第89話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「30万かぁ……自転車の後ろに荷車でもつけようかな」
帰ってきましたマイホーム、また血だらけです。ガソリン売買で得たお金もほぼ無くなって、心に空っ風が吹いています。でも体は健康でそこがまた腹立たしい。
何でも新配合のドロップ薬品がすごくいい出来だったらしく、体に残っていたいろいろな症状が緩和した可能性が高いそうです。俺ってそんなに不健康だったの? でもお腹の傷はそのままなんですが、これはどういう。
「とりあえず狩る量を増やさないと」
今のところお金に変えてるのはガソリンだけだけど、骨キューブもお金に変え始めた方がいいだろうか? 大き目だから割り増し料金とかしてもらえるかな、でも全く別の骨キューブと言う可能性も微レ存との事なので悩ましい。
ほぼ否定されていたけど、何があるかわから無いのが異界である。
「その前に片付けだなぁ」
そんな骨より先にどうにかしないといけないのは、荒れたマイホームテント。
臭い物やら危ない物やら血だらけの物やら、捨てないといけない物がたくさんあるのだ。特に臭くて汚い物は可及的速やかに処理したい。
「ゴミはリサイクルタワーに入れればいいから大きな袋を買ってきてまとめて、必要な物はちゃんと分けて入れておかないと分からなくなる‥‥‥ぞ?」
ん? 何やら見慣れない物があるんだけど、何か変な物買って来てたかな? いや、それ以前に何かテーブルの上の物に違和感があるんだけど、思い出せ、数日前の光景だ。
「と言うか、なんだこれ?」
テーブルの上に置かれた物、明らかに知らない何か、誰かがここに来て置いて行った? いや、人がここに来た形跡はない。これだけゴチャゴチャしたテントのテーブルだ。誰か来たら足跡の一つも残すはずだが、何もない。おかしいのはテーブルの上だけ、これでも会社の机の配置が変わっていればすぐに気が付くタイプだ。
数日の間を開けても見落とすわけがない。
「こんなの知らないぞ」
テーブルの上にあったのは、500のパックジュースより少し小さな四角い物体で、質感からプラスチックだと思われるが、シールで封がされたカバーが付いている。
「んー……ん?」
謎の物体の感触を確かめながらテーブルの上に置いていた物を思い出してみると、明らかに記憶と合わない箇所が出て来た。
先ず一つ目は謎の四角い物体として、もう一つは黒い物体。
「11個……一個足りない」
頭から血を流し、テーブルを血で汚しながら置いたはずの黒いスライムキューブ、無くさない様にとしっかり並べておいたはずなんだけど、一個少ない。
でも思い出してみたら一個間違って落として、落としてそれから拾い上げて、とりあえずテーブルに置いて、そこには何があった? 無くなっている物は何だ。
「そう言えば飲みかけのペットボトル」
そうだ、飲みかけの水が入ったペットボトル。拾い上げておいた先にはペットボトルが、スライムキューブがちょっと跳ねて、当たって倒れて、でも落ちそうにないからそのままにしたような。
「そうだ、確か割れメタルの見た目で品質が分かるかどうか調べるために、置いたままここに……」
落ちなかった理由は割れメタルがストッパーになって転がり落ちなかったから、あの時は痛みで注意力散漫になっていて、ちゃんと片付けようかとも思ったけど、そのままにしていて、置いてあった割れメタルは鉄、いや鉄は満足して片付けた筈だから。
「確かアルミと銅だったはずだけど」
そう、アルミと銅の割れメタルだったと思う、他の金属と色がどう違うのか、銅なだけにとか糞みたいな洒落を思いついてしまったのを覚えている。ねーちゃん辺りに聞かれたら失笑されるに違いない。
「あれぇ?」
その割れメタルが、無い。わかりやすいように付箋を貼っていたんだけど、付箋はテーブルにあるけど割れメタルが無い。もしかして盗まれた? いやいや、ここまで来る人間が盗むか? それに形跡が他に全くない。
