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第8話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





「改めまして、異常事態関連企業調査局の調査員で高橋と言います」


「あ、こまねる雑貨輸入会社販売部の望月です。今日はよろしくお願いします」


 美人である。


「お願いするのはこちらですので、固くならず」


「あ、はい」


 固くなるなと言う方が無理なの解ってますかね? この美人さん。肩の辺りまである黒髪がつやっつやで、きりりとした表情はどっからどう見ても出来る女の雰囲気である。あと何がとは言わないが結構大きいので俺は彼女の目を見詰め続ける事にした。見るとすぐバレるらしいからな。


「それでは現状の確認をして行きたいと思います」


「あの、そのあとで相談があるんですが……」


 動くたびに揺れる髪の毛は綺麗に元に戻る。あれはいったいどういう構造なんだろうか、形状記憶合金か何かなの? 俺のぼさぼさ頭とは次元が違う。つやつやと言うか、てゅるんてゅるんと言うか、思わず目を奪われる輝きで、会社には居なかったタイプの女性だ。


 と、そんな事より先に相談について言っておかないと、こっちにとって一番重要なのは退職届祭りの件だ。いろいろ調査してほしい事は山積みだが、あれを何とかしないと落ち着かない。


「ええ、私も聞きたいことがありますので」


「ですよね……」


 まぁそれは高橋さんも同じか、最後に相談できればいいから今は高橋さんの調査と言うものに集中しよう。何せ今ここに居るのは俺だけ、大輔は逃げたし助けは誰もいない。まぁ大輔がこの場に居て助けになるかと言うと……邪魔だなたぶん。





 一方、美人調査官と言う言葉が良く似合う女性の質問に羅糸が悪戦苦闘している頃、逃げた大輔は警備受付に肘を着き、缶コーヒー片手に警備員と談笑している。


「どうなりますかね?」


「さぁねぇ? まぁ羅糸は何だかんだ出来る奴だから何とかなるだろ」


「若いのに大変だ」


 自分より倍近い年上の男性警備員と話す大輔は、天井を見上げるように呟く彼の言葉に肩を竦めた。


 警備員の男性が心配しているのは羅糸と調査員について、その調査は今後の会社の状況に大きく関わってきそうであるのは、協力会社の警備員であっても十分理解出来る。その結果はダイレクトに彼らの身に降りかかる為、心配するなと言う方が無理な話なのだ。


「ほんと、院卒くらいの歳だったか? も少しか、普通こんな目にあわねぇよ」


 一方で心配した様子の無い大輔はどちらかと言うと不憫だと言いたげに溜息を洩らし、より不憫な目に遭わせている自覚があるのかないのか、ジト目を向けてくる男性警備員に肩を竦めて見せる。


「手伝わなくていいんですか?」


「俺がいても役たたねぇからなぁ……」


 それなりに自覚はあるのか、男性警備員の視線から目を逸らすと、問いかけに対して困った様に呟く大輔。事実として彼がいたところで役に立たないであろう事は自他ともに認めるものであり、手伝いたくても手伝えないと言うのが彼の本音である。





「これは、えっと……私たちもお手伝いしますので、元気出してください」


 元気付けられました。美人に元気付けられると色々元気が溢れそうだと思うんですが、不思議と元気は出ずに落ち込んでしまいそうです。


「……ありがとうございます」


 お礼を言う声にも覇気が宿らず、自然と丸まってしまう背中の所為で、そのお礼も地面に向かって零れ落ちる。ブラジルの人にお礼を言っているわけでは無いのだが、そんな俺を見詰める高橋さんの目はまるで年下の子供を見る様で、なんだかいたたまれない。何か新しい扉が開きそうだ。


「それにしてもこれは今までで一番ひどい状況かもしれませんね」


「そうなんですか?」


「ええ……」


 真剣に悩ましい表情を浮かべてしまうほどにこの会社の状況は悪い様だ。


 いや、悪い状況なのは俺だってわかっているのだが、他も似たような状況なんだろうと思いたい気持ちもあるわけで、しかし現実はうちの会社ほど悪い状況の企業は無いようで、調査だけでなく様々なサポートも行うはずの高橋さんも困り果てている。


 いやでも、俺は知っているぞ? 店長以外の店員が居なくなったコンビニだってあるんだ。うちの会社が底辺なんてことは無いはずだ、そうであってくれ、そうであったとしても何も変わらないとしてもなんか嫌なんだ。


「でもコンビニで店長以外居なくなったと言う店もあるとか聞いたんですが」


「確かにありますが、本社機能は問題ない所が多いので」


「あー……」


 あー……はい、そうですね。うちの会社は本社も何も倉庫以外はすべての機能がこの会社の持ちビルに集約されている。それはすなわち、このビルの人間が9割以上居ない時点で致命的で、コンビニの人間がいなくなっても本社機能がマヒしてなければどうとでもなるわけだ。


 なんだったら、俺みたいに給料の心配もいらないのではなかろうか?


