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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第67話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「そう言えばそれ何だったんだ?」


 ステーキとパフェを奢ってもらい満腹で眠くなってきた帰りの車中、陽太郎が声を掛けてくる。


 何故か帰りも助手席で、後ろの席に座っている子たちは全滅、円香さんは両脇を黒髪女子高生に挟まれて若干寝苦しそうな顔をしていた。そんな様子をバックミラー越しに確認しながら、手に持って弄っていた赤い石を夕陽にかざして小さく唸る。


「わからん。わからんがスライムからのプレゼントだ。ドロップ的な何かだろ」


 弄っていたのは赤スライムが荷下ろしの度に木桶へ入れていたらしい赤い石。最後の一匹が手に置いて行ったことで、木桶にも入っている事に気が付いた赤い石は、艶のある歪な丸い形をしており、一見瑪瑙の様に見えるがそれ以外はさっぱりわからない。


「そう言うドロップもあるんだなぁ」


「俺も初めて知った。……新しい何かを知る事は楽しいな」


「わかる!」


 わかっちゃうかぁ。やっぱ未知ってロマンだよな、後ろで寝ている女性陣に理解してもらえるかは分からないが、男の子だったらわかってくれるはずだ。


 しかし、親切にすることで貰える赤い石が、ただ綺麗なだけの石と言う可能性もあるわけで、あまり期待し過ぎないようにと思いながらも期待してしまうので、早いうちにサステナブルマーケットに持って行こうと思う。


「就職してから初めてのことはたくさんあったが、今ほどワクワクはしなかったな」


「夢がねぇ……」


 こっちは分かってくれない様だ。高校を卒業して、一人暮らしするために就職、初めての経験の連続だったけど、大人たちはみんなどこか腐っていて頼りにならなかった。なんか偉そうな話をしていたおっさんはセクハラしてたし、教育係の人は休憩の度にギャンブルの話しをしてくるし、まだ未成年なのにどいつもこいつも酒にたばこにと平気で進めてくる。


 いかん、いやな思い出で鬱になりそう。話題を変えよう。


「将来は決まってるのか?」


 聞いてておじさんみたいだ。他に話題はなかったのか俺。


「ぜぇんぜん、悩みの一つだなぁ」


「がんばれー」


「うわ、凄い気持ちを感じない応援だ」


 えーめっちゃ応援してるのに、そんなジト目で睨まないで、運転中なんだから前を向きなさい前を、応援してないわけじゃないんだから。


「俺みたいにはならないだろうから大丈夫だ」


「えぇ」


 と言うか、俺に応援されても嬉しくないでしょう。


 こっちは高卒そっちは大卒予定、こっちは前向きにフツメンと言っておくが、そっちはどう考えても爽やかイケメン、どう転んでも俺より良い未来しか待ってないんだから、案ずるより産むがやすしってね。これ男が女性に言ったらセクハラらしいですよ? 知ってた? 俺は知らなかったけど、女性社員が課長に言ってた。


 お局は首を傾げていたけど、女性社員に迫られて思わず頷いていたから、たぶんローカルセクハラか世代差によるセクハラなんじゃないかな。





 そんなこんなで高校生たちを先に下ろして最後に俺の番となり、マイホーム江戸川大地下道前で車から降りて背伸びをすると、思った以上に軽い音を鳴らす背骨、あまり健康に良くないと聞くがこれが気持ちいい。


「今日はありがとな」


「こちらこそ、面白い体験でした」


 後部座席の窓から顔を出しているのは円香さん、何でも二人は家が近所らしく一緒に帰る様だ。


 でも、俺のお礼に対して面白い体験とはいかに? これと言って彼女を楽しませるような一発芸をやった覚えはない。ついでに、会社で一発芸を強要された場合は、上司にたくさん酒を飲ませた後にすると良い、箸が転がっても面白がるくらいに頭がボケるので無難に終わらせられる。


「なにかしたか?」


「スライム君ですよ」


「ああ」


 どうやら彼女が楽しませたのは、俺ではなく俺に懐いたスライムみたいだ。たしかに、円香さんはずっと一匹の赤スライムを手の平に載せていた気がする。あのスライムの触り心地は程よい弾力があって気持ちよかったし、ずっと触っていたいと言うのも分からないでもない。


「あのスライムって人が近づくとすぐ逃げるので、ちょっとした自慢になります」


 逃げるんだ。


 確かに水没から救うまで近くに赤スライムが寄ってきてはいなかったのでそうなんだろうけど、あのあとはずっとスライムにくっつかれていたからそんなものかとも思っていた。動画撮ってTに上げていたらバズったかもしれないのか、あそこは盗撮防止でスマホ禁止だからどの道無理なんだけど、ちょっと残念。


「それじゃ、また遊ぼうな!」


 気が向いたらな。


「おう、行けたら行くは」


「それ来ないやつ!?」


「あはははは」


 こういう軽い掛け合いが出来る関係は得難いものだ。あの会社でやれてたのもある意味大輔みたいに雑に扱える同僚がいたからだろう。そう考えると……この関係も、もう少し大事にしてもいいかなとは思う。


「ふむ……楽しかったな」


 祭りの後の寂しさと言うやつか、自転車の駐輪代を払った事による財布のダメージ故か、夕方の空が寂しく見える。まだ残暑も残っていると言うのに、温もりを求めているようだ。


 湯冷めしたかな。


「本日最大の収穫は謎の石か……調べてもらわないとな」


 友人と言うのも大事だが、今はそんなことにかまけている余裕はあまりない。その為に今日最大の収穫である謎の赤い石を調べてもらおう。もしかしたらすごいお宝とか、凄い宝石とか、お金かお役立ちアイテムだったらいいな。





「混浴だと!?」


「ぐぅっ! 羨ましいっす!!」


 お役立ちアイテムなら良いなとやってきたサステナブルマーケット、昨日は温もりを求めていた心も、目の前の暑苦しさにすっかり引っ込んでしまった。


 赤い石を手に入れた経緯を説明したら急に震え出して叫び出す店長店員コンビの二人、どうやら俺が女子高生と女子大生のハーレム温泉物語を展開したことに怒りを覚えたらしいが、残念ながら俺のハーレムじゃなくてイケメン共のハーレムである。


 何だったら俺だって叫びたい気分である。


「お前は海に行っただろ!」


「海と温泉は違うっすよ!」


 海と温泉は違うんだ。でも布面積的には同じじゃないのか? 陽キャにはこの違いが分かるのか、陰キャには解らない違いか……疲れを癒す意味では海より温泉の方が良いとしか分からないな。


「温泉は最高でした」


「いや、そっちじゃなくてな」


 違うのか、二人とも俺の見解に異議を唱える様に手で何かを形作る。どうやらメリハリの良い女性の形をかたどっているようだが、あのメンツに手を出したら割と犯罪でじゃないだろうか? 確かに一部を除きスタイルは良かったけど……犯罪だな。


「学生は犯罪、イエスロリータノータッチ」


 俺も少女幼女の美しさはたしなむ程度には履修しているが犯罪である。そんな犯罪を進めてくるこの二人は警察ねーちゃんに通報した方がいいかもしれない。


「大学生もいたんだろうが!」


「女子大生っ!!」


 円香さんか、まぁ大学生だし年も近いので意識しないわけではないんだ。むしろ自分にもう少し自信があれば、アプローチの一つ二つ考えたかもしれないが、どう考えても住む世界が違う感じがしてその気になれない。その気になれないが、温泉に入る女子大生と言うのは良いものでした。乳白色の温泉が良い仕事をしていたと思う。


「良いものを見れました」


「貴様何を見た! 言え! 吐け!」


 店長、襟首捕まんでもろて、おっさんの顔を至近距離で見ないといけないとか拷問です。あと口臭い、コーヒーとタバコが混ざって最悪の匂いがするので、とりあえず店長は通報しておこうかな。


「いや普通に水着だが? 乳白色の温泉て良いよね」


「くぅっ! 俺も行きたいっす!!」


 襟首をつかむ腕をすごいパワーおててで握ると、店長はすぐに引いてくれた。俺が本気で力を入れたらやばいのは店長も知ってるからか、素早い動きでバックステップまでして距離をとる。


 ちょっと傷つくかも。


「野郎と行ってもな……若い女の子なんて知り合いに居ねぇし」


「俺も、居ないっす……!!」


 いないんだ。店員さんはチャラい感じだから結構いるんじゃないかと思ったけど、海とかでもナンパ……そう言えば化物が怖いとかで海も人が少ないんだっけか? もしかし海に行っても人が居なかったのかな。


 まぁ野郎の愚痴なんて聞いても仕方ない。今日の目的は温泉自慢じゃなくて赤い石を調べてもらう事だ。いい加減調べてほしいんだけど、何かしてたけどもしかしてもう調べ終わってたりする? てことは、もしかしてただの石だったのか? 教えて店長。


「それで、それって何かわかりました?」


「ん? ああ、わからん」


「えぇ……」


 わからんて、そんな一言で済まさないでよ。


「こいつは結構高いX線元素分析装置なんだがな、特定できない」


「特定できない?」


 ん? 雲行き変わって来た? たぶん割れメタル調べる時に使ってるやつだと思うけど、それで石の種類とかも特定できるんだ。ハイテクってスゲー……いや特定できなかったのか。


「含有率なんかがわかるんだが、何度やっても高い数値が出ねえ。ようはこの石のほとんどは、この装置じゃ分析できない何かって事だ。……あるんだよ、化物由来の物質には未知の物質がさ」


「この赤いのが未知の元素かぁ……」


 多分その機械も調べられる物と出来ない物があるんだろうけど、それでもただの石が調べられないてことはないだろうから、やっぱり未知の物質なのかな。


「ふぇぇ……ロマンっすね!」


「ロマンだねぇ」


 確かにロマンだ。この間の透明ない石はその機械使ってなかったけど、使ったら同じような結果が出るのかもしれない。そんなことを考えるだけで胸が熱くあるのを感じるが、これが血筋と言うやつかもな。


 うちの家系は、大体みんな未知の探求を仕事にして早死にしてるらしいから、気を付けておこう。……先ずは、その未知の石が何かの役に立たないか、他のドロップを一緒に実験して行こうと思う。



 いかがでしたでしょうか?


 未知なるロマンは彼を導くかのか、それとも殺すのか。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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