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第6話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





「おおおぉぉぉ……」


「とりあえず、落ち着いたな」


 今日は金曜日、休日前に駆けこみの様な電話が朝から鳴りやまず、しかし現状を伝えると何とか理解を示してくれる人が多くて助かった。政府の発表は混乱も生んだが一定の事前知識にはなっている様だ。それでも色々心配する声も多く、こっちも状況把握しきれていないので、追って連絡予定のメモ束が厚くなっていくばかりである。


「なんでこんなことに……」


「結局みんな我が身が可愛いって事さ……」


 しかも、所在が確認出来ている社員も一斉に有休をとって休み始めたのだからたまらない。そっちに掛かってくる電話も、ほとんど全部俺たちの所まで流れてくるんだ。用件だけ聞いてメモを残してはいるが、それだけでもこっちの作業時間が削られるので、心の中で有休とった連中への報復を考えているところである。


「ゆるさねぇ、特に総務課長」


 そう、大輔が恨みを垂れ流すように、特に許せないのが総務課長、現在所在確認が出来た中で一番偉い人間だが、旅行に行ったらしい連休明けなのに、さらに有給使って休むとか言い始めたのだ。どう考えても面倒事を回避する為としか思えない行為に、大輔も俺も電話を切った後ぶちぎれて叫んでしまった。


 尚、随分と事件性がありそうな叫びだったのか警備のおじさんがすっ飛んできたのはどうでもいい話である。


「……嫌なら休んでもよかったんだぞ?」


「……年下が頑張ってるのに休めるかよ」


「損な性格だなぁ」


 一方で珍しいのが目の前の大輔だ。いつもならもう有休でも欠勤でも何でもして休むと思うんだが、面倒極まりない今も休んでいないのだ。問いかける度にこんな返事、妙なところで律義な男であるとも思うが、どうにもその表情が気になるところ。


「ばれたら」


「ん?」


「ばれたら親に追い出される」


「何が?」


 どういう事? ぼそぼそと呟き始めたかと思えば追い出されると来た。何かやらかしたのだろうか? 借金か? 無駄遣いか? ギャンブルか? ……どれもありそう。


「俺が家から追い出される。おまえ、俺の家族から評価良いんだよ……」


「は? 何かしたか俺?」


 俺の所為? いやいや、ん? 俺お前の家族に会った事すらないんだがなんでそこで俺が出てくるんだ。教えてクレメンス。


「教えてやらん!」


「うるさ」


 アホうるさいし教えてくれないらしい。こういう時は絶対に教えてくれないのが大輔だが、気になるは気になるがまぁどうでもいいので仕事に戻る事に……なんだもうお昼時じゃないか、電話も来なくなったし少し早いがちょうどいいか。


「腹減った」


「飯にするか、テレビも付けよう」


 どうやら大輔の腹時計も昼時らしいので、手元のリモコンで完全に俺達の机の前が定位置となった大型テレビをつける。このくらいのサイズのテレビを部屋にも欲しいが、部屋が狭いので圧迫感が半端ないだろうな。


「今日は当たり無しか」


「Eマーケットか」


 今日のメニューはコンビニの握り飯とサンドイッチ、ここの所コンビニの品ぞろえも悪くこんなものしか買えなかったが、どうやら大輔はEマーケットを使ったらしい。何もない所からおにぎりが落ちてくる。


「おう、便利過ぎてもうこれが無いと生きていけない体になった」


「早いな、そんなにいいのか?」


 もうかよ、まだ数日だと言うのにどれだけ使ったのか、当たりが無いと言う事は何か良い物でも出て来た経験があるようだ。完全にガチャ中毒者のそれである。


「つかってねぇの? 当たるとすげぇぞ? 手の平からはみ出るようなでけーエビフライが一本入ってたからな」


「一回だけ使ったけど、満腹になろうとするとマネーがなぁ」


 エビフライ一本入ってくるおにぎりか、そんなのが普通に出て来るなら俺も買いたいところだけど、外れもあるし割と高いんだよなEマーケット、そんなにEマネーもたくさんあるわけじゃないし。


