第40話
修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。
「流石に奥まで来ると数が増えるな」
中央を歩いていたとは言え、ずいぶんと奥までは入れたってことは事故の際にかなりの数の一斗缶を引き付けたのではないだろうか、そう思うのは地面の焦げ跡が増えている事からも推測が出来る。
そのおかげで俺は安定してガソリンタンクの数を増やすことに成功したので、感謝しておくべきなのだろうか、もうマイニュー自転車の前籠はいっぱいである。
「たまにバッタが飛んでくるのがうっとおしいけど」
ただ、いつもは居ない筈の場所にまでバッタが出てきてちょっと焦った。化物の居る場所が随分と乱されてしまったのか、元からそんなものなのか分からないが、一斗缶を倒すので自転車に置いてきたフライパンを取りに戻る羽目になったが、気がつけて良かったと思う。フライパン無しでバッタの相手は面倒極まりない。
む、この足音は一斗缶だな、一斗缶の音はまるで酔っ払いの様な不規則な足音、バッタは地面を削る様な連続音、攻撃前は弓を引き絞る様な音、最近はより音に対して敏感になった気がする。
「うーん、これはもう乗らないな」
そしてサクッと一斗缶を撃破、手に残るのはライターの感触だけ、あのライターゴツゴツとした見た目が中二心を擽る見た目してるから欲しいんだけど、どうやったら手に入るんだろうか? 聞いた話では奥に入れば入るほどレアドロップと言う物が出るらしいのだが、まだ見たこと無いと言う事は、まだここは異界にとって浅い場所と言う事だろう。
「帰るか」
何とか先に入れていたガソリンタンクを整理することで、最後の一本分のスペースを確保出来た。どうしても走っている間にずれていくが、この本数はぴったりと入って動かいので非常に運がいい、逆にこれ以上はどんなに頑張っても綺麗には載らない。その時は置いて行って運が良ければ回収できるかってところか、でもこれで少なくとも二往復分は一回で売れるわけだ。
普段はロールして収納されている布製の蓋もちゃんと閉まった。完璧だな、一応割れメタルくらいなら上の隙間に入るからバックパックの中身も全部出して入れてある。形も相まって転がらないので音もしないので良いこと尽くめ、だったのだが……。
「止まれ!」
「お?」
走り出してすぐに呼び止められた。薄暗い中で濃い緑の服だったから気付くのに遅れたけど、あれは自衛隊のようだ。薄暗い大地下道でも見やすい白っぽい布を振って声を掛けられたので大人しく停まることにした。と言っても結構加速してたのですぐには止まれず、布を振っていた男性の前でやっと停止する自転車。
重いから止まるのに時間が掛かるのか、気を付けないと事故起こしそう。
「ハンターだな?」
「はいそうです。狩りの帰りですね」
ライフル? を手に現れた自衛隊の人にタグを見せて返事を返す。
銃口はしっかり下を向いてるけど、本物なんて見る機会無いからついつい目で追っちゃうよね。あんまり見てると不審者扱いされそうだからすぐ顔を上げるけど、ハンターダグを見た男の人は頷いているので問題は無さそう。でも何人かこちらに歩いてくるので、それなりに警戒されているのだろうか? よくわからん。
「そうか、少し聞きたいことがある」
「何でしょう?」
「君は昨日もここで狩りをしていたのか?」
「してないですね。本当は狩りに来たかったんですけど、ちょっと用事が出来て2日ほどこれなかったんですよ」
不動産からの一方的な通知が無ければ稼ぎに来てたんですけどね。でも事故のあった日と被ったのはある意味ファインプレーなのかな? 全然嬉しくはないけど。
「そうか、では今回の事件とは関係ないか」
「事件ですか?」
事件? あれ? 事故って話じゃなかったのか? 事件と事故じゃだいぶ話が変わってくるというのは山本のおっさん談で、事件の方が色々とめんどくさいので悪い警察官は事故で処理するとかなんとか、聞きたくなかった裏話である。一緒にいたムキムキな警察の人も苦笑いであった。
「あぁ、うむ」
あ、これ話しちゃいけない話だった予感がするぞ、ちょっと困った様に笑って他の人から小さく睨まれてる。僕は何も聞かなかった体でも良いんですよ? 無理しなくていいって……いつの間にか人が増えてるのなぁぜなぁぜ?
「違法な調査が行われてな、ハンターに多く被害が出たんだ。この辺りは危険な化物が出るからな」
お、最初の人より少し年上の人が出てきて詳しく説明して来たぞ! こいつ巻き込むつもりだな? お前から山本のおっさん臭を感じるぞ! 僕は詳しいんだ。貴様ベテランであろう! 変に巻き込まないでほしいな。
まぁ初対面でそんな事言わないけどさ? 一番奥の規制線がこの場所と言い自衛隊の数と言い、今回の事故……事件の原因? 要因? となったのは空き缶バッタと一斗缶だろうな、こんな危ない場所で人を集めて調査とか何がしたかったんだろう。
「この辺りだと缶バッタと一斗缶ですね」
「君の獲物か?」
「ええ、ガソリンで困ってる人が居るので」
「なるほどな」
俺のガソリンと言う説明で色々理解したって事は、この人たちはすでに一斗缶を狩った後なのかな? 銃声とかは聞こえなかったけど、これだけ広いと銃声も奥まで届かないのだろうか? 使ったこと無いから分かんないな。
ん? 何か相談してる。俺怪しまれてないよね? 大丈夫だよね。ぷるぷる! 僕は悪いハンターじゃないよ! ただのC級ハンターだよ。
「でも自衛隊が何でこんな場所に? ここはC級の俺でも入れるはずですけど」
「君はC級なのか、それはすごいな。浅い場所は比較的安全だからな、どうしても調査は後回しにされるんだ。ただ今回は問題が発生したので調査が優先されることとなった」
「え、狩り出来なくなります?」
困るぞ? 狩りが出来なくなったら本格的に困る。
てか自衛隊が出動しないといけないレベルの事件なのか、いや確かに警察だけで一斗缶を相手にするのは大変かもしれない。装備が最近よくなってきたからと言っても警察と自衛隊では安全性が全然違うだろうからな、最悪の場合装甲車とか戦車みたいなの出せる分、対応の幅が変わるだろうし。
……でも忙しいだろうに、こんなとこまで大変だな自衛隊も。
「ある程度の規制はあるかもしれないが、君は普通に狩れているようだし問題は無いだろう。そうだ、タグを確認したい」
やったぜ! 問題無いならなんだって出しますよ! お金以外は、タグをチェックするのスマホでも出来るんですね。にしても、自衛隊って作戦中もスマホ持ってるんだ。いや当然か? でも荒事とかあったら壊れそうだよね? むむむ。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。共有しておくので、もし自衛隊に止められたらタグを確認してもらってくれ」
一瞬でチェック終わり、便利な世の中だよね。……ん、まてよ? これって自衛隊に個人情報的な物を握られた感じ? あと俺が狩ってる獲物も? あーうーまー……大丈夫かな? 別に悪い事してるわけじゃないし。
思わず目が泳いでしまうが、視界の端に壊れた照明機器が入ってくる。よく見たら無事な照明も消してある。彼らも缶バッタの洗礼を受けたのか、そう言う情報って調査してくれる自衛隊にも共有されないのだろうか? あの照明機器高そうだぞ? 俺のはタダの貰い物だし、高くても百均だけど、あれ幾らすんだろう? 一万は越えるんじゃないだろうか。
「了解です……照明は消したんですね」
「知っていたのか?」
「俺もやられたので」
その金額を思い、つい出てしまった俺の言葉にベテランさんがじっとこちらを見てきて、後ろの隊員さんも見詰めてくる。やっぱりやられたのか、俺の返答を聞くと目力強めの顰められた顔が緩む。
あれだな、同じ苦しみを知っている人間に向ける感情だよねその表情、実際あの光絶対殺すマンとなったバッタの攻撃はびっくりするからな。
「そうか、我々の調査は公式に公表することになる。出来れば無理のない範囲で情報提供してもらえると助かるな」
これは、オラ知ってる事あったらキリキリ話せや? って感じやつですね。まぁそんな感じと言うより、急遽担当変更にあった上にここまで何も聞かされてなかった新担当さんみたいな、そんな救援求むといった感じの顔だけど、ほんと何も教えられて無いようだ。
どうしようか、後で勝手に何教えてるんだとハンター側から怒られるのも嫌なんだけど、まてよ? 教えなきゃいいんだよね。
「雑談程度なら良いですよ」
「助かる」
茶飲み話でポロリとか良くある良くある。山本のおっさんもそうやって情報は共有する物だって言ってたし、万が一問い詰められても話はしたけど教えてないで通るらしい、あとベテランの公務員であればあるほど、その辺は合わせてくれるものらしい。
くっ……おっさんの無駄話が役立ってしまう。くやしい! でもベテランさんも理解した様に笑みを浮かべてらっしゃる。
「そう言えば、あのバッタってたぶん音は分からないみたいですけど、光以外も何か感知してるみたいですね」
「ほう?」
これは何でもない立ち話、お茶があれば茶飲み話だ。音には全く反応を示さない空き缶バッタは光には異常に敏感である程度の光に反応して真っ直ぐに突っ込んで来る。たぶんその一撃は余裕で骨が折れるだろう、なにせぶつかってくるバッタ自身が自爆するくらいだ。
でも光だけなら光物を持っていない俺に襲い掛かる理由が無い、それに体の中心を正確に狙うあたり何かもっと別の要素も感知しているはずだ。
「あと一斗缶は音か地面の振動じゃないですかね? あと手のライターを奪うと偶に頭からスライディングして来ます。そのまま爆発しながら突っ込んで来るので気を付けてください」
一斗缶エリアでも百均ライトを使ったことがあるが全く釣れなかった。一方で音や振動には敏感だと思われる。ある一定距離まで歩いて近ずくと背後であっても急に向きを変えてまっすぐ走って来るからな。
また一斗缶で特に気を付けないといけないのがあの爆発突撃、走っている段階でライターを奪う事で発生した驚きの行動、頭を地面に押し付けたまま走る事で火花が散るは、頭に穴が開いてガソリンが洩れ出すは、引火したら吹き出すガソリンがロケットエンジンのようになって突っ込んで来る。
逃げられたのは、割と奇跡だったと思う。
「流石、先行しているハンターなだけはある。自衛隊は何時でも人員募集しているからな!」
「うへぇ……」
あ、このベテランさんやっぱ山本のおっさんと同類だ。俺が会社の事で色々データ出してる時見た獲物を見るような目をしてらっしゃいますが、私は自衛隊なんて危険な仕事ごめんでございます。
おっと、後ろの隊員の皆さんもそんなサムズアップしたって駄目ですよ? 若干目が死んでいる辺りだいぶ怖いんだが? あー困ります困ります! そんな親し気に肩を叩かないでください。
いかがでしたでしょうか?
どうやら羅糸は強者(自衛隊)から仲間認定された様だ!! 厳つい自衛隊員は仲間に入って欲しそうに見ている。
目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー




