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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第44話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「うーん、本格的に不味い」


 自衛隊の人たちから感謝の言葉と知りたくない事実を教えてもらった帰りに寄った不動産屋、初めて訪ねた不動産屋であるが、どの店に行っても予定希望価格を伝えた瞬間無理だと言われた。


 何がどうなっているのか、どうやら俺の要求価格は最低価格にも満たない様だ。それはたとえ値引いたとして許容できない様で、不動産の人も説明しながら変な顔をしていたのだが、あれはどういう感情なのだろう。


「とりあえず異界は無くとも、一時的にどこかで野宿コースかな」


 野宿はどこがいいだろうか、公園、河川敷? 最近はホームレスに対する目は厳しいものがあるだろうから、ネカフェとか転々とした方が良いだろうか、その方が良い気もするけど……。


 夕陽が眩しい、河川敷から降りて街中を走っているが時折ビルの隙間から西日が目に刺さる。


「テント用具の申請書類作っとくか」


 事故に気を付けるためゆっくり走りながら野宿に必要なテント用具を思い浮かべるが、大体は会社の備品で揃いそうだ。一体どういう会社なんだろう、数年務めた程度では理解出来なかったようだ。


「ガソリン屋さんでーす」


「それは違法だからやめとけ」


「そうなんだ」


 ガソリン屋さんは違法らしい。サステナブルマーケットに自転車を押しながら入るなり店長に呆れたような返事を返されてしまった。


「なんだ、疲れてるみたいだな」


 いつものように、ひらけているのに妙に乱雑に感じるカウンター前で自転車を停めると店長がじっと見てきて疲れているという。確かに疲れていると言えば疲れているのだが、改めて言われるほどではないと思いながら自転車のスタンドを下げる。


 これが結構重い。


「まぁこの炎天下を走ってればね」


 実際河川敷は遮るものが無く西日が体の半分に染み渡るので、今も身体の半分が余計に熱いように感じていた。


「それだけじゃなさそうだが?」


「引っ越し先が見つからんのよっと」


「おう大漁大漁、そっか見つからんか」


 別の疲れと言われたらもう見つからない引っ越し先の事しかないな。


 嬉しそうにガソリンタンクを手で叩いている店長がこっちを見上げて顔を顰める。どうやらそれなりに心配してくれているようだが、俺としては大量にあるガソリンタンクの前でタバコの火をつけ始める方が心配だ。


 いつもと違う店員さんも呆れたように溜息を吐きながら消火器を用意している。


「最低金額が8万とか高くなりすぎ」


「そりゃまた、一応5万代は知ってるが」


 現在の家賃の最低値が8万、当然それ以下の物件もあるがそのレベルになると安心して住めるような家ではない。


「確かにあった、でもトイレ共用風呂無し水道無しのワンルーム三畳で5万超えるって、この辺じゃありえないでしょ」


「まぁなぁ?」


 店長の知っている物件と俺の知っている5万円の物件は同じものだったようで、その内容には店員さんも驚いた表情を浮かべ、他人事ではないのではないかと少し顔色を悪くしてガソリンタンクを運んでいる。


 大丈夫だろうか? まぁ他人の心配より自分の心配、ここまで来ると背に腹は替えられない。


「と言うわけで、野宿に使えそうなの無いか見てきます」


「おう、ガソリン頼むぞ」


「はい!」


 店長も仕方ないと言った雰囲気で立ち上がると、野宿に使えそうならこっちだと言った表情で先を歩き始める。


「そう言えばいつもの人いないんですね」


 いつもの元気でチャラい感じの店員さんが見当たらない。今日は休みなのだろうか? この店はシフト制なのか知らないけど、意外と人が多い。


「海だってよ」


 海か、そう言えば異変が起きて以降海なんて行ってないな、たまに大輔から連絡が来るけど、その度にアウトドアの様子を写真で送ってくる。この間は可愛い女の子と撮った魚釣りとバーベキューの写真だったので、魚と一緒に炎上したらいいのにと送り返しておいた。俺は悪くないと思う。


「良いですねぇ……海辺なら釣ればいいから食料に困らなさそうだ」


「……大丈夫かよ」


 大丈夫ではないが正気である。人間に必要な物は衣食住、そのうち一つが無料で手に入る大いなる海、最高じゃないか。漁業権とか色々あって怒られることもあるらしいが、生きるか死ぬかの状況でそんなことは言ってられない。


 海には今のところ化物も出ないらしいし、ワンチャン有りよりの有りなのではないだろうか? まぁ、人気の無い浜辺には化け物出るらしいんだけどね。





「異界に来ると汗が引くな」


 昨日は店長に色々勧められたけど何も買わなかった。ねーちゃんに怒られた件があるからか押しが弱かった気もする。そのあとはまっすぐ帰ってスマホで情報収集、最近色々な問題が噴出している様でニューストレンドが混沌としていた。


「片付け中か」


 いつも通り江戸川大地下道に入ると警備のお姉さんに手を振ってあいさつし、警察の居なくなったエリアをまっすぐ走れば片付け中の自衛隊、こっちでも手を振ると振り返してくれる隊員さん達、もう完全に覚えられてるな。


 そして目印までノンストップでやって来て目印を壊すと狩りの時間、


「おーん? 全然居らんが?」


 しかし化物が居ない。


 今日も釣り竿で華麗なきゃすてぃんぐを見せるのだが、何度投げても化物がやって来ない。何時でも逃げられるように用意して試しに遠投してみるがやっぱり釣れない一斗缶。


「自衛隊が狩り尽くしたかな? それとも発生量が少ないのかな?」


 今日で撤収の様だから、帰る前に狩り尽くして行ったのだろうか? 自衛隊も燃料事情があんまりいいわけでは無いだろうし、一斗缶なんて遠距離攻撃手段があれば狩り放題だろう。


 俺も遠距離攻撃手段が欲しいけど、C級だから何ともならん。交換で交換できる遠距離武器をもった化物が居ても、それって交換する前に攻撃されて終わりなんだよな。


「うーん、釣れない。もう少し先に行ってみよう」


 もう何度目だろうか、小一時間はキャスティングと場所替えを繰り返しているが、一匹も狩れない。ずいぶんと奥まで来ていると思うけど、そろそろ化物の種類が変わる辺りじゃないだろうか、そうなるとあまり気が抜けない……ん? なんだ。


「ん? 奥が少し明るい?」


 薄っすらと奥が明るく見える気がして自転車を停めた。


 よく見るとほんの少し遠くが明るい気がする。真っ黒な紙に濃い灰色で色を塗った様な違いだ、慎重に進んでみよう。


「あ? むむ! 交換!」


 ちょっと危なかった。


 前方に集中していた所為で気付くのが遅れたが、脇から現れたのはこれまでと変わらない一斗缶。慌てた所為で少しタイミングがずれて交換を使った所為か、一斗缶を潜り抜ける際に少しガソリンを浴びてしまった。


「すまないな、これも金の為なんだ」


 そんなガソリンもすぐに黒い塵と変わる。ドロップも変わらずガソリンタンクの様で、すっかり一斗缶を狩るのにも慣れたが、少し気を引き締めた方が良いかもしれない。慢心ダメゼッタイ、注意散漫火達磨の元だ。


 リアル経験からの鉄板ネタに出来そうだけど、絶対に場が冷え切るに違いない。


 それからその場で釣り竿を振ったが掛かったのは一斗缶が二匹。 匹で数えて良いのだろうかと考えながら自転車を転がすと、思わぬ光景が飛び込んで来た。


「広い……」


 それは大きなホール、薄暗く向こう側が見えないほど広いのは今までの道と変わらないが、肌感覚と言うのだろうか、耳に入る音が変わったというのか、少なくとも見上げた天井の高さは今まで歩いてきた真っ直ぐな地下道よりずっと高そうで、幾分明るいようだ。


「ボスとか出てこないよな?」


 ゲームならボス部屋と言った雰囲気であろうか? サイズ的に巨大なドラゴンが出て来てもおかしくない広さだ。少なくとも、自転車を押しながら入り、見渡すホールは旅客機サイズのドラゴンが縦横無尽に暴れまわれるくらいには広い。


「あ、フラグか? 建っちゃうかな?」


 ヤヴァイかな? 大丈夫? 俺ってあまりフラグメーカーじゃないからそう言うの慣れてないんだ。大輔なら7割くらいの確率でフラグ建ててそうなんだけど……とりあえずドラゴンが羽ばたく様な音はしないし唸り声もしない。



 いかがでしたでしょうか?


 地下道の奥に広がる巨大なホール、そこにはいったい何があるのか。


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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