「あー結構高いよな」


「毎日増えてるけど大した量じゃないんだよな」


 毎日数百円? 数百マネー? 増えているがまだ少ない、ガチャは100連くらいやらないと満足できないんだよ。かと言っておにぎりばかり100個出て来ても困るんだけどさ、やっぱ戦いは数だよ。


「それなー、あれ仕事した日は増えるらしいぞ?」


「マジ? じゃあ明日と明後日は増えないのか……」


 Eマネーの増える原理も判明しつつあるのか、大輔は話しながらスマホで何か調べ始める。


 仕事をしていると増えると言う事は、給料の様な物か? でもそうなると休日は増えないから明日と明後日はEマネーが増えないと言う事か、いや? 明日は増えてその先か? わからんがとりあえず100連ガチャはまだまだ先になりそうだ。


「あと人に親切にすると微増するとか、異界の扉の緑タワーにゴミ入れると増えるとか、色々噂はあるな」


「へぇ……異界の扉ってなに?」


 親切にと言われても何すればいいのか、それに異界の扉とか中二病の患者が好きそうなもんはなんだよ、とってもわくわくするじゃないか。


「陥没だよ、どうも中が異次元らしいぞ?」


「異次元……」


 陥没のが先が異次元か、前に見た動画は普通に洞窟みたいだったから異次元と言われてもピンとこないな、しかもどの動画も途中で突然映らなくなっていたし、すごく気になるけど入れないからな。


「周辺の地面は掘り起こせないくらい固くなるし、大きく迂回して掘っても陥没の内部に到達しないんだとさ、だから異界の扉、面倒なんで異界だけで呼ばれてるな」


「ネット?」


「そそ、テレビは当たり障りのない内容しかやってねぇから面白くねぇ」


 やっぱりニュースよりネットの掲示板とかSNSの方が情報早いよな、それにしても周りに穴掘って調べるとかアグレッシブと言うか、よく警察に捕まらなかったな? あそこって警察とか自衛隊で封鎖してるんじゃないのか。それにそこでタワーと言えばあれだよな?


「てことは緑タワーってあれか、あの大きな塔だろ? ゴミ入れる? にも封鎖されてるんじゃないのか?」


 陥没の入り口付近に必ず存在する緑色をした謎の塔、割と大きくて円錐状の塔だけど、ゴミを入れられる様な穴があるのか、見てみたいけど封鎖されているとか聞いたぞ? そこまで封鎖を突破した猛者がいるとか暇人多いな。


「封鎖は一部だけで、あれ自体は日本のあちこちにあるからな、検証好きが田舎に集まってるらしい。ただいっぱい入れても数マネーらしいけどな」


「へぇーゴミ捨て場所にはもってこいか」


 あちこちにあるのか、それにしてもゴミか……まさか、不法投棄に対する救済だとでも言うのかな? まぁ環境破壊の原因にはなるけども、でもいくらでも捨てられるなら便利な事だな、あーでもタワーがいっぱいになったら打ち止め? でも異界とか言う不思議現象があるなら無限なのか? わからん。


「それも禁止されそうだけどな、ほれ?」


「んー? 資源不足による総合リサイクル強化推進法、初耳だが?」


 テレビを見るように促す大輔、そのテレビでは新しく決まった法律の話をしている。


 海外と全く連絡が取れず、また直接行っても国が無い。今も国は消失した人工衛星の代わりに飛行機であちこち飛び回って人や国を探し回っているらしいのだが、どこを探せどもまったく見つからない。そうなって来ると、燃料に原材料に中間生産物やらを輸入していた日本はすぐとは言わなくても物が無くなる。そのための総合リサイクル強化推進法らしい。


「今日出て今日決まったらしい。他にも色々決まってるぞ」


「最近は帰ってもすぐ寝るし、朝もギリギリまで寝てるからニュースここでしか見ないんだよな」


 ここのとこ疲れて毎日そんな感じだが、今日出て今日決まったって早すぎるんだよな。あぁでも俺には関係ないっちゃ関係ない、不法投棄の厳罰化とかリサイクル業の規制緩和とか補助金とか、関係ありそうなのはあまりないようだ。


「他には新しく恩恵を管理する国の組織が出来たり、人口の再調査が始まったり、音信不通の会社が増えたからそっちも調べるんだと」


「うちじゃん」


 うちじゃん。音信不通の会社とか、社員の大半が音信不通のうちとか適用されるんじゃね? 国が助けてくれるの? 助けてよ、てかいなくなった奴ら探してくれよ、どこ行ったんだまったく。


「一応、辛うじて、首の皮一枚で生存してるから……対象になるのやら?」


「……結局行方不明っぽいよな」


「……だな」


 微妙に助けてもらえない可能性が高いのなに? マジで今回の大量行方不明者って何が原因なんだろう、俺らとほかの社員でどんな違いがあるんだよ、性格悪いくらいか? まぁ俺も大概口は悪いし大輔はダメ人間だけどさ。


 思わず一緒に溜息を吐くと今は聞きたくない電子音が鳴る。


「ん? 電話?」


 俺の机ではなく大輔の机の電話、聞こえてくる音は内線、それぞれに内線番号が振り分けてあるので大輔に用件だろうか?


「はい柳沢です。え? 知らないところから電話来てる? 何でうちなんよ、え? 他部署誰も居ないから? ……わかったこっちつないでー」


「ん?」


 この話し方は警備かな? 大輔は警備と仲が良いので相手が誰か分かったらすぐ敬語じゃなくなる。何故なら昔、警備だからとふざけて電話に出たら相手は社長だったらしく、あの時はめちゃくちゃ怒られ、ついでに俺までとばっちりを受けたのだ。それ以来、最初は警戒することにしたらしい大輔であるが、何やら雲行きが怪しい。





 電話が終わった。そして説明を受ける。俺は逃げ出したい。


「と言うわけで、噂をしたらなんとやら」


「異常事態関連企業調査局……あった、詐欺じゃないっぽい」


 今のご時世調べればすぐに何でもわかるんだけど、この調査局も最近できたようだ。その割にはホームページが随分しっかりしている。


 異常事態関連企業調査局、今回の異常現象で引き起こされた被害を受けている企業の調査と把握、人口統計とかいろいろな統計にも使うデータを集めたり、分析したり、これあれだよテレビでやってた調査するところだ。


「休み明けに来るらしいけど……対応は任せた!」


「は? しね」


 しね。


「直球やめて!?」


 あほな事を言うお前が悪い。


「お前も手伝うんだよ!」


「いやや! 絶対めんどくさい! 経済産業省って名前聞いただけで頭痛くなる!」


 どんなに喚いたところで知らん! 俺だって経済産業省とか名前見ただけでめんどくさい表情になるわ! 絶対お堅い人たちだろ! そんなもん地面にほっぺゴリゴリくっつけているような下っ端社員が対応して良い人らじゃないんだよ。


「すでに頭いてぇんだよ!」


 大体が有休で十連休追加とか行ってきた総務課長の時点でこっちは頭痛いんじゃ! やってられるか糞が! しね! あの陰湿眼鏡達磨!!


「いややいややー!」


「おれもいやだー!」


 尚、警備が慌てて駆け付けるまであと30秒である。



 いかがでしたでしょうか?


 経済産業省所管 異常事態関連企業調査局。目が横に滑り舌を噛みそうになる様な名前を前に幼児退行する羅糸と大輔、果たして彼らは謎の組織相手に戦えるのか……!!


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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