第41話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「外は暑いなぁ」
熱い男達に見送られた先も暑いわけですが、僕は男の園みたいな場所には行きたくありません。それならまだボッチの方が良い……おかしいな? 晴れてるのに雨かな? 視界の端が霞んでる気がする。
「よし」
妙な疲れを感じながらもいつも通りいらないものはリサイクルタワーへ、最近では最低でもおにぎり一個分ぐらいはEマネーを稼げている感じだ。それって稼げていると言って良いのかとか言わないように、俺が泣きます。
「河川敷通っていくか」
今日は少し涼しい、昨日は雨だったからその所為だろう。河川敷なら風も通ってより涼しいだろうし、正直この自転車のサイズで街中を走るのはまだ怖い。少なくとも歩道を走るのは無理だ。
河川敷の道は思った通り快適だった。すごい勢いで走っていく自転車はロードバイクとか言うものだろうか、ああ言うのも憧れるけど使用用途が全く違うな、それにあの勢いで走っていたら三、四人は轢き殺してしまいそう。
「それにしても酷い有様だったな、大方一斗缶が爆発したんだろうけど、対策してなかったのか?」
殺すで思い出されるのは大地下道の有様、なるべく見ないようにしていたが鼻を突く焦げ臭さと異臭は中々忘れられない。パッと見ただけでもかなり広範囲の地面が焦げていた。あんなことが出来るのは火の恩恵を貰った人間か、十中八九一斗缶だろう。
どうしてもっと慎重な調査を行わなかったのか、警察も違法だと言っていたし、正規の調査がどんなものか知らないが、少なくとも俺が一人で潜るより安全じゃないと駄目だろうと思った。
ふと目に映った煙突から流れる煙に物悲しさを感じるのは、時間の所為か地下の光景がちょっとしたトラウマになっているのか、それとも丸焦げになった事がそれなりに心の傷になったか、あまり考えても仕方ないのでさっさと帰る為に電動サポートのトルクを一段上げる事にする。
電動自転車は神。
「どうもー」
想定よりずっと早く着いた。河川敷はスピードも出せるしほとんど止まることが無かったので遠回りに関わらず街を走るより早くて体力的にも優しい。次回からこのルートで行こうと思う。
「よお! 無事だったんだな」
「無事?」
そんなことを考えていると店の奥から店長が飛び出てきた。無事とはこれ如何に? 確かに二日ほど来てなかったけど、それほど心配される様な関係でもないと思っていたが……え? 俺ってもしかして愛されてる!? おっさんはノーセンキューです。
「おめぇ江戸川大地下道に行ってるんだろ? あそこで事件があったの知らないのか?」
なんだそっちか、てかそんなに大きな事件だったのか? 不動産探しでまったくニュースとか見て無いからどのくらいの事件なのかさっぱり分からない。あとで確認しておこうかな。
「あー警察いっぱい来てましたね。事件のあった日は行ってないので詳しくは知らないです」
「そりゃよかった。何でもあそこを管理してる協会職員がハンター集めて深部調査をやったらしいんだがな? 正体不明の化物の襲撃を受けてハンターと協会職員合わせて18名が重軽傷だそうだ」
おや? どっかで聞いた話……あぁ、薙刀の君とバールボーイが言ってたあれか! 18人ってそんなにひどい事件だったのか、しかも職員にも被害出てるってそれハンターなんだよね? 違ったらガチで不味いじゃん、違法ってそう言う事なのだろうか。
「正体不明……」
しかし正体不明か……そんなの居たかな? いやまぁ出会った化物は全部狩ってるから、俺が生きてるって事はその正体不明に会ってないって事だろう。運が良かったのか何なのか、それで自衛隊も出張って来てたわけだ。
職員もいたとは言え大学生コンビ曰く、それなりに強いハンターが集まってたみたいだし、協会が指揮したなら協会所属のA級ハンターが居てもおかしくは無いよな? マジで危なかったわけだ。良くないけど賃貸探しをしていてよかったな。
「一応死人は出て無いからいいけど、どうにも協会職員の独断専行とかでな、その職員はC級ハンターに騙されたとか言ってるらしい」
「…………」
んー……なんか独断先行とか好きそうな職員に覚えがあるな、あのおっさん朝見かけたけど警察に囲まれて叫び声上げてたな、まさかね。
それに、あのおっさんが独断専行した職員だとしても、C級のハンターに騙されることなんてないだろう。何せあの態度だ、C級ハンターの言う事なんて頭っから信用しないどころか聞きもしないだろうし、でもそうなるとやべぇ職員しかいないじゃん江戸川異界。
「実際どうかわからんが、結構な問題になってるらしくてな」
「それで自衛隊も出て来たのか」
「自衛隊も居たのか、こりゃ地下道の詳細が判明するのも早いかもな」
早いかぁそうだよねぇそうなるよねぇ……そうなるとすぐに攻略法も確立されて俺の狩場が人で一杯になる日もそう遠くないかもしれない。
「そうなると稼ぎが減りそうですね」
「減るだろうな、なるべく先に行っといた方が良いかもな、まぁ無理は禁物だけどよ」
「そうですね……」
先か、何れはと思っていたけどこれは急いで先に潜った方が良いかもしれないな。ねーちゃんには無理しないとは言ったけど、自転車も良い感じだし賃貸契約解除の件もあるから少しでも多く稼いでおきたい。最悪くそ高い部屋を借りないといけないわけだし……。
「ただまぁ、自衛隊は外作戦がメインだからどうなるかわからん。正体不明の化物を調べて終わりの可能性もある」
「詳しいですね」
なんだかんだ詳しいよなこのおっさん、流石民間買取所の店長と言ったところだろうか。どう言う判断基準でそう言う予測になるのかは知らないけど、俺的にもそれで終わってほしい所だ。まぁでも俺が一斗缶と缶バッタについて話してるし、彼等もそのエリアを調査しているから望みは薄いだろう。
先に進むべきだな。
「まぁそれなりに知り合いは多いからな、それよりたくさん狩って来たな」
「載せられるのはこれが限界ですね。積み重ねると危ないのもありますけど重くてこれ以上は無理です」
「人の重さ抜いて最大積載100とは言え、限界まで載せたらモーターがもたないかもな……」
それは困る。まだ完済してないのに壊れて貰ったら問題しかない。まぁでも5リットルのタンクを16本も載せたら重いよな、ガソリンだから水よりは軽いだろうけどタンクが鉄製みたいだから16本もあったら結構な重さになりそうだ。
余裕は大事、俺は仕事で学んでる、無理をしたら人は死ぬ。人が死ぬんだから機械はもっと早く死ぬ、と言うか壊れる。
「不良品ですね」
でもカタログスペック以下で壊れたら世間一般の評価は普通に欠陥品であろう。そこんとこどうなんですか? 日本製品なら多少の無理が効くもんですけど、知らないメーカーだよねその自転車。
「……その言葉は否めない」
否んでもろて……。
そこは目いっぱい否と言ってほしい所だよ。まぁ安くして貰った手前あまり文句は言えないけど、安い買い物でもなかったんだし。
「荷下ろししてくれ」
「はいっす!」
「えーっと、八千円だなちょっとまってろ」
八千円! 八千円!! 八千円!!! ……骨に比べたら色々コスパが悪いけど、八千円である。十分余裕をもってこれなのだから希望で未来が明るい。
「往復したらもう少しいけそうか」
「ほら、にしても稼がねーといけないわりにはゆっくりしてるな? 二日も休んで」
ぐっ……! 痛い所を突いてきやがる。今はハッピーハッピーな気持ちで忘れてたのに、一気に鬱な気分だ。このままではいくら稼げても生活が困窮するのは目に見えているんだから、この瞬間ぐらい幸せをかみしめていたかった。
こうなったら店長のおっさんもこの鬱々とした気分に巻き込んでやる。
「それがちょっと面倒なことになってて」
「面倒? これ以上面倒になるとか、お前さんお祓いでも言った方がいんじゃねぇか?」
「……否めない」
……否めない。
いやマジで、実家にいた頃に染み付いた呪いはもう綺麗になくなったと思っていたのに、最近の異常に続く異常事態はどう考えても呪われているとしか思えない。
そう言う意味では世界中の人が異変によって呪われているようなものだけど、だからと言って会社が潰れて、その処理をさせられて、公安から怪しまれて、貰えるはずだった保証金なんかも消し飛んで、ハンターの資格は最低ランク、頑張ってみるもいきなり燃やされて、借金背負わされて、家まで追い出されるとか。
ッスゥゥーーーーーー……。
お祓いって高いのか? 高いよな、高い時は、たかいときは……どうしよう。
いかがでしたでしょうか?
羅糸は呪われた様だ。しかしその口ぶりから以前にも呪われた節がある様だが、そう言うのは癖になるのだろうか。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー