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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第39話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「よし、停められはするな」


 自転車を受け取って家に帰って来たが、駐輪場に停められないという事は無かった。カーゴ三輪車と言う事もあって若干……いやかなり存在感があるけど、まぁ駐輪スペースも結構空いているし問題ないだろ。


「とりあえずこれに載せられるだけ載せて稼がないとな」


 どれくらいの量が乗るか実際に試してみないと分からないけど、少なくとも十本は余裕で入ると思う。


「ん? 何か入ってる……不動産屋?」


 賃貸の契約をした不動産屋からの封書である。あれ? 契約更新はまだのはずだけど、とりあえず部屋に入って冷房かけよう。自転車で走ってる間は風が気持ちいいけどもう暑い、早く涼しくなって欲しいものだ


「は? 賃貸契約解除通知?」


 設定を最強にして最高の冷房空間を作ったが血の気が引いて寒い。どう言う事? 賃貸契約解除通知なる物が届いたんですが? 何も書いてない封筒を開けて中を確認してみたら爆弾でした。


「…………」


 訳が分からない。退職したことによる家賃滞納の恐れが非常に高いため、契約違反として賃貸契約を解除しますとか書いてあるんですけど、どう言う事だってばよ。


「とりあえず電話だ」


 駄目でした。こっちの話を聞く気が無い。何を言っても返ってくる言葉は早急に出て行けだった。ありえない、あんな同じ言葉を話す人間が居るとか、最近のRPGのNPCの方がまだマシな返答を返してくれるぞ……。あぁ、なんだか臭いぞ、上司が不正を働く時の様な嫌なにおいを感じる。





「はぁ」


 賃貸契約解除通知が届いてから二日が走り回った。せっかく買ったばかりの自転車は使われずに駐輪スペースに置いたまま、俺は近くの不動産屋をはしごすることになったのだが、収穫は無し。


「どうしたものか」


 とりあえず少しでも収入を得ようと三日目の今日は自転車を漕いで異界に向かっている。


「そういえば、人が少なくなってもホームレスは減らないな」


 街中を通って江戸川大地下道へ向かう道すがら、たぶんホームレスなのであろう段ボールの家をいくつか見かけるが、減らないというより増えているような気するが気持ちが滅入ってる事による気のせいだろうか。


「他人事ではなくなってきたな」


 だが、このまま決まらなければ俺は彼らと同じ道を辿ることになるかもしれない。実家? ははは、その選択は無い、無いったらない……あの家に一人で居るのは無理である。そう言えば両親ともにやっぱり見つかってないらしいけど、あの家って今どう言う状態なんだろう。


「とりあえず、稼ごう」


 いいか、そのへんは姉ちゃんが何とかしてくれるだろ、俺よりはるかに優秀な姉である。血の繋がりが本当にあるのか怪しいぐらい、俺とも両親と違う真っ当な人間だから何も心配はしていない。


「ん? 今日はやけに警察が多いな」


 異界を囲う塀のゲートを潜れば見えてくる複数のパトカー、赤色灯を回している車両もあるので眩しくて目を細めながら見渡す。明らかにおかしい、何かあったに違いない。まさかまた職質されるなんてないだろう。俺一人の為に動員される数じゃない。


「ぁ、またあいつだ。さっさと入ろう」


 よく見ればあの煩い職員が警察と話してる……と言うか威嚇するように叫んでいるようだ。近付いても悪い事しか起きそうにないのでさっさと異界に入ろう。


 自転車が大きくなったので少し不安だったけど、長物を持ち込んだりする関係上、異界に入るゲートはは結構広い。自転車に乗ったままでも普通にゲートを通過できたので一安心である。


「お疲れさまです」


 いつもの警備員なお姉さんだ。初対面の頃よりずっと友好的になってくれて僕は嬉しい、女の人と普通に話せるっていいよ、この人そんなに陽キャの気配しないし話していて楽な相手だ。


「あ、どうも……なんか騒がしいですね」


「ええ、ちょっと事故が起きまして」


「え? 狩りできなかったり?」


 困る、今は稼がないといけない。不動産屋の件で疲れた心を解き放ちたいとか言う感情も無きにしも非ずだけど、狩りが出来なくなってしまうのは非常にまずい。


 事故、俺の時は封鎖されることなんてなかったと思うので大丈夫だと信じたいけど、俺の時はこんな騒ぎになったとは聞いていないからちょっと不安だ。一体何が起こったんだろう。


「いえ、一部封鎖されてますが問題は無いと思います」


「よかった」


 問題無し、一部封鎖? それって結構な事故なんじゃ……。


「ただ警察に話しを聞かれるかもしれませんので、出来れば協力をお願いします」


「何があったかはまだ?」


「はい、公式に発表があると思いますで私からは……」


 警察に事情聴取されるってマジで何があったんだ? 一応官民で管理している異界の情報は、解り次第常に公になるらしいけど、知り合いも増えて来てはいたしちょっと心配である。


「了解です」


「お気をつけて」


 軽く挨拶を交わすも、いつもより元気がなさそうなお姉さん。それだけ事故がやべぇって事なのだろう。久しぶりの異界だし、少し気を引き締めていた方がよさそうだ。


「人が少ないな」


 人がすごく少ない、スライムと骨エリアに居る人が本当に少ない。警察が居るから狩りを止めたのか、事故の所為か……俺の居ない二日間で起きた事故なんだろうけど、こんなに人が居なくなるほど影響が出たのか。


「流石キャンプ仕様、荒れた地下道の道でも快適だな」


 少し不安になる一方で足取りは軽い。街中を走る時は普通に漕いでゆっくり走って来たのだが、今は電動アシストの力も借りて楽に進んでいる。多少小石を踏んでも何の問題も無く進むし、車高も三輪車の割に高めなので何の問題も無く進む、高いけど良い買い物だった。


 おん? 赤色灯がちかちかしてる。あと黄色いテープと三角コーンも置いてある。


「あれだ、警察の規制線だ」


 規制線と言うやつだろう、滅多に見ないからちょっとワクワクしてしまうが、これは不謹慎なんだろうか。


「止まれと?」


 警察がライトサーベルを持った手を振っている。止まれと言う事なんだろうけど、あの赤い光る棒は何というのだろうか、子供に渡したら絶対フォースを感じてチャンバラが始まると思う。


「こちらにお願いします」


「はいはい」


 規制線から少し離れた場所に誘導されたが、規制線の内側からチラチラとこちらに向けられる視線を感じる。そんなに怪しく……まぁこんなところに自転車であらわれたら怪しいかもしれない。決して俺が怪しいわけでは無いと思う。


「どうしました?」


「ちょっとお話いいですか?」


「手短になら」


 手短にお願いします。なんならスルーしてくれても良いですよ? 正直なとこ今はあまり心に余裕が無いので面倒事は勘弁願いたい。


「それじゃ、お兄さんは何時もこの奥で?」


「はい、奥の方が稼ぎ良いので、少しずつ奥へ進んでます」


 今日は少ないけどそれでも骨目当ての人が居るからね、多少値下がったけどまだ美味しいらしくて骨集めは連日にぎわっているらしい。それに比べてこれ以上奥は静かなもんだよ、まぁ厄介な化物が居たらそうなるか……この辺りだとまだ缶バッタ出ない辺りだな。


「そうですか、その事を協会に報告とかされました?」


「基本ハンターは飯の種を秘密にするので、俺も報告してませんね」


「協会の方に貢献しようとかは無いと?」


 無いね。そんなことしても変なのに絡まれるだけで一円の特にもならないからな。下手に情報を伝えたところで責任押し付けられそうだし、少なくとも俺に絡んできたあの眼鏡はやりかねない。あの手のプライドばかり高そうなやつはすぐ自分の責任を他人に押し付けて回避しようとするんだ。少なくとも飲みの席で学歴自慢ばかりする会社の上司はそうだった。


 あ、なんだか鬱になりそう。悪霊退散悪霊退散。


「C級なんで、貢献したところで何の恩恵も無いんですよ」


「え? あ、タグの確認良いですか?」


「はい」


 なんだか妙に驚いてるけど、そんなにC級は珍しい……珍しいか、世間一般のハンターは装備強くして物理で殴るが主流らしい。どうにも恩恵がみんな違うから恩恵使用に関するテンプレートがまだ出来て無い感じらしく、中には似たような恩恵で集まって高効率な狩りを行っているハンターも居るとか……。それはそれで恩恵の強弱でカースト云々な問題が発生しているとTで愚痴ってる人を見た覚えがある。


「ありがとうございます」


「あー、以前もお話をさせてもらったりしました?」


「職質されましたね」


 されたね、そう言う質問して来るって事はもしかして面われてるって事ですかね? 警察に顔覚えられるとか嬉しくないな、あ……山本のおっさんと知り合った時点でアウトだったは、はっはー笑えねぇ。


「あぁ……了解です。今日は以上で問題ありません。お気をつけて」


「あ、はい」


 妙にあっさり終わったんですが、たぶん以前の職質が伝わってるって事で良いと思うんだけど、なんであんな可哀そうな人を見るような目で見られたんだろう。え? 俺の知らないところで何か俺可哀そうな子みたいな感じで認識されてません? 気になるけど聞いたら聞いたで今のメンタルじゃ耐えられない気がする。


「…………うーむ、やらかしたな?」


 警察の職質場所は缶バッタがまだ出ない場所、そしてここは缶バッタを倒しつつやってきた中間地点、缶バッタの数が減って来てもう少し先に行くと一斗缶エリアに変わる場所なんだけど……あちこちに無人の規制線が点在していて中はどこも焼け焦げた跡が残っている。


 事故があったのはここなんだろう、規制線の中には黒く炭化した何かや武器らしい物が転がっている。一斗缶から逃げてきてここで追いつかれた? いや、バッタに挟撃されたのか……この場を見ただけじゃ詳しく分からないけど、ここで事故が来たのは確かだろう。


「今日は奥で狩ろう」


 やっぱボッチに限る。危険性は跳ね上がるんだろうけど、他人を巻き込んで大事故とか、たとえ自分の命が助かったとしてもメンタルが耐えられない。馬鹿上司ならいくらでも巻き込めるんだけど、もう居ないしな。


 正直他人の命にまで責任は持てないよ、俺なんて弱いから余計に無理だ。



 いかがでしたでしょうか?


 新たな力を手に入れた羅糸に問題が降り積もって来たようですね。 


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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