第7話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「うわぁ……」
何と言う事でしょう。こんな綺麗な光景を見るのは、はー……初めてではないな。二回目? 三回目? 人類は学習しないのか、それとも今度こそ本当にやばいのか、なんで買い占めを行うのか俺には解らない。
「卵は売ってるな」
卵は前の買い占めの時も割と残っていた印象があるな、値段が上がっても割と買える値段だし、栄養面からも貧乏人にとって生命線だから買い。
「バターもある」
バターが品薄になったのは牛乳のごたごたがあった時だけで、買い占めの対象にはならないんだよな。まぁ高いので買わないわけだけど、いやね? ほかほかの白米の上に載せてその上から醤油を掛ければもうそれだけで豪華なご飯になるんだけど、如何せん高い。物価上昇で更に高い今日この頃、君は見送らせてもらうよ、ごめんねバター。
バター醤油ご飯が急に食べたくなって来たけど心を鬼にして……そう言えば醤油があと半分くらいだったな、ちょっと見ておこう。買い占めの兆候が見られたら買っておかないと、とりあえずなんにでも醤油かければ食えるからな。
「醤油とか調味料系は無くなってないけど、野菜が無いな」
調味料棚の近くは野菜置き場になっているがほとんど何もない。醤油は無くなりそうにないから良いとして、野菜エリアにはもうジャガイモと玉ねぎと人参、レモンが……持って行かれた。まぁレモン買っても何に使うかという話なんだが、たまにレモンハイボールを作る時に買うくらいで他に使い道がわからん。
醤油に塩、出汁の元は今度で良いかな? ふりかけは買いと、ごま塩の方が安いけど、ここはのりたまだな、ごま塩はこの間買った白ゴマが残ってるからいいや。
「紙が、ない……」
なんとなく、そう何となくだがこの危険性は考えていた。早めに買っておくべきだと、ストックしてでも買っておくべきだと……案の定だが紙類が全滅してる。人類は何故こうも浅ましいのか、何故いつもトイレットペーパーを買い占めるのか、普段は絶対なくなることがない高級テイッシュペーパーまで無くなっているなんて、人は愚か……。
「とりあえず米とふりかけがあれば、いける……」
あーため息が勝手に出てくる。米も買い占めは無かったから買えたけど、ティッシュは節約しないとな、この調子じゃ薬局も似たような状態だろうし、毎度この日本人の習性は嫌になるな……いや人はみんなこんなもんか? 海外じゃ暴動が起きて根こそぎ持っていかれる映像あったしな、たぶんマシなんだろうな。
「んー財布の中が」
会計してる人も何か疲れた表情してたけど、忙しいのか……買い貯め勢の圧が半端なかったからその所為だと思うが。
いや、もしかしたら俺の会計が嫌だったのかもしれないと言う理由も微レ存か? そうだったら凹むな……。まぁさっきから喚いてるおばさんたちが原因だろうけど? 在庫が無いことを怒っても仕方ないだろうに、無い物はないんだから。
「しかし、冷蔵庫の中身が無いが入れるものも無いな」
それより問題はまともな食材が買えなかったことだな、特にたんぱく源が無い。豆腐とウィンナーが売り切れはちょっと驚いたな。
「他の店に……いや帰ろ」
スーパーからの帰り道、信号待ちの度にスマホを取り出して調べると出るは出るは、俺と同じ叫びを上げる買い物難民の呟き、どうやら思った通りどこも同じ状態の様で、スーパーなどの店側も納品が滞って来ているらしく、早々に閉めてしまった店もあるようだ。
帰り道で調べたのは買い物難民についての情報だが、やはりその対策にEマーケットを利用する人が多い。
「あっつぅ……エアコンは最高だぜ」
買って来た荷物で冷やしておかないといけない物を冷蔵庫の中に放り込むと、すぐにエアコン前に陣取る。一人暮らしだからエアコン付けっぱなしでも怒る人間はいない、と言うか最近の暑さはこのくらいしないと身の危険を感じる時がある。
「あああぁぁぁ……」
暑いは暑いが、去年の暑さとは少し違う気もする。と言っても毎年そんな感じがしてるから気のせいかもしれないけど。
「ん? 通知?」
なんだTの反応通知か、何が良いのか良く分からないが……悪くない。
最近だとどこでも同じような機能があるが、Tも呟きに対して色々な人が反応を示す。人が増え始めたばかりだからか『今日からT始めました。』なんてどうでもいい呟きにも【いいね!】と反応が来ることがある。何がいいのか分からないが、ぼっちの身だとその反応も心の栄養になるのだから馬鹿にできない。
「何か真面な呟きでも出来れば気持ちもまた違うんだろうけどな」
みんなはどんな呟きしてるんだろうね? トレンド機能を開けば大体愚痴か今起きている異常関連が多い印象だ。動画と文字しか使えないからどうなのかとも思ったが、意外と頻繁にやり取りがあるんだな。俺も何か動画でもあげればバズったり……ないな。そんな運は無いと思うので、気が向いたら上げる事にしてトレンドから行方不明関連をピックアップする。
「うーむ、洒落にならないくらい行方不明者出てるんだな、え、あぁなるほど……」
スーパーとかコンビニが早々に店閉めた原因がわかった。バイトが全員行方不明とかそりゃ店閉めざるを得ない。このコンビニなんかは店長以外がみんな外国人バイトだったらしい、そのバイトが全員行方不明になっては営業できないだろう。むしろ数日営業し続けただけでもその店長強すぎだろ。
「他人事じゃないんだよなぁ……休み明けどうなるんだろう?」
経済産業省、うぅお腹が痛くなってくる気がする。対応できる人間がいないんだから日を改めてくれないだろうか? いやほんとどこに行ったんだよ行方不明者、国も率先して動いてるみたいで、その一環がうちの会社にも来る人達らしいけど、どっちかと言うと空港に現れた人たちの対応に集中してるらしい。
「えーマジかよ」
あの日、突然消えた人たちと同時にあちこちの空港に現れた人たちは、着の身着のままだから生活保護を受けられるらしく、家賃が無料になって国からもある程度のお金が支給されているらしい。ついでにそんな人たちに賃貸を提供してくれるオーナーは国から家賃保証がされるらしい、格差がひどい……。
「こっちは給料が出るか不安なのになぁ」
行方不明者の影響で突然収入が消えた賃貸経営者が飛びついてるらしいが、住める状況にしないといけないとかで中々大変らしい。一方で突然日本に居た人たちは生活インフラも整ってきている様で、すでにスマホやPCからTに書き込んでる人間もいるようだ。不安を口にする人間もいるが、結構な額のお金が支給されたらしく豪遊してる人間もいる。
これが本当なら俺の給料より貰っているわけだが、どういう事だってばよ。大輔が何か呻いて叫んでたことがあったけどたぶんこれの事だな、あいつ辞めないよな? 辞められたら……俺も辞めるか、誰も止める人間なんていないだろうし、そのままバックレればいい気もしてきた。
「あーやめだやめだ! お腹空いてるから悪いこと考えるんだ。飯にしよう」
空腹でイライラすると悪い事ばかり考えてしまう。今はとりあえず腹に何か入れて寝てしまおう。考える時間はまだある、明日だって日曜で休みだからいくらでも悩める。
そうなればあとはご飯、飯炊いてTKGでも作るか、何だったら豪華に三つくらい卵使って飯も超大盛にして食って寝る! ドカ食いしよう。
「てなことがあってな」
「……気持ちがわかりすぎてなんも言えね」
「そんで建設的な事何一つできずに今日ってわけ、今日って日曜日だっけ?」
「月曜だ目を覚ませ、お前が頑張らないとこの会社がリアルにヤヴァイ」
そう、月曜にである。
土曜日のお昼はご飯超大盛卵かけご飯を腹がはちきれるそうなほど食べてそのまま睡魔に負けて就寝、気が付いたら深夜1時、すでに日を跨いでいた。それから風呂入って再就寝、起きたのは日曜日のお昼、ダラダラとスマホでTやネットの記事を読んでいるうちに夕飯時、もう絶望したよね。
「スマホ見てると世界は高速で進むのナンデダロウネ」
「わかるー」
ダメ人間が二人。
尚、本日業務に勤しむ会社の人間はこの二名である。
「どうする?」
「一応、何がと聞いておくわ」
何故ならば、そう何故ならば……俺の問いかけに大輔の視線がスッと俺の机の上に向けられる。
俺はこれでも綺麗好きな方だと思う。机の上はモニターとキーボードとマウス、それ以外は何も置いてない。とても綺麗で殺風景だが、それは仕事を勝手に載せられて置いていた物が壊されるからそうせざるを得なかっただけなのだが、紙って結構重いんだよ。
「朝来たら紙の塔が建築されていたことはあったけど、仕事以外じゃ初めてだよ」
「俺もそんな量見たの初めてだな」
机の上を綺麗に片付けて綺麗に拭き上げて帰って、休み明けの机の上が書類で埋まるなんて日常茶飯事であるが、まさか退職届で埋まる日が来ようとは思わなかった。普通それって部長の机に置く物じゃないだろうか? いやいや、そもそも他部署の退職届がここに集まるのがおかしい。
「これどうするよ?」
「さあ? 処理する人間がいないからな?」
そう、本来これは人事が受け持つ仕事で販売部の仕事ではない。どこにこの退職届を売りつけろと言うのか、馬鹿なのか? 置いた奴は馬鹿なのか? 総務課長の退職届もあるんだが、人事部の退職届が何でここにある? 処理するお前らが他部署に出してどうするんだよ。
「もう、国に全部任せて失踪したい」
「それだ!」
「どれ?」
「今日来る人に相談したらいいじゃんか! 俺って天才!」
今日来る人? えーっと、経済産業省所管、異常事態関連企業調査局……調査したらはいそれで終わり、というわけでは無いらしい。確かに相談するならここが丁度いいとも言える。
「それじゃ、相談してみるか」
「良いと思うぞ? 俺たちにゃもう無理だ。逃げる事は悪い事じゃねえ!」
妙な説得力があるけど、確かにこれ以上は手に負えない。たぶん、もうこの会社には社員が俺たちしかいない。全部の部署の人員を知っているわけじゃないけど、全ての部署の電話がこっちに回って来るんだから、ほぼ確実にそうなのだろう。何がどうなってるかわからないが、相談した後も仕事が忙しいのは確実だが……それまで俺の命は持つのだろうか。
いかがでしたでしょうか?
不毛な土日、あなたも経験したことはありませんか?五日間の労働の疲れが二日間でとれるわけがないんです。それでも彼らは働く、その名を社畜。調査局、その存在は彼らの助けになるのか……。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー