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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第54話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。





「……んー?」


 うるさい、この音が鳴ると嫌な仕事の話を聞かないといけないから嫌いだ。心臓がドキドキしてくる。気持ち悪い通知音だ……。


 通知音? スマホか、電話だな……はぁ、仕事辞めても仕事の電話が掛かって来たと思って体が反応するとか、深刻なストレス障害だよ。


「目覚ましの時間より1時間早いんだけど」


 いや、1時間以上早いな? まだ6時になったばかりじゃないか、仕事していた頃はもう起きていないといけない時間だけど、健康の為にはまで寝ていたい時間だよまったく誰……大輔やんけ。


 切れたんだが。


「つまんない話なら家電の方に電話して苦情言ってやる」


 何か家族に云々言ってたから家電に電話した方がダメージでかいと思うんだよね。ほらはよ出ろ、さもないと貴様の家電に電話するぞこどおじめ、お前の家の電話の番号は会社時代に把握済みなんだ。なんで大輔が遅刻や病気の時の所在確認を俺がやる事になっていたのか、今でも理解出来ないし理不尽に感じる。


「……出ないな」


 スマホを耳に当てているのも怠いので、スピーカーに切り替えて折り畳みテーブルの上にスマホを置く。ついでに起き上がって背を伸ばすと背中からバキバキと音が鳴る。


「ん?」


 スマホのスピーカーからガチャガチャと音が聞こえたかと思うと、小さな大輔の声が聞こえてきた。何を慌てているのかよく聞き取れない音が聞こえて来るけど、すぐに笑い声が聞こえてくる。


「羅糸お前晒されてんじゃん! ワロス!!」


「……よーし、家電のほうにでんわしてくじょういれるぞー」


 よし! 苦情の為に家電に掛け直そう、そうしよう。そうと決まればこのくそウザイ声が聞こえてくるスマホは切ってしまおうじゃないか。


「おま!? 止めろよ洒落んなんてねえから!」


 洒落になって無いそうだ。


 この声から結構本気で洒落になって無いのか、その後もしばらく謝罪と引き留めの言葉が聞こえてくるが、本気で分からない。なんでそんなに大輔の実家で俺の評価が上がっているのだろうか? 本当に覚えがないので困ってしまう。


「朝からなんだよ」


「いやいや、お前Tで晒されてるって」


「あれか、知ってる」


 なんだあれの事か、寝たら忘れるかと思って寝たのに目覚まし前に思い出させるとか、大輔マジ大輔だは、空気読めないにもほどがあるのでやっぱり家に電話して苦情申請するべきだろうか? てかなんでお前は知ってるんだ。


「わざと?」


「んなわけない」


「だよなぁ」


 わざとではないけど、何でもお見通しのような大輔にはイラっとする。朝一起き抜けでお腹も減ってるから余計にイラっとするのかもしれない。とりあえず喉も乾いてるしEマーケットで買った水でも飲むとしよう。


 うん、ちょっとすっきりした。


「昨日の夜に骨殴ってたの誰かに撮られてたみたいんだな」


「無断か、まぁもう流れてるから完全削除は無理だな」


 わかる。


 一度ネットに上がった物は削除不可能だろうな、世の中絶対と言っていいほどにこの理論は通るのだ。何の物好きか動画を保存する人間は結構居たりするんだよな。


「通報だけしといた」


「Tは対応遅いからなぁ……どんまい!」


 遅いのか、一応通報したけどあの話の流れだと動画投稿主の自作自演だと思われてそうだし、他に通報してくれる人も居なさそうだから余計に対応が遅いかもしれない。


 諦めの感情と共に怒りの感情も湧き出てくるが、たぶん何割かは大輔に対する苛立ちだと思うので顔面に一発入れてやりたい。


「楽しそうだな、大輔にも一発入れてあげるよ。恩恵無しでぐっすり逝けると思うよ」


「それ目覚めないやつ! ……でもそれって恩恵の副次効果ってことだろ?」


 勘の良い奴め、副次効果でちょっと気分良くなったと言うのに世界は全力で俺を追い込むんだよな。いや、世界と言うより人の世が俺の人生を邪魔しているようにも感じる。だってこの異界自体は俺にそこまで厳しくない……ことも無いな? 割と危険が危ない。


「まぁそう」


「すると、羅糸の恩恵ってかなりピーキーじゃね」


「……そだな」


「ピーキーな恩恵程副次効果が高いとか言う噂はほんとうだったわけか」


「そうなんかな?」


 世の中もっとピーキーな恩恵幾らでもありそうな気もするけど、俺でこれならそいつらの副次的な恩恵ってどんな力を発揮するのだろうか? 下手するとアメコミヒーローみたいな感じの力とか発揮しちゃうんじゃないだろうか、ちょっと興味がある。


 それにしてもこの男楽しそうだな。


 スマホの向こうから聴こえてくる声が実に明るく楽しそうで、その顔がどんな表情をしているかも容易に想像が付く。そんなもの想像がついたところで嬉しくもなんともないのだが、何がそんなに楽しいのか、あれか? 他人の不幸は蜜と言うやつか? シャー何とかって言うかっこいい名前もあるやつだろ? ……なんだかとても腹が立つ。


