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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第80話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「おう! 待たせたな」


「まったくだ。……しかし凄い量だな」


 予定の時間を越えて炎天下で待つこと1時間、大量の荷物を抱えて現れたのは大輔、その額には汗一つない。


 俺は汗だくである。


「羅糸もすごい自転車だな……その自転車も撮影よろしく!」


 たぶん持ってる荷物は撮影機材なんだろうけど、これ自転車で出てこなかったら運べない様な量だな。


「これも? 完全に特定されるな」


 荷物を地面に置くとぐるぐる自転車の周りを回りながら上から下から眺める大輔、こう言うの好きだよね。


 しかしこれを動画で撮ってネットに上げると言う事はだいぶ身バレの範囲が広がりそうだが、その辺どう思ってるんだか、他人事だからどうでも良いと思って居ようものならサクッとそのねじの外れた頭を握りつぶそうかね。


「まぁまぁ悪いようにはしないから」


 どうだか、俺もあまり気してないから別に良いと言えば良いのだが、どうせ身バレも糞も顔出し動画だから今更感はあるんだけどね。続けるようなら自転車もそのうちバレそうだし、と言うか江戸川地下道に自転車で入る人間の時点ですべてバレそうな気もする。


「もう捨てる物なんて大してないからいいけどね」


 ミニマリストもびっくりな投げ捨て生活となった今となっては、正直どうでも良くなっているのは事実、気になるのはねーちゃんと姉ちゃん二人の反応ぐらいだが、ねーちゃんはもうある程度知ってるからいいだろうけど、姉ちゃんにバレたら縁切られそうだ。


「それもどうなの?」


 しょうがないじゃないか今の俺を見て見ろ。


「異界キャンパーだぜ? 行くとこまでいってやるぜ」


「本音は?」


「……なんでこうなった」


 なんでこうなったのか、空元気でもぐいんぐいん回してないとどうにかなってしまいそうだ。


 大体異変ってなんだよ、悪い事ばかりではなかったけど大体悪い事ばかりだよ。人間と言う生き物には恒常性と言うものが変化することを好まないんだから、この現状はストレスでしかない。


 ストレスでしかない筈なのだが、楽しい気持ちもある……。


「なんでだろうな」


「時代が、会社が悪かったんだ……」


「それな」


 俺の時代はいつ来るんだ。温く怠く軽い調子で話しているが、たぶんお互いに目は死んでいると思う。なんだか今日の陽射しは何時もより余計に眩しい……大輔お前、カメラのレンズの反射が眩しいんだよこっち向けんな。


 まぁそんなことはどうでもいい。とりあえずやるからにはある程度真面目にやろうと思う。大輔が全部任せろと言った様子でやる気を出しているが、こういう時に限ってこいつはどこかで楽をしようとしてやらかす。


 こっちがちゃんと話を振ってやらないと怠け癖が出るのだ。それでよく会議中寝ていて怒られたものである。


「で? どれ使えば良いの?」


「これが自転車のハンドルにカメラ固定するやつ。これがカメラな」


 コロコロと引っ張るタイプの大きな旅行鞄に、細長い物が入るナイロン製の肩掛けバッグ、あとよくあるボストンバッグ、見慣れた形状のバッグはどれもパンパンだが、ボストンバッグから取り出されたカメラは見慣れない形である。


 と言うか、なんか棒だ。


「この棒が?」


「おう! ジンバル付きのカメラでな? 常に水平を維持してくれるんだ」


「じんばる?」


 じんばるとは? 楽しそうに説明する大輔がスイッチを押すと棒の先端が妙な動きで回ってレンズが出てくる。


 ハイテクだ。ハイテクだが、こんな小さなカメラで真面に映るのだろうか。あとじんばるって何? 何語なのそれ。


「スタビライザーみたいなもんだ。しかもこれはお前を認識して360度動いてくれるから多少画角があれでも問題ないぞ」


「すたびらいざー?」


 すたびらいざーとは?聞いたことがある様な無いような、ロボットアニメに出てきそうなカタカナ用語で例えられても分かりません。しかも俺を認識してカメラが勝手に動くだと? ハイテクか! ハイテクか……流石いいとこの坊ちゃん(ニート)、カメラ持ってくると言って持ってくるカメラのレベルが違う。


 俺はてっきり小学校の運動会で親が構えてた様なものを想像していたんだが、最近はそう言うやつなの? 想像できないや。


「これがバッテリーで、いやもうここで取り付けちまうか、ちょっと待ってろ」


「お、おう……?」


 何やら少し大きいバッテリーを取り出した大輔が自転車にカメラをセッティングし始める。たぶん説明が面倒臭くなったんだと思う。まぁ慣れてそうだから全部任せてしまおう。これが慣れない作業なら止めているところだが、そうじゃなければ頼りになるのだ。


 まぁプラモデルの説明書を読まずに組み立てて取り返しがつかなくなるタイプの大輔でも、自分の得意分野ならそう問題は出さないだろう。そう信じたい。


「あーこれならちょっと高くした方が良いか」


 かと言って俺が何も理解しないと言うわけにはいかないので、大輔が自転車に複雑な固定金具を取り付け、棒の様なカメラを固定して行く手順を後ろから見ておく。


 どうやら前についている大きなカーゴが邪魔なようで、カメラを取り付ける位置を上げるために延長ポールを取り出した様だが、運転する時に邪魔にならないようにつけてほしい。盲点が増えると地下道は石が多くて危険なのだ。


