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泡となり浮かぶ世界 ~押し付けられた善意~  作者: Hekuto


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第36話

 修正等完了しましたので投稿します。楽しんでいってね。



「出鼻挫かれたなぁ」


 朝起きる時間も遅かったし、その上あの職質、なーんかやる気が削がれちゃったな。


「なんなんだろ、あれ」


 警察も後半呆れてたけど、俺がどんな不正をしているという想定で職質して来たか結局分からなかった。あのおっさんはどういう理屈であんなこと言っていたのか、気にしてもしょうがないと分かっていても気になる。とりあえずあのおっさんは完全に敵認定でいいや。


「はぁ、今日は往復止めとこうかな?」


 元からそんなにやる気してなかった往復だけど、こんな気分で狩りなんてやってたら怪我じゃすまないことが起きそうだ。安全第一、何かちょっとでも変調が有ったら休む、でもなるべく金は稼がないと積むので頑張る。えらい! 俺とってもえらい! 誰も褒めてくれないから俺が褒めちゃう。


「……涼しい、何か昨日より体が楽だな? やっぱ外暑すぎるんだよ」


 そろそろ空き缶バッタエリアを抜けるだろうか、とても身体が楽で外を走っている時と全く負担が違う。夏は人が働いていい時期じゃないんだよ、もしかしたらこの涼しい空間は夏に苦しむ我らへの救済なのかもしれない。


「よし、今日もこの辺だな」


 積み石の側に自転車を停める。ここからは歩きながら一斗缶を探すわけだが、今日もフライパンの出番はなかった。


「石を投げておびき寄せられないかな」


 バッタは光に反応するが一斗缶は一体何に反応するのか、今日は使い捨て百均ライトは持って来てないので石投げで試してみる事にする。あんまり遠くに投げると思わぬ数を引き連れてくる可能性もあるので見える範囲に投げるとしよう。


一斗缶の群れとか襲われたら確実に死ぬ。


「……お、音がするかな?」


 中央を歩きながら道の続く先に石を投げ続けていると何投目か分からないが走る足音が聴こえて来た。どうやら投げた石に反応したようだ。一斗缶は少なくとも音か何かに反応すると思ってよさそうだ。


「来た! てかあの図体で結構早いんだよな、流石は化物か」


 薄暗い地下道の先に生白い足が見え、腕が見えてくる。濃い緑色の一斗缶部分は暗い所為で見えないが液体の揺れる音は聞こえてくる。石を手に待っていると急に走る速度が上がり真っ直ぐこちらに向かってきた。どうやら今の距離がこちらを認識できる距離のようだ。


 だがここで焦ってはいけない。何故なら早めにライターを奪えばヘッドスライディング炎上アタックで突き進んで来ることになる。必ず跳び上がってから交換の魔法を使わなくてはならない、最良のタイミングはライターを持った手とは反対の手を蓋に伸ばした瞬間。


「まだ、まだ……交換! ダッシュ!」


 ライターを奪ったら全力で一斗缶に向かって走り込み、頭と同じくらいの高さに跳び上がった一斗缶の下を、頭を低くして潜る。さらに走って後ろを振り向く。


 完璧だ。


「へへ、良い感じだ。」


 振り向いた先には、頭からガソリンを噴き出しながら手足をばたつかせ、真っ逆さまに地面へと落ちて行く一斗缶。顔が無いただの一斗缶であるが、顔があれば驚愕と絶望の表情を浮かべてそうな、そんな雰囲気を動きから感じるが、それは俺の気分の問題かもしれない。


 正直ざまぁである。ちょっとだけ気分が良くなったので、ドロップを回収する手も軽い気がする。


「よし揃った。今何時だろ」


 異界に入れたのが11時少し前だから、小一時間くらい狩ってたのか……先にガソリンタンク6本売りさばいて昼ごはんかな? 先に飯と言うのは荷物的にも季節的にも危険だな。それからもう一回、もう一回か……。


「……いや、今日は早めに切り上げよう」


 多少気分が良くなっても元の気分は最悪、こんな日に無理するものじゃない。さっさとガソリン売って……そう言えば自転車、そうか、今日もEマネーおにぎりにしないといけないのか、不味いくは無いけどおかずも欲しいな。


「あっつぅ……ん? なんか人が多いな」


 何とかEマーケットの品ぞろえを増やす方法は無いのかと悩んでいるうちにお外である。考え事をしていた所為か魔の上り坂も意外と楽に感じたが外は地獄、ただでさえ暑いのに何やら騒がしい。


「まぁいいか」


 暑いと言うのに騒がしく声を上げているが、よく聞き取れないくらいの遠さですぐに興味が無くなる。いまは帰りに拾ってきた荷物をリサイクルタワーに捨てて行こう。最近増えて行くドローンの残骸に目を向けていたら缶バッタのドロップが落ちていたのだ。考え事をしていても目に付く辺り俺もハンターとして成長してるのかもしれない。


「これとこれ、あとこれもいいや」


 たぶんドローンを撃墜したバッタが死んでドロップしてるんだと思う。この辺はグレーなところで、明確に誰かが所持していたドロップでなければ窃盗にはならないし、届け出もしないで欲しいそうだ。警察も所有者の居ない物を届けられては処理に困るらしく、ハンターの間では危ないのでリサイクルタワー行きがマナーみたいな感じになっている。ゴミ拾いみたいなものだな。


「あれ? 望月さんおはようございます」


「ん? ああおはよう」


 誰かと思えば大学生の高橋さんじゃないか、隣には何やら何時もの陽キャオーラが消えて俯く瀬戸さんだったかな? 荷物が少ないし、二人はこれから異界に行くのだろうか。


「お帰りですか?」


「うん、ちょっと朝から因縁付けられてテンション下がっちゃったから早めに切り上げるんだよ」


「因縁ですか?」


 因縁と言われてキョトンとしている高橋さんは可愛いね。あの気色悪いおっさんに絡まれて負った疲れが癒されるようだ。まぁ彼らにはあまり関係のない話だろう、たぶんあのおっさんがウザ絡みしてくるのも俺がC級ハンターだからだろうし、あの手のタイプは学歴とか優劣の分かりやすいものしか見ない。


 どっかの会社の消えた上司も何かある度に大学自慢とかして来るので、とてもとても鬱陶しかった。


「高橋さん達には関係ないタイプの因縁かなぁ? それでそっちは、どうしたの?」


「それが、陽太郎!」


 俺の言いたい事をすぐに理解したのか苦笑浮かべた高橋さんは相方の半袖を引っ張る。二人とも今は薄手の服装だが、異界に入ったら上から上着を羽織るのだろう。おそろいのトートバッグに服を入れてるようで、中々に見せつけてくれる。


「お? おお! 羅糸じゃん! どうしたんだ?」


 距離が近いな、まぁそう言うのは大輔で慣れてるから気にはならないけど、今まで俺に気が付かなかったとか、陽キャの放つ光の前では俺程度の陰キャ霞んでしまうとでも言うのか。


 ま、あんだけ俯いてりゃ足下以外見えないだろうけど、何をそんなに悩んでるんだ。


「いや、瀬戸が妙に悩んでいるからどうしたんだと聞いてたところだ」


「おま、陽太郎で良いって! な?」


 近い、痛い、肩を掌で叩くな、その距離感は陰キャにとって致命傷なんだ。俺は知ってるんだぞ? お前みたいなタイプはそうやって気軽に名前呼びを強要するし、呼ばないとしつこい事も、大体の事は大輔で履修済みだ……あいつもかなりしつこかった。


「はぁ……私の事も円香で大丈夫ですよ?」


 お前もかブルータス。


「そ、そうか……それで陽太郎は何を悩んでたんだ」


「それがさ、地下道の奥を調査するからって人集めしてるんだけど、結構金払いが良くて悩んでんだよ」


 何? 裏切者の登場で少し意識が逸れたけど金払いが良い依頼だと? しかも奥の調査って俺の食い扶持に直接関わるじゃないか。いやまぁ人がいる方が安全ではあるんだけど、対象はどの辺りなんだ? 動画見る限り空き缶バッタはまだ判明して無さそうなんだよな。


「私は気が進まないんですけど、今月ちょっと使いすぎて……」


 あぁ、みんなお金には苦労してるよね。特に大学生とか色々お金かかるし、陽キャだとやりたいこといっぱいでお金も必要だろうし、まぁそれ以上に俺の方が生活費的な意味でお金欲しい。たぶん、その依頼もB級以上なんだろうけど……悲しい。


 しかしどこまで調べるんだろう? 俺が狩ってるより先ならそれはそれで色々予定も立てられるから構わない気もするんだけど、二人はどのくらい進んでるんだろう。


「奥ってどこまで?」


「未知の化物が出ると思われる場所まで、最低でも二種確認するそうです」


「判明してる化物は何種類なの?」


 管理協会の建物内には色々この異界についての説明とか掲示板とかあるらしいけど、動画見てれば十分だし、あんまり近寄りたくないので俺は詳しい状況を知らない。今時はネットの方が情報鮮度が良いまであるからな。


「えーっと、スライム、スケルトン、スチール缶、アルミ缶の四種類だな」


 うん、動画で紹介されている内容と同じだ。って事は二種類と言うのは空き缶バッタと一斗缶って事になる。いや、もしかしたら俺の知らない化物も居るかもしれないのでそうとも言い切れないけど、十中八九この二体だろう。


 しかし、あれを狩るのか、傾向と対策を知っていれば問題は無いと思うけど、知り合いになってしまった二人の事は少し過保護になるくらいには心配である。


「あまり調査が進んでない異界なんですよね」


「……二人は缶シリーズ狩ってる?」


 だからちょっとお節介しておこうかとも思う。決してB級の二人が俺より先に行って荒稼ぎするのが嫌とかそう言う浅ましい考えではなく、死にかけた身としては、命を大事にしてほしい。あと女の子なんだから、火傷とかしてほしくないとか気持ち悪いことも考えてたりもする。


「いやいやいや、それで悩んでるくらいだ」


「あれは危険なので、好んで狩ってません。絡まれたら対処しますけど、危ないですから」


 武器持てるくらいには強い恩恵を持っている二人でもあのジュース缶シリーズは厄介なようだ。


 いやまぁ普通に考えてあんなカミカゼアタックしてくる化物は危険極まりない。それでも対処できるのだから恩恵が強いのか身体能力がすごいのか、少し興味も無くはないけど、そう言うの聞くのはマナー的に良くない気がする。


「人数揃えるって言ってるからその分安全かなぁとは、思ってる」


「そっかー……」


 俺は偶然ドハマりする恩恵だったから狩れているけど、恩恵無しじゃ絶対近付かないし逃げる。逃げてその上死ぬまでが想定される状況だ。特に一斗缶は逃げても火炎地獄、切りかかっても至近距離で爆発、遠距離から両断するくらい強力な恩恵とか動きを封じる恩恵なら安全だけど、二人がどんな恩恵か知らないので軽々しく勧められない。


 なのでやっぱり俺はお節介を焼くことにする。



 いかがでしたでしょうか?


 羅糸はお節介の構え!


 目指せ書籍化、応援してもらえたら幸いです。それでは次回もお楽しみに!さようならー

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