積み上げているガソリンもそのままだし、荷物には全体的に薄っすら埃も積もっているが、触って拭われた形跡もない。と言うか掃除しないとな、埃っぽいから動き回るとこうなるんだ。石畳だけど掃除機かけた方がいいのかな。
「ここに置いていたのは動かしてないから、ないはずがないんだけど」
テーブルの上も下も探したけど何処にもない。割れメタルはそんな小さなものじゃないから無くなるなんて事あるはずないんだけど、まぁもっと大きい物でもどこにやったか分からなくなることはあるけど、流石になぁ。
となると、一番怪しいのはこれか。
「……もしかして、そう言う事? それじゃこれは、なんか書いてある」
ずっと握ったままの怪しい物体。側面には色々と書いてあるけど、これは仕様説明みたいだ。現実逃避で目を逸らしていたけど、直視する必要があるらしい。
全部日本語、絵も描かれて非常に親切かつシンプルで工業的。説明文以外はカバー部分以外白い直方体そこには大きめの文字で商品名? が書かれている。
「ふーむ……テルミット爆弾か、なんか聞いたことはあるけど爆弾だから爆発するんだよな?」
テルミット爆弾。何かどこかで聞いたことがあるけど、あれはゲームだっただろうか? 動画だっただろうか、爆弾と言うからには爆弾なのだろう。そうなるとこのカバーは絶対外しちゃいけないやつだろう。
さらに確認していけばちゃんと使用方法も書いてあるし、封を切ってカバを上げたらそのまま引っ張って起動と書かれている。起動したらどうなるかって? 爆発するんだよ……。
手汗がにじんできた。
ここまでお膳立てされたら解らないとかないよな、どう考えても俺がいないうちに黒いスライムキューブが何かしたんだろう。そしてその材料はEマーケットで購入した水入りペットボトルと割れメタル、他に消えてる物もなさそうだしたぶんそう言う事になる。
色々実験してみてーとか考えていたけど、俺の知らないうちに不思議現象起こしてもらっても困るんだが。もしこれでそのまま爆発も同時に起こしますとかだったら、俺は今日何もかもが嫌になっていたかもしれない。
「1個しかないけど、実験しない事には始まらないし……」
ただまあ、起こらなかったことについて考えても仕方ないので早速爆弾試験である。
「印はこんな感じで良いか」
ダイナマイトの時と同じように、しかし今回はもっと丁寧に。
爆弾設置予定カ所を中心に石を十字に並べていく。どのくらいの範囲が爆風の影響を受けるかの確認の為だが、説明通りならピンを引っ張っても20秒の猶予があるので、そっと置いても逃げる時間は十分あるだろう。
「えっとカバーを上げてピンを引っ張り上げるんだな?」
使い方は簡単、封印シールを破ってカバーを外した真っ直ぐカバーを上に引っ張るらしい。この時カバーは外れないらしく、音がするだけの様だ。絵付きの説明にはパキッ! と言う擬音が描かれているのでそんな音が鳴るんだろう。
まるでプラモデルの組み立て説明みたいなクオリティーだ。当然褒め言葉である。とても分かりやすい。
小さく深呼吸して説明書通りにカバーを開き引っ張る。
「よし!」
音が鳴ったのですぐに土の地面に設置、ダイナマイトの時とは少し場所が違って遠いので急いでホールの壁に走って向かう。
隠れて少し、同じ轍は踏まないためにしっかり待っていると耳を塞いでも分かる爆発音、ダイナマイトより少しトゲトゲした音が聞こえたので、壁から顔を出すとそこには煙が上がっていた。
「……ダイナマイト1本よりずいぶんと強力だな」
しばらく様子を見て爆発の中心に向かうと、結構広い範囲で石が吹き飛ばされている。ぱっと見だけど、2.5ダイナマイト単位と言ったとこだろうか? 調べたテルミット爆弾とは少し爆発の仕方が違う印象だ。
ネットで調べた感じだと、焼夷弾とか言う火を撒き散らす爆弾と書いてあったから緊張してたんだけど……普通にドカン! と言った感じで火は出なかったみたいである。ふつう、手に収まる大きさ、大きな石も飛んで行く威力、普通とは何だったかな。
