表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/101

第77話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「いやぁ……昨日は食いすぎた」


 ぼっち缶詰パーティーを開催した翌日、清々しい早朝の江戸川大地下道の入り口から出てきた俺は、自転車のカーゴに入れた昨日のゴミもそのままに真っ直ぐトイレに向かう事になった。


 汚い話だが、非常に快便であった事をここに報告する。普通なら暴飲暴食による消化不良で大変なことになっていてもおかしくない量を食べたと思うのだが、不思議と体調は良い。


「体がすごく、なんか良い感じだ」


 昨日まで感じていた体の芯にある倦怠感も消え、残暑と異界の気温差で感じていた疲れも無くなった。なんだったら少し疼く様な感触があったお腹の傷も、今日はまったく問題ない。治験治療薬が遅れて効いてきたのか魚の缶詰の影響か、それとも銭湯の湯治効果なのか分らないけど、とりあえず元気である。


「気のせいかな? 肌の感触もなんか良い感じだ」


 しっとりと言うか柔らかいと言うか、どうしても異界の中は変に乾燥しているので朝の寝起きとか喉が渇いてしょうがない。しかし今日は喉に感じる不快感が無かったのだ。


 魚の油のおかげだろうか、なんだっけ? ドコサイッタカ塩酸だか言う健康にいい油が多いんだよな? 鯖味噌缶も食べたしそれかもしれないけど、あのチョイスは拙かった。


 味噌とサバの組み合わせはさらに米が進んだ。


「異界のドロップは、思った以上にファンタジー……何か特殊な効果でもあるのだろうか?」


 体が元気になる効果とか、お腹が痛くならない効果とか、フードファイターじゃなくてもフードファイター並みに食べられそうでそれはそれで恐ろしくもある。


「んーでも、ウナギとか普通に栄養あるからな? わからん」


 単純に疲弊していた体に栄養が行き渡った可能性の方が高いわけだけど、下手な考え何とやらと言うし、とりあえず元氣になってよかったと思っておこう。


「今日は骨エリアの奥に行ってみよう」


 今日の予定を口に出しながらリサイクルタワーに昨日のゴミを入れる。さらに未開封の缶詰をいくつか奉納して昨日の散財を補充しておくが、補充の為とは言えちょっと勿体ない。さらば割と美味しいイワシの缶詰シリーズ、今日の狩りで補充してやるからな。


「せめて境界くらいは探しておかないと、新化物アタックするにも事前調査は大事だからな」


 無理はしないと決めた昨日の今日で強化骨と言うのもあれだけど、そのくらいは問題ないと思えるくらい元気なのだ。これは戦いで傷つくたびに強くなって復活する超戦士の血が俺にも流れているのかもしれない。


 少なくともうちの母さんは、どんな秘境でも、どんなゲテモノを食べても病気にならないので、わりと超戦士的な遺伝子を持っていると思う。





「ふん! はっ!」


 左からの拳を右の拳で叩き落とし、引き絞っと左の掌底で骨の胸骨を押してバランスを崩す。さらに引いた右の拳を広げながら一歩踏み出し、野球のボールを投げるような動きで広げた右手を振る。


「せぇえい!!」


 あの特殊固体の様に綺麗な手刀じゃないけど十分、小指の付け根辺りが勢いよく骨の鎖骨にぶつかり乾いた音と共に肋骨を割り進む。


 完全に肋骨を砕き切る前にバランスを崩した骨は転倒、黒い塵を噴き出しながら満足そうな顔で腕を上げながら消えて行く。もう見慣れた姿である。


「チョップ、いいな」


 手刀と言った方が俺的にはかっこいいが、やってることはまだチョップと言ったところだろう。特殊固体の最期の一撃は間合いと態勢が悪ければ腹を貫通していたかもしれない。それくらいあの一撃には鋭い気配があった。もうあれ流行りと同じだ。


「それにしてもこのドロップ、何か使い道あるのか」


 黒い塵が消えればドロップが現れるので拾い上げるが、この赤い布は何か不思議な効果とかあるのだろうか? 今も腰に装備している革の帯を固定している赤い布の色と似ているが、それより若干褪せて布の質感もザラザラ、麻布ってやつだろうか? それに比べたら帯の布はもっとサラサラしている。とてもハサミで切れないとは思えない。


「服の切れ端? 丈夫なのかどうなのか……何かに使うにしても一度洗濯した方が良いだろうか? 色移りとかするのかな? 次また作業服に穴が開いたらこれで繕うか?」


 新しくなった作業服も早々に傷がついている。骨の指先で袖口を引っ掻かれただけなので穴が開いているわけじゃないが、もしまた穴が開いたらこの布で補修したらいいかもしれない。当て布になりそうな要らない服も無いし、百均で買うのも勿体ないので割と良い案じゃないだろうか。


 どうせおしゃれなんて気にしてないし、普段着増やすくらいならもう一着この作業服と同じものを用意しておきたいくらいだ。骨と格闘するようになってから損耗が激しいからな、用意は必要だろう。


「それにしてもこの帯と言うのが正しいのか分からないけど、えらく丈夫だよな」


 革のスカート部分を掌で叩くと、手にはしなやかで柔らかい感触が伝わって来る。


「スケルトンが何しても傷つかないし、血で汚れてると思ったら全然汚れて無いとか、やっぱ化物からの貰い物だから普通じゃないのかな?」


 今まで手に入れた異界の物の中でもトップクラスにファンタジーな一品だけど、こう言うのも今後世の中には溢れてくるのだろうか? Tにも厳つい鎧を着ている人とかいるし、意外とハンター界隈では流通し始めているのかもしれない。


 もし手に入るならこの帯と同じような色合いの服か、あの特殊固体が着ていた様な白っぽい服が欲しい。いや、でもあれって古代の人が来てる奴でほぼ一枚布だか組み合わせてるだけの簡素な物だったか、洋服に慣れた日本人にはハードルが高いな。


「うーむ、外に付けて行ったら中二病感マシマシだけど、これに合わせるならやっぱ同系色の赤か、黒も良いか? いや革の色に合わせて赤っぽい茶色も良いな」


 革の帯と同じような汚れにくく丈夫なら考えなくも無いが、白は汚れが目立ちそうだし、売ってありそうなものと言ったら黒かグレーか、今度作業着のお店に行って見ようかな、流石にそっち系の店はまだ閉まってないと思いたい。


「まぁ色合わせても買ってくるのは作業服なんだけど、青色よりマシなんじゃないかな?」


 工事現場とか工場の作業服! って感じの服で外に出るのは最初周囲の目が気になったけど、慣れればどうと言う事はない。人はそれほど周囲に目を向けてはいないし気にもしてない、あの学歴至上主義のプライド盛り盛り課長も気にしてなかったんだ。


 まぁ、その理由は作業服の業者を馬鹿にしたら取引先の社長だったと言う事件があったかららしいけど、その事件で課長は一生部長に成れないと決まったらしい。部長が楽しそうに話してくれたのを覚えている。


 うん、気を付けよう。誠実、大事……。


「お? 次の挑戦者ってか……なんでお前ら盾叩いて鳴らしながらやって来てすぐ捨てちゃうの?」


 次の挑戦者が目立つように盾を槍で叩き鳴らしながら現れたかと思うと、盾と槍を放り投げ捨てた。自衛隊の話じゃスケルトンは隠密行動に向いた特性があるはずなので、やってることが能力と真逆である。


 それでも曲げられない何かがあるのか、俺の前までゆっくり歩いてきた骨は赤い布がしっかり巻かれた手を緩く握り、静かに構えて俺を見詰めた。


「俺も赤い布をバンテージにした方が良いのか?」


 今までにない変化だ。やっぱりこっちに合わせて変化している? いや、なんだろう合わせてと言うより何かもっと私情が混じってそうな変化だけど、異界と言うのが状況に合わせて変化するものであると言う事は分かった。


 あと、こいつら俺が構えないと動き出さないのだ。ここで無視して帰ったらどうなるんだろう? 後ろから奇襲されるのか、されそうだな。


「何を言いたいのか分からんが、やってやろうじゃないの!」


 いいさやってやるよ、今日はまだ狩る気だったからな! 貴様らが狩られる側である事をその身、いやその骨に刻んでくれるわ。


「クカッ!」


 構えた瞬間見せるその嬉しそうに笑う顔が微妙に憎らしい。





「正直もうバックパック無い方が良いと思えてきた」


 異界に入り始めた頃からお世話になっている無駄に頑丈な防弾仕様のバックパック、最近格闘戦主体になっているからか邪魔に感じ始めた。


 あと骨はしっかりボコボコにして顎に一発入れてやったが、あのあと骨が順番待ちしてやがって化物と言うのが余計に分からなくなって来たよ。


「自転車あるし、もう少し小さめの物を用意するか? 中身は、許可証と最低限の治療用品かな?」


 役には立っているのだが、どうしても重くて体を振った時に遠心力で体が外にぶれるのだ。特にあちこちに大小いろいろな形の石が転がっている地下道で動きが崩れると、足元の石を踏んずけて転びかねない。


 さっきも慌てて着地点をずらしたらお腹に良いパンチを一発貰ってしまい、それもあって今日の狩りは終了である。


「コーヒーでも淹れるか……この調理器具セットお湯沸かすのにしか使ってないな」


 痛いは痛いが特に問題ある痛みではなく、気が散るので狩るのを止めただけ、そのちょっとした集中力の散漫が怪我に繋がると思う。


 インスタントコーヒーの袋を開ければいい香り、お湯しか作ってない鍋に水を入れると買っておいたペットボトルが空になるが、捨てるのはもう少し溜まってからでいいか。片付けもしないといけないし、そう言うのは纏めてやる主義だ。


 昔、纏めてやるつもりで全くやって無くてねーちゃんに叱られたことがあるので、これでも割と小まめに掃除するようになった方である。


「ん? 大輔からメッセ?」


 何事? お湯が沸くまで暇だからとスマホを手に取れば、一時間前と表示された大輔からのメッセージ、着信履歴はないからメッセージだけか……それはそれで珍しいかも。


「くだらない内容なら……は?」


 中身を開いて見れば内容は俺がSNSと言うか主にTで炎上していると言う内容。


「なんでだよ」


 この間のスケルトン撲殺晒され事件が再炎上でもしたか? いやでもあんなの炎上でも何でもないだろうに、また大袈裟に言ってんじゃないだろうな。



 いかがでしたでしょうか?


 羅糸は再炎上したようですよ。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