「それに一斉退職の件は、なんと言うかこう言ってしまうと失礼かもしれませんが、責任能力が欠如していると言うか」


「ですよね……」


 ちなみに最重要の相談も終わっている。結果は美人の百面相が見れました。やったぜ。


 一斉退職の話をした瞬間驚きの表情を浮かべ、見開かれた眼が綺麗だなと思えば急に怒った表情を浮かべ、俺が驚くと心配と慈愛の籠った目で見詰められ、乾いた笑いを俺が洩らすと困った様に俯き困惑と苦悩がまぜこぜになった表情で唸りだしたのだ。


 美人はどんな表情も絵になると思いました。


「逆にこの状況で逃げなかった望月さんは立派ですよ」


「そうですかね? 同僚も一応一人残ってるんですが」


 いいぞもっと褒めてください。俺は褒められて成長するタイプです。でも他人からの称賛を真っすぐに受け止める事が出来ないタイプでもあるのであまり成長は見込めません。


「その方は?」


「ここに居ても役に立たないからと逃げました」


「…………」


 残って褒められるのなら大輔もそうあるべきだが、俺の返答によってその評価は上がらなかったのか、称賛されること無く高橋さんの表情が険しいものになって、彼女はそのまま頭を抱えだした。


 すいません、貴女のお仕事を少しでも楽にして差し上げたいのですが、無理そうなんです。


「いえ、その……すみません」


「いえ」


 感情がそのまま表情に出ていたのか、俺の顔を見た高橋さんが少し慌てた様に謝罪して来るが、正直こんな面倒な会社に来て貰って申し訳ない気持ちでいっぱいだ。元凶は突然発生した異常事態なのであろうが、目の前で困惑や疲れ、呆れなどの感情を隠す事が出来ない美女を見ているとそう思わざるを得ない。


「ここまで酷いケースは初めてなので、今後の対応について戻って詳しく協議します。ですので次の訪問は少し後になると思いますので、その間にこう言った資料を集めてもらえると助かります」


 改めて酷いと言われると落ち込みそうになるが、まぁ異常事態が起きた日から時系列に説明してる段階で、自分でも酷いと言わざるを得ないのだから仕方がない。


 社員は上から下までごっそり行方不明になるし、残った中で上位の権限を持つ者は下のまったく関係ない部署に丸投げ、ワンチャン会社の事情に詳しいのではないかと思われる人事部の女性社員も有休で逃げる。また倉庫管理部なども大輔から状況を聞いて同じような状況、極めつけは休みの間にこっそり持ってきたのであろう退職届の山、損切り出来る勇気は素晴らしいが、俺からしたら殺意の対象にしかならない。


 それでもこうやって政府関係者? 何か知らないけど偉い人に対応してる俺はもっと褒められて良いと思う。褒めてくれるなら資料だっていくらでも用意しますとも、どこにあるかわからないけど。


「ええはい、たぶんあっちこっち漁れば出てくると思うので」


 とりあえず適当に各部署漁れば出て来るでしょ。綺麗に一枚の紙にまとめられた必要書類に目を通しながら頭の中で入るべき部屋をピックアップして行く。まぁ大体人事か総務だな、あと社長室も漁るか、その過程で高そうな酒が無くなったとしても……いや、あの糞社長の持ち物とか汚らわしいからいらないや。


「見つからないものに関しては構いません。パスワード管理されているものは無理だと思うので」


「うーん……やれるだけやりますよ、たぶん大丈夫だと思うので」


「え?」


 見つからないならそれでいいと言うのは気が楽だが、パスワードか、それなら何とでもなりそうな気がする。


「上の人達、パスワード覚えられなくてメモってると思うので、あとうちの部署に関しては部長と課長のパスワードは大体知ってるので」


「それは……」


 大体みんなパスワードとか覚えられなくてパソコンに張ってるし、うちの部署に関してはなぜかパスワード知らないと怒られるので全部メモしてるのだ。


 高橋さんが呆れた表情を見せるが当然である。何のためのパスワードなのか、お爺ちゃんやおばちゃんたちには解らない様子で、何だったら一部の社員はパソコンのログインパスワード設定してないので起動させたらエンターキー押すだけですぐに操作できてしまう。


「パスワード忘れたと怒り出すし、知っとかないと何で知らないんだとさらに怒り出すんですよね」


「何と言うか……大丈夫ですかこの会社?」


 とても純粋でまっすぐな目をした高橋さんに心配された。


「だいじょばないですよねーはっはっは!」


「…………」


 大丈夫なわけがない。わけが無いのだが、何だかんだ今まで営業してこれているのだから不思議である。


 俺の乾いた笑いに何とも言えない表情を浮かべる高橋さんの目は、なんだか昔見た母親の様に優しかった。あと、なんでかわからないけど、おれのめにはなみだがにじんでいるきがしたのをおぼえている。



 いかがでしたでしょうか?


 泣いちゃった……。さもありなん、そんな彼の明日はどこへ。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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