第78話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
羅糸が見つけたTのとあるコメントより抜粋。
<スケルトンをイキリ殴りハンターに横取りされた情報求む>
<イキリ殴りハンターってだれだよwww>
<知らないのか? 江戸川大地下道でスケルトンを拳で倒す最弱ハンターだぞ>
<最弱とは?>
<エアプが居る>
<最弱はC級なんでB級以上を最弱とか言わないで貰えます? イキリは許す>
<あの動画のハンターは確かに弱そうだけどな>
<アカウントも凍結してるし流石雑魚>
<情弱乙wあのアカウントと動画のやつ無関係やで>
<は? ソースあんのかよ>
<ほれ、T公式発表>
<ほんとだ、すまそ>
<ゆるす>
<やさいせいかつ>
<健康的で草>
<でもどうやって分かったんだ?>
<そりゃ本人からの通報か関係者からの通報やろ>
<Tは対応遅いけどそう言うとこしっかりしてるからな>
<ちな三回凍結でBANと言う>
<そんなの良いから特定しろよ>
<常識無くて草>
<尚、許可なく個人情報晒したら凍結確定で求めてもグレーだぞ♪>
<非常識とか横取りしたこいつだろうが>
<横取りハンターとかマジで底辺だから>
<犯罪者は死ねばいい>
<調べてどうするのさ?>
<そっとしといてやれよ>
<晒すに決まってるだろうが馬鹿じゃないの?>
<あー可哀そうな奴らか>
<そこは協会に報告して動いてもらえと>
<先生この人たちは?>
<わしらでは救えぬ者じゃ>
その後も続く罵詈雑言とそれらを餌に楽しむT民達の会話が続く。
「掲示板機能とかいらないアプデだと思うの」
見やすくて大変助かったけど、見れば見るほど悲しくなってきちゃう。
どう考えてもこのイキリハンターって俺の事じゃん。ご丁寧に動画の切り抜きまで用意してさ、掲示板機能仕事し過ぎなんだよ。とりあえず切り抜き動画も通報しておこう。しかし三回凍結でアカウント消されるのか……まぁ問題ないやろ。
「しかし、横取りか……昨日のあれか?」
横取りと言っていい行為と言えば昨日の女の子たちを助けた件ぐらいかな? でもただの救助だし、文句も言われて無いし、骨キューブもあげたし……全然違うな。
「うーん、でも助けた子は女の子だったし、字面から女の子の文章じゃないよな」
Tの文章とアイコンを見てもおっさん臭と言うか男の匂いしかしないわけで、助けたのが女の子だからやっぱり当てはまらないと思うんだよな。
気になる事と言ったら逃げていた男達だろうか、だいぶ年齢離れていたけど一緒に狩りでもしていたと言う事か? いやそれでも横取りにはならないと思う。もしかしてトレイン戦法だった? オンラインゲームであれやると怒られるんだよなぁ。
「それにもし女の子ならもっとこう、被害者らしくて自分が女の子である事を前面にだして周りに擁護させるような文章を書くと思うんだよね」
そう、女の子の文章はもっとこう何というか、ね? 怖いんだよ。ちょろっと見ただけでおっさんたちがほいほい釣られるような文章で、それでいてアイコンもこんなアニメキャラじゃなくて、太腿とか、腰とか、へそとか、胸とか、体の一部分の切り抜きだろう。
「尚、ソースは女子社員が会社のパソコンでやってたSNSの内容である」
開きっぱなしで放置してたから思わず三度見したよね。会社の愚痴がいっぱい書いてあって、コメントにはその愚痴を擁護するコメントが並んでて、お礼のコメントに援助とか支援と言う言葉が並んでて……女の人に対する苦手意識が増す嫌な事件だった。
まぁいいや、炎上と言ってもそんな燃えてなさそうだし放置放置。
「大輔にも放置で良いと送っとこう」
笑い話にしたかったのか知らんが、大輔もよう巡回しとる。一日中ネットの世界に浸かってるんじゃないだろうな。わりとありそうなんだよな、会社でもずっとスマホ弄ってたし、面白い物見つける度に教えて来るし、その所為で俺の手もがっつり止まると言う。
それで何度課長に怒鳴られお局にネチネチ小言を言われた事か、後で暴言スタンプも送ってやる。
「浅い場所はほんと鬼門だな」
人が多いから仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど、もうすこしコンプライアンス的なリテラシー的なそう言うの心がけてほしい所だ。Tから俺の骨殴り動画が消えないじゃないか、毎回削除申請出すこっちの身にもなって欲しい。
ん? 画面が切り替わった。
「電話?」
電話だな、この操作中に電話がかかって来ると全操作が突然ストップするのやめてほしいんだよなぁ? このスマホの仕様なのか何なのか、異変が起きる前に機種変しとけばよかった。
サプライだか何だかかで最新のスマホが手に入り辛くなって、店舗もオンラインも売り切れの表示ばかりだ、と言う間にスピーカーモードにしてっと。
「なんだよ、もう良い子は寝る時間だぞ?」
「いやいくら何でもまだ早いわ……寝るとこだったのか?」
確かにまだ早い。そろそろ小学生なら学校が終わるくらいの時間だろうか? お腹を殴られていなかったらお菓子でも食べたくなるところだが、俺は贅沢にインスタントコーヒーである。まだお湯は沸かないが、偶に待っている間に寝てしまってお湯を沸かし直しになるのは秘密だ。
「コーヒー飲もうとしてたとこ」
「バリバリ起きてる気じゃねぇかヨ!」
「そうでもないんだけど、それで何か用?」