「次はダイナマイトの実験か」
自転車にはすでにダイナマイトを用意している。どうやらドロップダイナマイトの同時爆発の相乗効果は思った以上に威力がありそうだし、ある程度数値化しておかないと、とてもじゃないけどおっかなくて使い物にならない。
一本ずつ増やしてメモしておこうと思ったのでたくさんダイナマイトを持ってきたけど、ビニールテープを使いきっても終わりそうにないのでまた買ってこないといけなさそうだ。それを考えると胃が痛い。
……今の俺には百均の買い物でも高額である
「あぁ……最高だ」
何が最高かって久しぶりの銭湯がである。ここのところ色々大変だったからか垢がすごかったけど、しっかり全身洗ってお湯の中、温かいお湯に包まれて最高です。
お金はどうしたかって? 俺だって緊急時用のお金くらい少しは用意している。ロッカーの中に仕舞った荷物の中にはちゃんと百均で買ったものも入っている。
尚、明日は頑張ってガソリン狩りの予定だ。まさに素寒貧と言うやつである。
「12本はやり過ぎだったんだな」
実験は4本までやりました。なんで4本かと言うと、それ以上は流石に周囲への被害が馬鹿にならなかったからである。たぶん予測だけど6本であの大きなスライムを倒した場所と同じ状態になるんじゃないだろうか? 次は6本をスライムに食べさせてどうなるか見てみようと思う。
結論として、あれはどう考えても普通のダイナマイトとは違うと思う。普通のダイナマイトを知らないけど動画で見る映像と明らかに違う。戦争に使うような兵器と変わらない。なんであんな危険物を化物がドロップとして出すのか、協会が見つけるまで腹マイトも秘密だ。
「帰ったら黒スライムキューブの再現実験、スライムキューブの反応実験、明日はガソリン狩り……明後日はサステナブルマーケットに顔をださないとぉ」
沈む、体が湯に沈みこむ。
出来るならスライムを倒すのもテルミット爆弾を使いたい。ダイナマイトを使ってる姿を動画で見せたら、ドロップする化物が判明した時に問題が発生するようなしない様なそんな朧げな……。
もんだい、問題? あ、そうだ。
「がぼごぼ!! ……そうだ」
やらないといけないことがまだあった。
「流石にそろそろ姉ちゃんも書置きは見たんじゃないかな?」
家に帰っておかないと、姉ちゃんが書置きを確認した可能性もあるし、してないならしてないでもう少し放置で良いと言う事だ。それで今後の予定も少しは変わってくる。
あと、お小遣い貰えないかな……甘い考えだけど、無いかな? あぁ……でも姉ちゃんも金無いかも? いやいやでも姉ちゃんは堅実オブ堅実、いくら着の身着のまま日本に帰ってきた可能性があっても、必要なお金は持ってる可能性の方が高い。
俺って今すごくクズなこと考えてる気がして来た。やっぱそこは最終手段にしておこう。うん、お湯があたたかい。
「あと帰りにビニール袋と箒を買ってこないと、薬局にあるかな」
きっといろいろあって心が汚れてたからこんなこと考えたんだ。垢も落としたし、帰ったらお部屋も掃除しよう。うふふ、お部屋広いと掃除が大変だな。
「うーん……ぶくぶくぶく」
何か最近自分が自分らしくない様な、元々そんなもんだったような、少しだけいつもより考え方が道を外しているような気がする。
ちょっと人としての道を考えないと、な……。
「ん? おい兄ちゃん!? 溺れるぞ!」
「ごぼっ?」
は!? 死ぬ! ぐえっ!? 飲んじまった!! 汚い! おっさん汁汚い。
溺れかけたところを筋肉マンに助けてもらったけど、そのまま色々な気持ちが押し寄せて吐きました。めっちゃ怒られたけど、その何倍も心配されて、ついでにあの瞬間移動おばさんがここのオーナーだと判明したのだった。
瞬間移動は職員用通路によるものだったようだ。
いかがでしたでしょうか?
羅糸がおっさん出汁飲んだ!羅糸がおっさん出汁飲んだ!
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




