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第48話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「お? お疲れさん」


 店長が出迎えてくれる。今日はこれで三度目なので挨拶も割と適当になっているし、表情も少し呆れ気味な様子で笑っている。


「今日はこれで終わり」


 三回目のガソリンタンクは全部で11本、少し余裕を持って往復したが今日は曇っていて涼しいのでそこまで苦にはならなかった。


「おう、てか最後に支払いの方が効率いんじゃねぇか?」


「それもそうかも、誤魔化すなよ?」


「するかそんな事、姐さんにコロサレル」


「そんなに怖いかな?」


 そんなに怖いだろうか? 都度清算より一度に清算してもらった方が効率がいいかもしれないが、ねーちゃんが怖いから誤魔化さないと言うのはどうなんだろう。それってねーちゃんが関わらなければいくらでも誤魔化す気でいる様な、問題ですね。


「お前はお気に入りだから本性を知らないだけだ」


 ねーちゃんの本性ねぇ? 確かにまぁ結構怖い所はあるけど、本質的には優しい人だと思うけどな。じゃなければ俺みたいなクソガキ相手にこんな長い間付き合ってられんだろ。


 かと言って今ねーちゃんに会うのはちょっと危険な気もするので、しばらく会わなくていいかなとも思う。かと言って危険だけど問題はないとも言えるし、店長の怪しい言動も気になるし、どうするかな。


「本性かぁ、今度会ったら聞いとく「まて」ん?」


 おや? どうしたんですか店長そんなに顔色わるくして、うーんその顔を見ていたら益々ねーちゃんと会いたくなってくるな、なんだったらお洒落なカッフェでアホみたいに長い名前のドリンク頼もうかな。金は無いけど、ねーちゃんなら奢ってくれそうだ。男の子の沽券にかかわるので割り勘にするけどね。


「そんな惚けた表情しなくてもわかっている。何が欲しいんだ」


「別に脅すつもりはなかったんだけど」


「うそこけ!」


 せやね、嘘ですね。こう言っとけばまた不良在庫押し付けようとは思わんだろう。普段からそう言うこと考えている人は、怖いものがあってもふとしたことでやりかねない。その人の性格と言うか本質的なところで拗らせたものって、理性の制御をポンと超えてくるんだよ。


 俺は上司のおかげで詳しいんだ。


「ほんとだって家庭用蓄電池が欲しいだけで」


「要求あんじゃねぇか!」


 今日も店長のツッコミはキレッキレですね良いと思います。ほら後ろで海に行って日焼けした店員さんも笑ってますよ。M-1狙えるんじゃないですか? しらんけど。


 ガソリンを運んでくれる店員さんは堪え切れないのか笑いながら運んでるけど落とさないでね? あと店長めっちゃ睨んでるけど大丈夫だろうか。


「野宿でも使いやすいの無い? 置いてあるのいくつか見たけど結構大きいじゃん?」


「アウトドア用品の方になら手頃なのがあるだろ」


 それはそれとして家庭用蓄電池、これが今日の目的なんだけど、前に店内見て回った時は屋内用の大きいものしかなかったんだよね。アウトドア用の蓄電池ってどんなものなんだろう? 会社に置いてあったのも全部室内において使うものだったし、パソコン用のものは小さかったけど壊れないのが良いな、部長がITだとかなんとか言って買ってきたやつは1年で壊れたし、丈夫なのが良いな。


「……そう言えばどこで野宿してんだ」


「あんぜんなとこだよ?」


 まぁ俺の話聞けば野宿なのは疑いようがないか、うん、安全なところで野宿してるから、もしねーちゃんにバレても問題ないはずだ。店長から話が洩れたとしても、いや異界だとバレてもその話は店長のおっさんから聞いたことだから、不用意にばらしたりはすまい、でも教えない。


「……姐さんが怒っても俺は助けんぞ」


 おっと、その顔は全てを察しましたね店長、勘の良いおっさんは嫌いじゃないですよ? あなた今その話をねーちゃんにばらした場合の未来まで予見しましたね。その苦虫を噛み千切ったような顔は自分の撒いた地雷に気が付いた顔ですよ? 大輔がやらかした時の顔によく似てマース。