確かに目覚ましにコーヒー飲む人が多いと思うけど、仮眠の前にコーヒーを飲むのも効果的なのだ。実際このコーヒーを飲んだら30分くらい寝るつもりだった。そのくらい寝ればお腹に食らったダメージも引いて、丁度空腹で腹が空き始めると思う。
しかし、最近よく電話してくるけど何の用なのか、会社に居た頃はほぼ毎日顔を合わせてたから電話なんて滅多に掛かって来た事はない。どちらかと言うと俺が周りから言われて遅刻の安否確認に掛けていたくらいだ。
「炎上の件だよそりゃ」
まぁこのタイミングならそうなんだろうけど、炎上らしい炎上じゃなかったと思うんだけどな。
「ちょっと調べたけど大して炎上してなくない?」
「何か所見た?」
「え?」
何か所? もしかしてそんな複数個所で燃えてる感じ? 見てた人間なんてまぁ結構周りには人いたけど、当人じゃなきゃこんなこと言い出さないだろ。あっちこっちで聞きまわってるとしたら随分とまぁ悪質だな? そんなにやらかして大丈夫かね。
「三カ所ぐらいで炎上しててうち一つはハンター免許を剥奪しろってコールで沸いてるぞ?」
「なんでさ……」
いやいや燃えすぎぃ!? 剥奪って、どう言う理屈で言ってるんだよ。剥奪ってあれだろ? 確か傷害とか殺人とかそう言う事やった場合に検討されるくらいのはずだ。なんだったらC級の武器所持も1回くらい見逃されるし、B級以上が公共の場における武器使用を行った場合も銃器でなければ化物の対処であれば割と許されるはずだ。
それで剥奪って、俺が何をしたと言うのか。
「わかんね、それで何かやったんかなぁと思ってさ」
「一番可能性があるのは昨日女の子を助けた時かな、それ以外では動画の時しかあそこでスケルトン狩ってないし、最近は奥のスケルトンで忙しかったし」
さっきも思い浮かんだのはそれくらいだ。他の炎上がどういう理屈で炎上してるのか分からないけど、他に思い当たる事なんて何もない。なんせここには俺しかいないから横取りも糞も無いのだ。
なんだろう、自分でぼっちと言って自傷した気分である。
「ありゃ女の文書じゃないだろ? 女が被害者ならもっと燃えてるぞ?」
「だよね。一緒に来てたらしい男が逃げて置いてかれた女の子を助けたんだよね。一緒に狩りしてたかは知らんけど」
可能性があるとしたらあの逃げていた男達だろうなぁとは思う。若い女の子とおっさんが一緒に狩りに行くとして、おっさんが女の子を置いて逃げてしまっては、彼らのプライドが傷ついただろう。
勝手に逃げてプライドが傷つくとは何事だと思うかもしれないが、よくある事だ。会社でも商談の不手際を連れて行っていた部下の女の子に擦り付けたおっさん社員が、そのあと上司に叱責されてそれ以降女性社員に嫌がらせを繰り返す様になったり、上げ出したら切りが無いくらい世の中くそなのだ。
「あー……逆恨みか、ドロップは?」
そう、逆恨み。俺も会社で何度かとばっちりを受けた事があるが、何とも気持ち悪くて残念な気持ちになったのを覚えている。一年もそんなの見てたら慣れたけどな、慣れたと言うか、心が死んだ? と言った感じだろう。
「女の子達にあげたけど?」
「ほな全部嘘かぁ……」
ふむ、横取り云々としか聞いてなかったが。大輔が見た炎上現場ではドロップまで奪ったと言う事になっているのかな。それはまた大ウソつきである。と言うか今更あんなことまでやってドロップを持って行く意味が無い。
嫌がらせ? なんで? そんなことやってる暇があったらシュール缶バッタでも狩っていた方が圧倒的に有意義だ。同じくらいの戦闘時間で缶詰1個とかどう考えてもそっちの方が美味しい。
今日も缶詰食べよう、そうしよう。
「あーこれ? Tの江戸川地下道攻略始めましたってアカウントの掲示板」
「それそれ」
「うん、全部嘘だな」
Tの新機能はアカウントごとに専用掲示板がいくつか作れるらしい。
そこにはずいぶんと過激な内容で俺をののしってくれる人が何人か、いきなり後ろから武器を持って襲い掛かって来たとか、殴られたとか、恫喝されたとか、女の子を人質にとられたとか色々と書かれている。
だが俺は武器所持してないし殴っても居ない、ちょっと骨を手刀で切り砕いただけだ。今後もこの技を鍛えて不格好なチョップから刀の様なかっこいい手刀にするのが目標である。
「完全にでっち上げかよ……なぁ羅糸はん?」
「その猫なで声は、嫌な予感がするな」
きもちわるい。あときもちわるい。
こんな猫なで声を出して話しかけて来る時は、絶対よからぬことを考えているか、お金を貸してほしい時だ。大輔検定初級で最初に出て来るくらいわかりやすい問題なので覚えてなくてもいいレベルだな。
「やっぱお前動画撮った方が良い! 編集は任せろ!」
「……なんでだよ」
なぜそうなる。
聞きたくないけど大輔は話す気の様だ。ここで電話を切っても良いのだが、こういう時の大輔は妙にしつこい。たぶん何か切羽詰まっているか、何をしても上手くいかないどん詰まりの様な面倒な状況なのだろう。
俺は何度もこの猫なで声を経験しているから詳しいのだ。面倒事が深刻化する前に対処しないと、致命的なやらかしをして俺がとばっちりを受けることになるのがいつものパターンである。
……会社も潰れたと言うのにまだ振り回されるとは、因果な縁だ。
いかがでしたでしょうか?
大輔が暴走する……しているようです。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