「ふむ?」


 事前に伝えていた通り光物をつけない様だが、それでもちゃんと映ると言うのだから不思議である。


 そんなことをしていると背後に気配を感じた。最近周囲の動きに敏感になっている気がするのは気のせいだろうか。


「あのー? 望月さん?」


「ん? ああすいませんお騒がせして」


 来訪者はここの責任者の西野さんだったようだ。これは怒られるやつだろうか、まだこの人に怒られたこと無いのでどんな風に怒るんだろう。可愛い系の人って偶に予想外の怒り方を見せる事があるので油断できない。


 昔、可愛い女の子がぶちぎれて方言全開で男子を怒っていたことがあって、俺はちびるかと思った。


 後にその方言は広島の方の方言だと知って世界は広いと思った。


 でも今回は怒られると言うわけではなさそうだ。どっちかと言うと困惑している様で、離れた場所では職員の女性が心配そうに西野さんを見ている。俺の圧倒的不審者感、今は作業着を着ただけで普通の格好なのに……。


「いえ、全然かまいません。それよりお怪我は大丈夫ですか?」


 そんな職員の視線と違って西野さんの言葉は優しい。


「おかげさまで、高額治療薬を投与されて怪我は大丈夫です。財布には大打撃ですけど」


「あれを……」


 心配そうな顔で怪我していたお腹と俺の顔を見比べている。あと何か手で触れようとしてません? やめてよね。女の子にボディタッチされたら簡単に惚れちゃう陰キャなんだから、勘違いなんてした日には人生終わっちゃう。


「まぁその分も稼がないといけないのでハンターは辞めませんよ」


「それはとてもうれしい報告です。それより、カメラですか?」


 やっぱハンターが減るのは協会としても困るようで、辞めない発言にほっと息を吐いて笑みを浮かべる西野さん、どうやら気になっていたのはそこの様だ。実際に大怪我した事で早々に引退するハンターは多い様で、この間の前任責任者暴走事件で負傷した人も一部が辞めたのだとか。


 日々面倒事が多いのだろう西野さんは自転車の方を気にしだしたが、あれ? もしかしてお姉さんもカメラとか詳しい世界の人? あの棒を見てすぐにカメラってわかるって事はそう言う事だよね。


「元同僚から動画撮ってネットに上げようと言われて」


「良いんですか!?」


 凄い食い付きである。やっぱ奥の情報が出回るのは良い事なんだろうか、ちょっとそのキラキラした笑顔で見上げられると、隠している事が悪い気分になってくる。この人いくつか知らないけど、確実に実年齢より若く見えるタイプだよね。格好替えたらちゅうが……高校生くらい行けそうだ。


「まぁ見せられるところだけと言う事で」


「それでも助かります! 本社の方でも望月さんの事を疑う人が多くて……」


「あーまぁ、すいません」


 どうやら俺のことは協会本部にも連絡が行っているようだ。そこで疑われていると言うのは、たぶんC級の俺が江戸川大地下道の奥まで入って行動していると言う事実についてだろう。


 世の中、偉い人と言うのは自分の目で見たことしか信じない人が多い。それは良い事でもあるけど、悪い方に転ぶこともあるわけだ。今回の俺の存在に対する疑いの目がどちらに転ぶかは知らないが、自分で見に来ないくせに信じない人間に良い人間は少ない。


 これは短い社会経験で見て来た感想だ。


「望月さんは何も悪くないんですから謝らないでください!?」


「そうですかね?」


 C級はC級らしく何もするなと言うのが国の意見なんじゃないだろうか、たぶんその場合悪く言われるのは俺である。聞いてやる気はないけどね。


「今の制度が悪いんです……動画出来たら教えてくださいね!」


「お任せくださいレディ!」


「ひゃ!?」


 何か生えてきた。


「ところでお嬢さんはどちら様で?」


「ここの責任者」


「え、お偉いさん?」


 そして握った西野さんの手を怯えながら放す大輔、わりと最低である。


 確かに見た目から偉い人に見えないかもしれないが、そこで怯えるのは違うだろう。あの会社に居たら偉い人アレルギーになるのは仕方ないとは思うけど、この人は良い偉い人だと思うから怯える必要はないと思う。


 いや、いきなり手を握ってセクハラした相手が偉い人ならそら怯えるか。よし、ここは大輔の為にサポートして上げよう。丁度視界の端に知り合いの顔が見えたんだ。


「あ、警備員のお姉さんだ。おーい」


「なんでここで呼んだ?」


 君の為だよ。


「いやセクハラかなと?」


「おいぃ!?」


 罪は早いうちに清算しておかないと、長引けば長引くほど面倒になるんだ。


 ソースは別部署の課長、社長の親戚と知らずにセクハラしたのを黙っている様に脅したり工作してたら内容証明って言うのを受け取る事になったらしい。その時も俺は誠実に対応したよ? ちょうど倉庫整理中にセクハラ現場を見ていたからね。


 てっきりよくやってるそう言うプレイなのかと思ったけど、その時は違ったらしい。



 いかがでしたでしょうか?


 良い子のみんなは、公の場での公私は分けましょう。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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