「まぁお前が自分で発信したんじゃなければいいや」


「いいのかよ」


 ん? そんな感じでもないのかほっとした声のような少し残念な感じのような、これは何か良からぬことを考えていたっぽいな。


「いや、もしTライバー目指すなら手伝ってやろうかと思ってさ」


「Tライバー?」


 なんだそのちょっと前まで大人気だったけど。異変が発生して仕事が全て無くなった業界のような名前は、ネットを見れば彼らの悲鳴が今でも聞こえるし、ファンなんて自殺未遂まで起こしていると言う。


 正直、気持ちも分からないでもない。中には例の失踪で居なくなった人も居れば、海外住みの者までいる配信業界。俺も好きな配信者が居たけど、所詮はコメントも残さないにわか、ガチ恋勢の心中など察せるわけもない。


「おう、新世代の動画配信者だよ。一部の異界はスマホの通信とか可能だろ?」


「うん、ここもそうだな」


 どうやら悲惨な目に遭っている者達もただ黙っているわけではなさそうだ。大手動画配信が使えなくなった今、使えるところで配信業を続けるつもりの様だ。それにしてもTか、Tで生配信とかできないはずだけど、それでライバー業とか言えるのかな。


「だから、異界内部で戦う姿を動画にしてTに上げるんだよ」


「それってライバーなのか?」


 やっぱり動画か、いやまぁ動画しか上げない配信者も居るだろうから問題は無いんだろうけど、それはライバーと言えるのか、それにもっと大きな問題がある。


「そこだよ! 今度Tがアップデートでライブ配信できるようになるんだ」


「へぇ」


「だから新世代、羅糸もその波に逸早く乗るのかと思ったけど、違ったか」


「ちがうなー? てかそんなことして意味あるの?」


 逸早く俺が波に乗って配信者になる? そんな事は天変地異が起きても無いと思うんだけど、それに問題はTに課金をできるシステムが無いと言う事だ。最近は大体のSNSで収益化が出来るようになっていると聞くがTはそれが無いので、そんなとこで配信者になってどんな意味があるんだろうか、いや楽しいと言うのは良い事だと思うけど、みんなそんなに暇じゃないだろう。


「外部の集金システムを使って金稼ぐんだってさ、エロいのTに上げてる人がもうやってる」


「エロ系は手が早いなぁ」


 エロか、確かにTにもえっちな動画を流している人は居ると聞く、興味は普通にあるけど今はそんなことしてる余裕がないのでまったくわからない。


 しかし外部の集金システムか、欲しいものリストで物を送ってもらうと言う文化も、今は物流が停止しているし、会社自体が機能不全を起こしていて利用できなくなっていると聞いたが、新しくそう言う会社が出来たのだろうか。ちょっと気になる。


「売れるからな」


「人は愚か、でも気持ちは分かる」


 うんうんと頷いているが、さては買っているな? まぁ野暮なことは言わないがほどほどにな、前にも推しの配信者が出来たとか言って投げ銭投げて彼氏バレで轟沈していたの、忘れてないぞ。


「それな」


 あの時は備蓄カップ麺をやけ食いして吐いてたのでちょっと不安である。



 念の為に問い詰めてみたところ、すでに結構な投げ銭をしている事が発覚してから小一時間後、俺はスマホを充電しながらお腹を摩っていた。


「昨日はあまり食べずに寝たからお腹が……」


 お腹が減った。


 昨日はシュールの所為で食欲がなかったからおにぎり数個で済ませたけど、流石にお腹が減っている。かと言ってあの缶詰めに手を付ける勇気はまだない、と言うか手を付けるにしてもあれの問題を解決してからになるだろう。


「今日はあれを狩らないといけないからあまり食べたくないんだけど」


 シュールストレミングバッタ、アレを安全に狩れたらきっとこの缶詰も食べられる様な気がする。たぶんトラウマみたいな精神的障壁が、この缶詰と俺の間にはあると思うんだ。


 あと単純に腹が立って来ている。改めて昨日のことを思い出したら、あのバッタに対して妙な苛立ちを感じ始めた。


 多分それは一日経過したことであの匂いのショックが抜けて来たことと、昨日のTで見た謂れもない誹謗中傷が合わさって苛立ちが相乗効果でマッハだからだ。あとついでにさっきまで話していた大輔に笑われたのも足しておこう。


 怒りで動く時は少しでも火が長引く様に薪が多い方が良い。


「食わないと先ず動けないか」


 でもまずは一番大事な空腹を満たす事から始めよう。予定より早く起きたけどもう予定の時間を過ぎている。おにぎり一個と……二個を水で流し込んで準備を始めよう。


 待ってなくてもいいけどシュールバッタめ、新たな恩恵を使えるようになった俺の力を見せてやる。



 いかがでしたでしょうか?


 新たな力に気が付き立ち上がる羅糸の戦いは如何に。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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