 あと失言をしたときの山本のおっさんもそんな顔してましたね。失言するなら変な話をしないでほしいと思う。


「怒らないと思うけどなぁ? 呆れはしそうだけど」


「どういう関係なんだよ……」


 過保護なねーちゃんだから多少お怒りになっても、ガチおこプンプン丸にはならないんじゃないかなと希望を持っているので、是非とも黙っていてほしい所存です。


 良いですねここテストに出ますよ? 当然店員さんも黙っていてね? 無言で頷いてるけど何でそんなに顔色が悪いの? 睨んでないよ? 目は死んでないよ? お願いしてるだけだからね。





「三往復で1.8万円、バッテリーが1万円」


 差し引き八千は一日の収入としてはどうなんだろう。アウトドア用のバッテリーも容量多いのにしたからか結構高かった。


「安いと言えば安いけど、お金たまらないなぁ」


 それでも定価より安いしほぼ新品と考えれば安いんだけど、貯金できるほどお金が溜まらない。


「家賃が必要なくなったから治療費は払い終えたけど、貯金は底をついたし財布は寂しい」


 治療費はもう払い終えたんだけど、通帳の中身はとても寂しい事になっているのでまったく安心できない。また大火傷しようものなら今度こそ破産で借金地獄だ。最低でもあの治療が受けられるくらいの資金は貯めておきたい。


 そこが安全に生活する為の最低ラインになると考えた方が良いと思う。欲を言えば無税で5000兆円ほしい。


「贅沢は出来ないなぁ……銭湯か、こんなところにあったんだな」


 銭湯が見える。いつも通る河川敷から見える煙突、銭湯なんてしばらく行ってないけど、見た感じ綺麗で銭湯と言った雰囲気ではない。


 おっさん立ち入り禁止じゃないよね? ……うん、お金はあるし入ってみよう。


「……行くか」


 ここは異界からも近いから、確認が必要だ。





「最高だった。そして思ってたのとだいぶ違ったな」


 よく行っていた銭湯の様に入り口から男女に分かれていなかった。自動ドアを開けて入れば明るく広いロビーが広がっており、見渡せば左のスペースにマッサージチェアーやリクライニングな椅子、中央には大きな水槽の柱と券売機、右を向けば大きなソファーと畳のスペース、おばちゃんたちがビールを飲んでいた。


 あれは常連と言うやつだろう。


「完全手ぶらで良いとか楽すぎる」


 数台の券売機には大人と子供の入浴券以外にもタオルやシャンプーのレンタルや飲み物や食べ物、酒だけでも結構種類が豊富で、ちょっとしたスーパー銭湯だ。こんなところにこんな良いものがあるとは、しかも値段は他の銭湯と変わらない。


 それでも学生の頃に比べるとちょっと高くなった気はするな、仕方ないと言えば仕方ないのだろうが、懐が寒いとどうしても気にしてしまう。


「休憩スペースも広いし、ここは通いだな……帰るのが怠い」


 風呂から上がって座ったソファーも程よい硬さと柔らかさで沈み込む。久しぶりに飲んだラムネも夏を演出して最高だ……いかん、寝てしまう。あぁせんぷうきの風と風鈴のおとが……やばいやばい、近くのおばちゃん笑ってるよ。


「さっさと帰ろう」


 これ以上この場に居たらぐっすり寝てしまいかねない。次は着替えも持ってこようそうしよう。


「ん?」


 外からロビー入って見て右手側にずらりと並ぶ靴箱から靴を取り出す。今履いている無料のサンダルと履き替えたらサンダルは使用済みの箱に入れるらしい。衛生的で最高なんだけど、顔を上げたら視界の端に妙な光景が入り込む。


「そんなぁ……」


 そこには小さな声で呟きながら何か探しているのか鞄の中を掻き混ぜている女性、と言うよりあれは学生くらいだろうか、券売機の側で何かを必死に探す姿からある程度何があったか察しはつく。これは無視一択だなと踵を返そうとした鋭い眼光が飛んでくる。


 恰幅の良いおばちゃんがビール片手に無言で何かを訴えて来て居いた。周囲を見渡せば視線を必死に逸らす男達、どうやら俺に話しかけろと言いたいらしい。非常にめんどくさい、非常にめんどくさいが、気になっているのも事実、まぁあんだけ睨んで親指でジェスチャーして来るくらいなら、声かけただけで警察は呼ばれないだろう。美人局の可能性も微レ存だけど……。


「どうした? そんなとこ座り込んでたら危ないぞ?」


「え?」


 うん、驚いた顔ありがとうございます。視界の端でチラチラと見ているおっさんどもめ、気になるならてめぇが逝けよな、まったくそんな不安そうな顔されたら傷つくんだよ。


「おっと、痴漢でもナンパでもないぞ? どうした?」


「あ、いえすみません。もう帰るので」


「……財布忘れたんか?」


「うっ!?」


 当たりである。


 不信感マシマシの表情がキョトンとしたかと思えば、痛い所を突かれた言った感じで苦み走る顔。


「分かりやすい反応だな」


「……っ」


 実に分かりやすい反応だったのでつい本音が漏れたがそんな睨まないでほしい。同じ学年で3番目くらいに可愛いレベルの女の子にそんな顔で睨まれたら陰キャは死んでしまうんですよ。ここテストに出ないけど重要だから、陰キャの心はトイレットペーパーより脆いんだからね。


「そう睨むな、これだけあれば足りるだろ。よく温まって帰るんだぞ?」


 俺えらい、不信感と嫌悪感で歪む顔で立ち上がろうとする少女の手に千円札を置く。人間は突然手元に何か渡された場合、咄嗟に受け取ってしまう事が多い。これは陽キャが女子にゴキブリの玩具を握らせていた時に学んだ。何故なら俺も掴まされたからである。


 窓から投げ捨てたら怒り出すし、これだから陽キャは嫌いなんだ。


「わ!? わっと、え? 貰えません!」


「やらん、貸すだけだ」


「え?」


 誰がやるか、貸しただけなんだからね! 女子ってすぐそうやって奢ってもらって当然みたいに話すけど、僕はそれで何度も断られて傷ついてるんだから奢るなんて言わない。貸しは作りたくないとか言う男気女子が多くて困る。陰キャが偶に頑張ってるんだから奢られてろと言うのだ。


 視界の端でおっさん共が駄目だししてるが、月夜の明るい晩ばかりと思うなよ。


「金に余裕がある時にでも返せばいい」


「でも、あちょっと! 待って!」


「待てと言われて待つ奴など居ない!」


「えええ!?」


 誰が待つか、どう見ても未成年だぞ? そんな相手におっさんが変なことしてればおばちゃんは通報しなくても他の意識高い系が通報しかねない。


 そう言えば飛び降り系女子を救助した時の正義マンは今頃何をしているだろうか? 順当にハーレムを増やしているのか、それとも修羅場ってるのか、もう他人なので出会う事はないだろうけど元気で正義しているのかな。


「……通報されないと良いなぁ」


 荷物を広げてたし外に出てしまえば追ってこないだろうとは思うが安心はできない。慢心ダメゼッタイ。その合言葉を胸に自転車のペダルに足を掛ける。


 ちなみに漕ぎ出そうとした目の前にさっきのおばちゃんが立っていたんですが、何者でしょうか? 俺より後に出てきて俺の目の前に回り込むとか暗殺者ですか? 銭湯の割引券とかもらっても全然嬉しいんだからね! これで次回は安く風呂に入れるぞ! ありがとうお姉さん。


 優しい女の人はみんなお姉さんなんだよ? ここテストに出るからね。



 いかがでしたでしょうか?


 優しい女性はみんなお姉さん、これ大事だよ。間違っておばちゃんとか言ったら命を刈られるからね!


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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