削られたスライムから爆発で発生したと思われる煙が立ち登り、残った部分が震えながら地面に流れ広がって行く。まだ生きているのか地面に広がるスライムが形を保とうとうねり上がるが、すぐに黒い塵を吹き出し消えて行く。


「……二個でぎりぎりってところか?」


 今投げたのはダイナマイト二個を繋げたもの、どうやらテルミット爆弾はダイナマイト2.5個分より威力がありそうだ。


「うーん、テルミットで確殺、ダイナマイトなら爆発が小さくてちょっと残って消えるまでに時間かかる感じか」


 安全と言えば安全だけど、不安が残る弾け方でもある。


「消え方は、スケルトンより遅いかな」


 地面に伸びて黒い水たまりを作ったスライムはゆっくりと消えて行く。テルミット爆弾を使えば消えるのは一瞬だ。何せ木っ端みじんに吹っ飛ぶからな。


「お!3個だ」


 どうやら黒スライムは黒スライムキューブを複数ドロップするのがデフォのようである。だが、そう考えるとやっぱりあの巨大スライムのドロップは割に合わない。ハズレドロップだったのかもしれないな。


「よし、次だ!」


 ドロップを拾って自転車に入れたらライトを地面から拾い上げる。探すまでも無くすぐにライトの光で照らされていた方角からやってくるスライム。


 それから小一時間、


「いや多い多い」


 狩り尽くすより先にダイナマイトが無くなった。結構な量を持って来ていたのだが……スライムの集まり方の方が多かったようだ。


「ライト効果か、それとも単純に多いのか。巨大サイズはいないけど、数がすごいな」


 もしかしたらどこかのゲームのスライムと同じように、こいつらが集まって融合したのが、あの巨大スライムだったのかもしれない。


「これはドロップ集めはすぐに終わりそうだけど、追加のダイナマイト作って来ないと先に全く進めない」


 今日最初にダイナマイトを投げた位置から一ミリも進んでいない。テルミット爆弾の量産の為にも多く狩るつもりだったけど、これはドロップ欲しさに率先して狩る必要がなさそうだ。


「これはスライムキューブ用の箱も用意しないといけないな」


 当初の予定を大幅に超えた収穫を前に喜びきれないため息が洩れた。



 いかがでしたでしょうか?


 ダイナマイトの活躍とは裏腹に進まぬ道。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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